mother and daughter 5
「これで何もかもうまく収まるわね。この教訓は、『親子の絆は何ごとにも代えがたい。』」
公爵夫人が珍しくまともなことを言っている。
「全くはた迷惑な親子じゃったな。散々振り回されたわい。」
「打ち首にするところだった。」
ハートの王と女王が言う。
その表情は、どこかすっきりとしていた。
なんだかんだ言いながら、この世界の住人達は皆アリスのことが好きなのだろう。
「じゃあアリス、そろそろこの世界から帰ろうか。お父さんが首を長くして待ってる。」
頃合いを見て、俺はアリスたちに声を掛ける。
いい加減、春日野先生も待ちくたびれているだろう。
「うん、分かった!」
そう言うと、アリスは不思議の国の住人たちの元へ向かう。
「みんな、いっぱい遊んでくれてありがとう。」
アリスは頭を下げた。
「気にしなくていいよ、私も楽しかったから。」
「次来るときは猫の話しなんてするんじゃないよ!」
「またいらっしゃい。」
わいのわいの。
相変わらず住人たちは皆個性豊かだった。
「じゃ、みんなで帰ろう。出口はこっちよ。」
アリスはダイアナさんの手を引いて、走り出す。
「俺たちも行こう。」
「うん。」
「あいよ。」
「はい!」
「はい、分かりました。」
『おー!!』
俺たちも、その後を追った。
しばらく歩くと、大きな幹に巨大なドアが付いている木があった。
「きっとこれが出口ね!」
あれ?
「きっとって、どこが出口か知らないのか?!」
『まあ、ここはアリスの無意識の世界だし、どうにでもなるんじゃない?』
アリスは、何のためらいもなくドアを開けると、中へと入って行った。
俺たちも急いで後を追う。
ドアの向こうは、大きな川の流れる草原だった。
振り返ると、俺たちが今入ってきたはずのドアはどこにもなかった。
「さ、流石ファンタジー…。」
詩織が呟く。
『あれー、ここって、僕たちがそれぞれ最初に来た草原じゃない?』
不意に、リョウがそう言う。
確かに言われてみれば、どこか見覚えのある場所だった。
ただ最初とは違って、太陽は高く昇り、美しい草の緑と川の青を照らし出していた。
ふと川の上流の方を見ると、これまた見覚えのあるボートが、ゆっくりと流れてくる。
それには、あの三人の女の子が乗っていた。
三人とも鎖に繋がれておらず、白い服を太陽の光で輝かせながら、目隠しの取れた顔で笑っている。
「アリスを助けてくれたみたいね。」
一人目が尊大に言った。
「みんな、ありがとうございます。」
二人目が優しい声で言った。
「出口はあっちよ!寄り道しちゃダメよ!」
三人目がやんちゃそうな様子で俺たちの背後を指さした。
振り向くと、巨大な白い扉が7つあった。
「これで現実に戻れるな。」
「やっと帰れる。」
「おっさんもう疲れたよ。」
「ボクも疲れましたー。」
「私も、流石にもうおうちに帰りたいです。」
口々にそう言いながら、俺たちはそれぞれの扉に近づく。
「じゃ、また後で。今度は現実で会おう。」
そして俺たちは、各々の扉を開いた。
こうして俺たちの、奇妙な世界での戦いは終わった。




