サイクロップス その3
数々の土で出来た針が俺の体を襲う。
まさかサイクロップスが魔法を使うとは。
完全に予想外、虚を突かれた。
俺は空中、避ける時間は無い。
ブーストで体を固めるが...。
「ぐっ...」
土の針は俺の強化した体を突き刺した。
流石はSランクモンスター...。
サイクロップスからは魔力が殆ど感じられない。恐らく今のが最初で最後の魔法だろう。
その代わり、針の強度は凄まじく、俺の体を固定して離さない。
が、針自体にあまり殺傷能力はない。
細く、中で少し枝分かれしており、動きを封じる事だけに特化している。
不意打ちの魔法で動きを止め、確実に大きい一撃を当てる戦術なのだろう。
並みの相手ならば動くことも出来ず攻撃されて終わりだろう。
だが――。
「ウガッ!?」
拘束から脱出し、そのままサイクロップスの顔面に体当たりをする。
何故拘束から抜け出せたのかと言うと、ただ体の硬度へのブーストを解除しただけだ。
すると俺の体は元の一般人より少し丈夫なだけで、Aランクモンスターの攻撃でも当たれば致命傷になるような貧弱な体に戻る。
針も体も硬いなら、どちらかを脆くしてしまえば簡単に拘束は意味を成さなくなる。
そこで魔法にブーストを掛け俺のすぐ傍でフレイムボムを発動。
針より柔くなった体が裂かれ、爆発で俺が吹き飛ばされ、体当たりをすることに成功した。
サイクロップスは唐突な攻撃に対応できず防御姿勢は取れていなかったが、それでも全くダメージが通っていない。やはりSランクモンスター。
かなり強引に脱出したので体はボロボロ。
そこら中に傷ができ、普通なら立ってすらいられない状態になる。
が、
「ヒール」
現代魔法とも古代魔法とも違う魔法、聖魔法が俺は使える。
ブーストを使えば瀕死の体もたちどころに元通りに出来る。
魔力も一瞬で回復させ、俺は消耗ゼロの状態まですぐに戻れた。
一方サイクロップスは外見的な損傷はほぼ無いが、その魔力量は殆どゼロに等しい。
魔力の枯渇はこの世界で生物の生命に大きく...と言う訳では無いが、魔力が無いと「なんかちょっと動きづらいな」くらいの影響は与える。
つまり現在サイクロップスのコンディションはちょっと悪い。
サイクロップスは魔力も少なくもう魔法を使うことはないだろうが...念の為アレ、使うか。
古代魔法にブースト。
周りの魔力が俺の元へ集まり、段々と色を変える。
これはマズイと思ったのか、サイクロップスはこちらへものすごい速さで向かって来る。
まだ十分とは言えないが...。
「赤式魔砲!」
色を変えた魔力が固まりとなり、サイクロップスを襲う。
警戒はしていたのか、今度は身を固め、俺の赤式魔砲からのダメージを減らす。
この攻撃も、サイクロップスに致命傷を与える事は出来ない。
が、この魔法の真価は威力などではない。
色素魔法。
古代魔法において、最も強力な魔法。
俺達やこの世界の生物は自分の体内の魔力をトリガーとし、空気中等周りの魔力を操り魔法を使う。
これが誰でも知っている魔法の常識。
その常識をブチ壊すのが色素魔法だ。
魔力自体に干渉して、色を付ける。
色のついた魔力はその色と同じ色素魔法でしか操る事は出来ず、またかなりの時間色は残り続ける。
一度色のついた魔力は時間経過以外の要因で色素魔法以外で使うことは絶対に不可能。
相手の周りを色付き魔力で埋めてしまえば相手は魔法が使いずらくなり威力や制度が大きく弱体化する...と言った、対魔法に特化した魔法なのだ。
色素魔法は言うなれば陣取りゲームだ。
いかに自分の得意、または相手の使えない色に魔力を変化させて相手の妨害をするか。
当然有利な色が多ければ戦況も大きく傾く。
攻撃を防御し終わったサイクロップスが、また距離を詰めるべく動き出す。
「赤式魔包!」
しかしサイクロップスの周りには先程使った赤色の魔力が。
魔力がサイクロップスの足を縛り付け、転倒させる。
「赤式魔砲!」
さらに赤色の魔力を増やしていく。
赤式魔砲の連打により、そこら一帯に薄く赤色が掛かって来る。
「そろそろ終わりだ。赤式魔崩!」
そこら中の色付き魔力を一点に集め、強大な力を持った一撃を放つ。
真っ赤な光線がサイクロップスを包み込み、体の殆どを消滅させた。
俺の使える魔法では、多少お膳立てが必要だが色素魔法の火力が一番だ。
別に現代魔法でゴリ押ししても良かったが、倒しきるまでに時間が掛かり、その間に魔力を回復させたら厄介だった。
先ほどの魔法も束縛だけでなく逃げに使えるかもしれないし、逃げた先が村等だったら最悪だ。
Sランク同士の怪獣大戦争が村で起こるのはマズイからな。
こうしてサイクロップスの討伐は終わりを迎えた。




