第48話 修学旅行〜キマイラ①
「魔法世界」のエリア。世界的に有名な映画の舞台を再現した建物、オブジェ、アトラクションを楽しめます。たくさんの人、人、人。外国人のお客さんもいっぱいいます。
「ねー、これ。
この杖振ると、魔法が使えるんだって!」
出井亜寧羅は目がキラキラです。
「魔法って…。
うわ!高!」
必歩流帝は、杖の値段を見て驚きます。
「ほうき、か。
な!
光った…。」
空玲須は、ほうきのおもちゃのサンプルに夢中です。
「あー!
女鹿蘭!」
杖のアトラクションの場所を探して歩いていると、女鹿蘭たち女子集団を見つけました。出井亜寧羅が手を振ります。
「お城は整理券が必要で、今日の分はもうないらしいので、アレに乗りに行くの。」
少し冷たい視線を空玲須に投げながら、女鹿蘭は説明しました。
「あー、行く行く。
ね、必歩流帝も行こう。」
出井亜寧羅が必歩流帝を引っ張って、女鹿蘭たちに合流します。
「オレも、行っていいの、かな?」
空玲須が聞くと、振り向かずに女鹿蘭が答えました。
「いいんじゃない?
出井亜寧羅も来るし。」
…何だか、言葉にトゲが。どうやら機嫌が良くないようです。
空玲須はアトラクションの先頭についている生き物をまじまじと見ました。
「グリフォン…ではないのか?」
ワシの頭と翼、馬の脚。空玲須のおぼろげな記憶には、ワシとライオンの脚を持つ生き物はいますが、コレは少し違うようです。
「よっしゃー先頭!」
出井亜寧羅は、必歩流帝とアトラクションの先頭に座って喜んでいます。前から順に座っていくと、ちょうど女鹿蘭と空玲須が並びました。
お互い、少し気まずい。目を合わせるのもためらわれます。
静かに座っているも、その後ろに座るカップルの会話が聞こえました。
「ローラーコースターは、位置エネルギーを運動エネルギーに変換して動く、いわば物理計算の結晶のような…。」
空玲須には、呪文に聞こえます。これも、魔法を使うのに必要なのか?
長々と喋り続ける男子。隣の彼女は、何も喋りません。
アトラクションが動き始めました。さっきの恐竜と比べると、ずいぶんとマイルドな加速です。
「きゃー!」
それでも声を上げる女鹿蘭。
空玲須は、ハンドルを握る女鹿蘭の手に、自分の手を重ねました。
「!!」
女鹿蘭と視線が合います。怒ってはいません。振り払う様子もありません。
ガコン。と、大きく揺れてアトラクションは終了。みんなが降りていきます。
「空玲須も、降りるよ。」
女鹿蘭の声には、もうトゲはありませんでした。
空玲須は、女鹿蘭たち女子と一緒にアトラクションの周りの道を散歩しました。道には細長い鉄柱がいくつも立っています。鉄柱は先が尖っていて、旗が風に靡いていました。
しばらく歩いた後。
広場に或高生が集まっています。
「ショーでもあるのかな?」
のぞいて見ると、三人の或高生が話をしています。
「さっきも言ったけど。
私、雷尾くんのことが好きです!
蛇谷には、悪いんだけど。
私、悪い女だけど。
好きになっちゃったんです!」
「…えっと。
八木、考え直した方がいいよ。
この人、理論オタクで、話長いし。
聞いてると何か…イラつく?
顔はいいけど。」
「僕は、蛇谷さんと話したいんだ。
何か話があるって言ってるから。」
いわゆる修羅場。
近くに、祈るように見ている井尾玲がいました。




