第46話 修学旅行〜テーマパーク①
朝から、気持ちのよい晴れです。
女子たちは、メイクばっちりです。
男子たちは、髪型とシャツのボタンの位置をセットしました。
今日は、修学旅行三日目。「テーマパークで終日自由行動」の日です。
両軍ともに、告る準備は万端整いました。
「クイーン。
僕とパーク、ご一緒してください。」
右手を差し出し、頭を下げる男子。
「あン!?」
必歩流帝は、一睨み。
「ぐはっ。」
テーマパークの入り口で、早くも玉砕事案が発生しています。
「あ、空玲須くーん!?」
出井亜寧羅が男子の囲みを飛び越え、走ってきます。
「みんなも、楽しんでねー!」
笑顔で男子たちに手を振って、出井亜寧羅は空玲須の左腕を取りました。
「入った途端に囲まれて、困ってたんだ。
…ついでに、一緒にパーク回ろ?」
そう言いながら、出井亜寧羅は空玲須の腕をグイグイと引っ張って進みます。
「えっとね…。
昨日調べたんだよね。こっちに行くとね…。」
女鹿蘭は、遠くに空玲須と出井亜寧羅を見送ります。
「…。
わたしも、一緒に行っていいかな?」
明るい声で女子たちに混ざる女鹿蘭の背中は、少し寂しそうに見えました。
「わたし、決めたわ。
今日、あの子と話をする。
…多分『修羅場』になるわ。」
拳を握りしめる女子、八木。その決意を聞いた井尾玲は、考えました。
自分は、今の気持ちを言うことはできない。結果が怖い。受け入れられても、受け入れられなくても…。
だから、勇気ある人に、エールを。
「わたしも、一緒に行ってもいいですか?
応援とかはできないけど、見届けたいんです。」
八木が、井尾玲の手を取ります。
「ありがとう。井尾玲大好き。」
「さて、空玲須は何処におるかの?」
テーマパークを視察に来た体で、尾牟派麗子も参戦です。
恐竜のアトラクションに乗り込んだ、空玲須と出井亜寧羅。セーフティバーがロックされます。
「万が一の場合は、コレを引きちぎって逃げるのかな?」
「違う違う。万が一落ちないように、コレ付けるの。ちぎっちゃダメだよ。」
出井亜寧羅は、花のような笑顔を浮かべています。るんるんです。
がこん、がこん…。アトラクションが登り始めました。
「空玲須くん、手、握っていい?」
出井亜寧羅が差し出した手を、空玲須は軽くにぎりました。
「ありがとう、勇気出た。」
頂上に着く直前。
出井亜寧羅は手を放します。
空が見えます。そして。
目の前のレールが見えなくなった途端、アトラクションは轟音と共に加速しました。
「!!!」
空玲須は、息が止まりました。
「きゃーーーー!!」
出井亜寧羅の叫び声。
空が見えたかと思ったら地面。地面かと思えば真っ暗になり、また空。空玲須は奥歯を噛み締めて、空気抵抗に耐えます。
やがて轟音は収まり、アトラクションが停止しました。セーフティバーが外れて、地上へ…。
なぜだか、うまく立てません。よろよろします。
「空玲須くん〜!フラフラしてる〜。」
出井亜寧羅が、ふらつきながら寄ってきます。
とん。空玲須の胸に頭を当てました。
よろ…。
空玲須はよろめきかけましたが、何とか耐えました。
「ごめん。ちょっと想像以上だったから…。」
やがて、二人とも平衡感覚を取り戻して歩けるようになりました。でも。
なぜだか無言です。話したいけど、異常な疲労感。身体から、何だか変な汁が出た感覚です。
「何か、食べようか…。」
空玲須はやっとのことで、出井亜寧羅にそう言いました。




