mother and daughter 4
アリスはぼんやりとした目で辺りを見渡す。
そして母親の姿を認めると、目を見開く。
「…お母さん…。」
そしてガタガタと震えだすと、鞘華にしがみついて顔をうずめた。
その様子を目の当たりにして、ダイアナさんは辛そうな顔をする。
俺はアリスに近づくと、目を合わせるようにしてしゃがむ。
「なあ、アリス。お父さんは好きか?」
突然の問いかけにアリスはしばらく目をパチクリしていたが、やがてこくりと頷いた。
「それじゃあ、お母さんは?」
俺がそう尋ねると、アリスは再びガタガタと震えだす。
「アリス、落ち着いて。一度目を閉じてごらん。」
そう言うと、アリスは大人しく目を閉じた。
「今までのことを良く思い出して。お母さんと一緒に遊んだり、お話したりしたことを全部思い出して。」
そう言い聞かせると、アリスの震えはだんだん小さくなり、やがて止まった。
「もう一度聞くよ。アリス、お母さんのことは好き?」
アリスはしばらく黙った後、小さな声で、でもはっきりとこう答えた。
「…大好き。」
周りが息を呑むのが聞こえる。
俺は頷いて、アリスに問いかける。
「お母さんは、アリスのことが大好きだよ。そのせいで、やってはいけないことをやってしまうくらいね。アリスはどう?」
「うん、わたしもお母さんのことが大好き。」
それを聞いて、ダイアナさんは思わずその場で泣き崩れた。
今まで何度かダイアナさんの記憶を見てきたが、最後の一つ以外はどれもすごく幸せそうで、その記憶の中のアリスもとても幸せそうだった。
あれだけ愛してもらっていたのに、アリスがダイアナさんのことを嫌いになれるはずがない。
「じゃあ、どうしてアリスはお母さんに会うのが嫌なの?」
俺はそう尋ねる。
アリスはしばらく下をむいた後、やがてポツリと答えた。
「…イヤなの。お母さんは最近、アリスを怖い目で見てくるの。この間は、アリスのことを怖がっていたの。それがすごく悲しいの。」
俺はアリスの頭を撫でる。
「大丈夫。もうお母さんは、怖い目でアリスを見ることも、アリスのことを怖がることもないよ。」
「ほんとう…?」
「本当だよ。ほら、お母さんのこと、良く見てごらん。」
アリスは振り向いて、ダイアナさんの方を見る。
「…お母さん…。」
「…アリス…。」
二人は見つめ合う。
そして、ほぼ同じタイミングで二人は駆けだす。
「お母さん!」
「アリス!」
そして、二人は抱き合った。
「ごめんね、ごめんねお母さん!わたしお母さんにひどいこといっぱい言った!」
「いいのよ、アリス。私の方こそアリスにひどいことしたわ。ごめんなさい。」
すれ違っていた時間を取り戻すかのように、二人は触れあった。




