謎魔術師達
サイクロップス討伐は無事に終わりを迎えたが...あの謎の魔術師達は一体何だったんだ?
少し気になるが...見た目だけで人を判断するのは良くない。
と言う訳でこっそり尾行するか。
サイクロップス討伐の報告は後だ後。後でも大丈夫だろ。
上空から探していると、謎魔術師達は案外簡単に見つかった。
俺がサイクロップスと戦闘していた所で何かを探していたようだが、何も見つからなかったのかあきらめたようにどこかへ去って行った。
それもそのはず、サイクロップスの体は腕と気味が悪い目玉しか残らなかったし、それらは全てアイテムボックスにブチ込んである為そこには何もないのだ。残念だったな!
じゃなくて、尾行しないと尾行。
幻術魔法だけに絞ってブーストを使っているため、並どころかエルでもなければ俺の存在を気取られることはない。その代わり飛行魔法はガッタガタ。まあ墜落はしないからセーフセーフ。
謎魔術師達を追うこと数十分。
彼らは鬱蒼とした森に入って行った。
一体彼らの向かう先には何があるのか...。
謎魔術師達は目的地に着いたらしく、少し寂れた建物の中へと入って行った。
中からは何やら声がする。
少し子供っぽいが...まさか人体実験!? それとも人攫いの線も捨てられない。
とにかく子供たちを助けなければ!
「あ! お兄さんたち帰ってきた!」
「ほんとだー!」
「おかえりー!」
「ただいまー。しっかり留守番出来てたかー?」
「もちろんー!」
あり? なんか魔術師達好かれてね?
「今日のごはんなにー?」
「あそぼー?」
ただ子供達に好かれているとは言えども怪しさはまだまだある。
そもそもなんでこんな訳の分からない土地で子供と仲が良い方がよっぽど怪しい気がする。
ボロを出すまで見張っておくか...。
幻術魔法を使いつつ、さらに魔術師達と子供達の方へと近づいていく。
「きゃっ!?」
その時、後ろから何者かにぶつかられる。
急な出来事に対応できず、前のめりになって転ぶ...ことは回避できたが、大きな音と動揺により幻術魔法が解けてしまう。
「だ、だいじょうぶですか?」
俺の後ろからぶつかって来たのは濃い緑色に黒い目をした少女だった。
黒目もそこそこ珍しいが、黒髪黒目の二点セットじゃないから安心だ。
国王に隠し子! とか遠い血縁者だったり騒がれたらややこしくなるからな。
てかそんな事よりマズイぞ?
こっそり潜入してたのにバレたらガチ目にマズイ。
「ノ、ノアルト王子様!? どうしてこんなところに...?」
魔術師の一人が俺を見つけ、そう叫ぶ。
どうする? 逃げるか? いや、別に俺が何か悪い事をした訳ではないからな。
ここはストレートに...。
「こんな滅多に人が来ないような所に子供達を隠して...お前達は何をやっているんだ? 知っていると思うが俺は古代魔法、読心魔法が使えるからな? 嘘なんてついたらどうなるか、分かるよな?」
前も言った通り、少しでも魔法についての経験がある者に対してはあまり読心は作用しない。
が、嘘をついているか否かくらいはギリギリ分かる。
さて、どうなるか...。
「もしかしてこのひとがおはなしにでてきたおうじさま?」
「かっこいー!」
「かみもめもくろい!」
お話に出てきた...ってなんだ?
「ん? あ! あれってノアルト王子じゃね?」
「マジ? ホントだ! 髪も目も黒い! モノホンじゃん!」
魔術師達のような不思議な服を着ておらず、至って普通の、俺より少し年上であろう数人の女性が俺を取り囲む。
「初めまして...じゃないんだよね。王子様、ワタシの事、覚えてるかな?」
「バカ! アンタなんか覚えてる訳ないじゃない! 多忙な王子様よ?」
「おうじさま! だっこして!」
「ちょ、ちょっと、王子様に失礼だからやめなさい!」
俺の隣で盛り上がる女性たちに加え、俺に群がって来る子供達。それを止める謎魔術師。
...なんだこの地獄絵図は。
「いやぁ、私達は昔ノアルト様に助けて貰ったことがある者ばかりなんですよね」
それを謎魔術師から聞いて一気に納得した。
確かに俺は何年もモンスターを狩っていたし、その過程で助けた人もなかなか多い。
「そこで、ノアルト様の負担を減らすべく我々の中で戦える者は周辺の警備などをしたりしているのですが...。さっきのサイクロップスとの戦いの通り、所詮は寄せ集め。大してノアルト様のお役には立てないんですよね...」
「いや、気持ちだけでも十分だ」
「そうだ、私の事は覚えていますでしょうか? ほら、アシラオ村でオークの群れが現れた時に瓦礫の下に埋もれていたのを助けて頂いたのですが...」
「いや...アレ瓦礫に埋まってた奴何十人も居たから覚えてないわ、すまん」
「いえいえ! お気になさらず...」
オークの群れ。バイオレンスオークが率いたモンスターの群れ。
群れ自体は大して時間も掛からず倒せたが、一人残されたバイオレンスオークが自爆をした時には流石に怖かった。あいつらは何がしたかったのか...。
その自爆の余波で近くの村の家はほぼ全壊。殆どが生き埋めで死にかけた、と言う訳だ。
ただ...ちょっと流石に覚えてはないわ。すまん。
更に会話を進めていく内、彼らはこの俺...ノアルトを共通の信仰対象? とした団体であることが分かった。
ノアルト様に助けられたので次は自分が誰かを助けて――みたいな感じらしい。
因みに謎ローブの不思議文様は横から見たり縦から見たりするとノアルト、と読めるらしい。
いや分かんねぇよ。
「で、あの子供達はなんなんだ?」
「彼らですか? 実は彼らは孤児で...ノアルト様なら孤児を助けるだろうと思って...奴隷制度もあまり好まないようなお方だと思っていたので保護しましたが...」
奴隷は好まない...が前買ってしまったんだよなぁ...。いや、ラミュは違法奴隷なので! 彼女は奴隷じゃないから奴隷を買ったことにはなりません!
「その、どうしても人目に触れる所で保護をすると税金がかかってしまうので、こうして森の奥で匿っている所存であります...もし気に食わないようでしたら私の首でご勘弁下さい! どうか彼らにこれ以上嫌な思いをさせたくはありません!」
「いやお前の首とか要らんから...てか俺が孤児を匿っているのを知って税金払えよなんて怒るような畜生じゃないし...」
「やはりそうですよね! 安心しました、流石はノアルト様!」
「まあ、なんだ。俺の為に――って感じで動いてくれるのは嬉しいが、あまり無理はしないように。今度金も持ってくるから」
「い、いえ! そんな、ノアルト様からお金をいただこうとは恐れ多い...!」
「良いんだって。別にお前らに金を渡す訳じゃないから。子供達に渡す金! 投資だよ投資! 子供達の中から優秀な奴引き抜いて俺の側近にするの! ただ普通に子供達に金を投げると使い方分からないだろうから保護者のお前らに渡すだけ! ...ただ、俺は金の管理が下手くそだから少し多めに渡してしまうかもしれんがな」
「ノ、ノアルト様...!」
「とにかく話はこれで終わり! お前らの事変な集団だと疑って悪かったな」
そう言い残し、飛行魔法でその場を立ち去った。
まさか俺のファンクラブ的な奴らが居るとは思ってなかった...。




