第7話 学校祭〜書道パフォーマンス①
学校祭二日目は、前庭と体育館のステージイベントがメインです。
今は前庭で軽音部の発表が行われています。
「あの者たちは、なかなか上手じゃの。
あのドラムがよい!
…わらわも、ピアノだったら弾けるぞよ?
そちはどうじゃ?」
空玲須にぶら下がるように腕を組みながら、尾牟派麗子が聞きます。
「オレは、音楽はちょっと…。」
「そうか、まあ、音楽はできずとも良い。
次は体育館じゃ!」
尾牟派麗子は嬉しそうに空玲須の腕を引いて体育館へ向かいました。
体育館では、今は生花パフォーマンスが行われていました。
「あ、空玲須!」
観客席にいた女鹿蘭の顔が、一瞬で曇ります。
「元気であったか、女鹿蘭。」
「ええ、おかげさまで。尾牟派麗子。」
…険悪ではありませんが穏やかではない空気が流れます。
「華道とは違うものらしいんだけど。私初めて見た。去年はなかったでしょ。」
女鹿蘭は、尾牟派麗子を見ないようにして空玲須に話しかけました。
「なんかデカいなあ、って。あんな大きさの花、新店舗開業の時しか見たことないや。」
「わらわも初めて見るぞよ。
市井の視察は勉強になるのう。」
ああ、なんかその言い方はトゲがあるなあ、と空玲須は思いましたが黙っていました。
「ひゃあ、間に合った!
あっ!ごめん。」
騒々しく入ってきたのは出井亜寧羅。パフォーマンス中なのに気づいて謝ります。
「お、いたいた。空玲須。」
必歩流帝もやって来て、わざとらしく尾牟派麗子の隣に座りました。今日は制服。首元のリボンはありませんが。
尾牟派麗子の膝の上を通り越して、空玲須に何かを渡します。
「今日は、シュークリームの移動販売。売れ残りだけど良ければどうぞ。」
そして、さりげなく、尾牟派麗子の腕を空玲須からほどきます。
「むむう。
こやつ、やりおる。しかも。」
(なぜ、わらわにはくれぬのじゃー。)
尾牟派麗子は、必歩流帝を横目で見ながらつぶやきました。
出井亜寧羅も女鹿蘭の横に座って、井尾玲の出番を待ちます。
生花パフォーマンスが終わって。
「次は、書道部による書道パフォーマンスです。開始までしばらくお待ちください。」
会場の観客が次々と入れ替わっていきます。いや、入れ替わるのではなく、どんどん増えて、二階のギャラリーまで。
いつのまにか、体育館は人でいっぱいになっていました。
「すごいなあ、井尾玲。」
出井亜寧羅は素直に驚きます。女鹿蘭も頷きます。
♪〜
音楽が流れて、いよいよ始まりのようです。
笛や太鼓が主体の和風音階。それでいて伝統にはとらわれない、現代リズムとメロディライン。
井尾玲が出てきました。観客に一礼。
白い上衣に黒い袴姿。白タスキに白はちまき、そして流れるような銀のポニーテール。
墨にモップの先を浸します。
「ハッ!」
気合いを込めてモップを紙に置きます。飛び散る墨。そのまま勢いよく走る。払い上げて、別の場所にモップの先を置く…。
リズムに乗せて、モップを運ぶ井尾玲。
時に荒々しく、時には繊細に。また時には、賑やかに線を揺らすことも。風のように素早く、流れゆく大河のように穏やかに…。
銀のポニーテールが揺れるたびに、紙の上に、「世界」が構築されていきます。
観客は皆、息を呑んで、井尾玲を見つめていました。
書き上げる文字は、いかに!?




