第45話 修学旅行〜二泊目
空玲須たちは「エルク」を出たあと、周辺の商店街を散策しました。楽しい時間はあっという間に過ぎて…。
尾牟派麗子の車で送ってもらい、何とかホテルの集合時刻に間に合った空玲須たち。またしても、部屋に荷物を置くとすぐ、夕食です。
夕食は、バイキングでした。
不自然なもので、夕食会場に着いた途端、アレだけ食べた男子たちもお腹が空いてきます。
「よっしゃ、買うぞ!」
ジャージの袖をまくり、料理を取りまくる男子たち。
空玲須の胸に、熱いものが込み上げてきました。
こんな多彩な料理…。しかも、どれだけ食べてもいいなんて。
「神の宴」だ!
「おい、空玲須。
こっちにきて、男子同士親睦を深めようぜ。
悔しいから。」
「悔しい?」
「お前ばっかり。」
「しかも、美女揃い。」
「羨ましい。」
「やけ食いだ!」
「オレも、負けてられないな。」
空玲須は、料理を皿に盛れるだけ盛って、男子とテーブル座りました。
夕食が終わって。
必歩流帝は早めに大浴場に来ました。混む前の方が気楽だと思ったのです。
洗い場には、先客がいます。同じような考えの女子もいるようです。
「よう、女鹿蘭。」
女鹿蘭に声をかけて隣に座りました。
「あら。あなたも混む前派?」
女鹿蘭は答えましたが、必歩流帝の身体に思わず目が止まってしまいました。
グラビアのような、ボンキュッボンです。
女鹿蘭は、改めて自分の身体を見ました。
…勝ててないけど、そんなに悪くないんじゃないかと言い聞かせます。
「ん?どしたん?」
シャワーしながら必歩流帝が女鹿蘭に聞きます。
濡れた金髪。エクステではない長いまつ毛。
「ううん。なんでもないよ。」
女鹿蘭は答えました。
「わーお!
まだ空いてる!」
元気な声の出井亜寧羅が湯煙の向こうから現れました。
「あら?必歩流帝に女鹿蘭じゃん!
何、見つめ合ってんの?」
健康的な仁王立ちで、アハハと笑う出井亜寧羅。あまりにあっけらかんとしています。
三人は身体を洗って、湯船に入りました。
湯の中、窓の近くに座っている人がいます。
井尾玲です。ほんのり赤く染まった頬。美しい銀の髪は、湯に浸からないように高く結われています。
「わたしは長湯な人なので、先に来たんですけど。
みなさんも長湯?」
「ウチは割と短いかな。家では熱めの湯を沸かしてる。」
「わらわは、わりと長湯ぞよ。
何なら、勝負するかの?」
割り込む声は、尾牟派麗子です。
「あなた、どうしてここに?
視察は?」
女鹿蘭の声には明確な棘があります。
「このホテルも視察場所に入っておってな。
ふふ
…あくまで、偶然じゃがの。」
尾牟派麗子は返事をして、目を細めます。
またしても視線バトルが始まるかと思いきや、尾牟派麗子の視線が動きました。
女鹿蘭。出井亜寧羅。そして必歩流帝!井尾玲の身体は、湯の中なので見えません…。
尾牟派麗子は、思わず自分の胸を両手で押さえます。
「くっ…。
わらわは、まだ、コレから発達するのじゃ。」
尾牟派麗子は、隠れるように急いで湯船に肩まで浸かりました。
「あら、尾牟派麗子さん。お風呂では、あの素敵な縦ロールはないんですね。」
「!!」
井尾玲の指摘に、尾牟派麗子は頭の横を押さえて過剰反応します。
「あ、アレは、わらわのステータスというか存在意義そのものというか…。あわわ…。」
「わかります。
髪型って大事ですよね。わたしも三つ編みがうまくいかないとイラッとします。」
尾牟派麗子は、井尾玲に近づいて手を取ります。
「そうじゃ。その通り。
髪型は大事じゃ。
そなたとは、よき友になれそうじゃな。」
水風呂の縁に座る平来。
「沐浴。
よき。
若返る。」
冷水に浸かっている平米が、つぶやきました。
「コンプレックスも、友達も。
どちらも青春です。」




