第44話 修学旅行〜キマイラパンケーキ
恐ろしい。
…恐ろしく、デカい。
テーブルに置かれたパンケーキ。
女鹿蘭の顔の高さまで積み上がっているソフトクリーム。なぜか鷹の爪が刺さっています。
その下は、焼きそば?
さらに、その下に積まれているのは、たこ焼き?
一番下に二枚敷かれている肝心のパンケーキは、お好み焼きにしか見えません。
そして、その周りには、なぜかフルーツ…。
「写真の通りだわ。」
「だけど、デカい。」
「わかってはいたけど…。」
皆、驚きの言葉を口にします。
コレが、「名物キマイラ・パンケーキ」。「エルフ」の一番人気メニューです。焼きそば、たこ焼き、お好み焼きに見えるものは全てスイーツ。ソースはチョコレートソース、マヨネーズはクリームです。ただし。
頂上の鷹の爪だけは本物です。
男子はスマホを出して、撮影タイムです。しれっとパンケーキの後ろに女鹿蘭を入れて撮影。パンケーキを撮るふりをして、尾牟派麗子を撮る不届者もいます。
それを機に、女子たちも撮影を始めます。あらゆる角度から撮りまくります。どう撮れば「映え」るのか、研究が始まりますが…。
「やばい、ソフトクリーム溶け始めた。」
みんな、急いで食事モードにチェンジです。
「さあ、口を開けよ。
あーんじゃ。」
尾牟派麗子は早速、空玲須にアプローチです。空玲須は赤くなって、口を閉じています。
「どうした?食べぬのか?
…ならば、わらわは帰る。
会計は任せるぞよ。」
やばいやばい。それはやばい。六つのパンケーキなんて、お小遣いでは到底足りません。
「ん?
食べてくれるのかえ?」
空玲須は尾牟派麗子に向けて、口を開けます。恥ずかしいなあ。自分で食べれば五口ぐらいなんだけどな。と、空玲須は思いました。
パク。
たこ焼きの部分が、空玲須の口に入りました。
甘い。甘いのか?前に食べたたこ焼きは、甘じょっぱいソースのかかったものだった。これは、あのたこ焼きではない…。しかし、ウマい。これは美味すぎる。またしても神の食べ物なのか?
感動に浸る空玲須の横で、スプーンを持つ女鹿蘭の手が、プルプル震えながらソフトクリームをすくいます。
これを、空玲須に…。
そして、あーん…。
…。
ダメ。言えない。
無理。
女鹿蘭は己の羞恥心と闘います。そして、己の心と闘う乙女がもう一人。
➖➖ほわわ〜(麗子の妄想world?)➖➖
空玲須が口に入れたスプーンで、パンケーキを持ち上げる。
ドキドキが収まらない…。
恐る恐る、口に入れて…。
「尾牟派麗子。コレでオレたちは。」
「うむ。間接チューじゃ。」
照れながら答える、尾牟派麗子。
「こうなれば、間接よりももう、直接。」
「あっ、みんなが見てるぞよ…。」
チューーー。
➖➖➖➖ ほわわ〜 ➖➖➖➖
「いやー!」
頬に手を当て、赤くなる尾牟派麗子。大きな縦ロールツインテが、左右にブンブン振られ、空玲須の顔に当たります。
両隣の女子たちが己との闘いを繰り広げる中、相手にされなくなった空玲須は、いよいよ自分のスプーンを手に取りました。
頂上の、真っ赤なフルーツを掬い取ります。
さっきのたこ焼きは甘く美味いものだった。この食べ物は、甘い。スイーツというやつだ。だから、きっとコレも。
一気に口に入れて、噛む!
空玲須の口から、炎が噴き出されました。
六つの巨大なパンケーキ。女子たちは結局完食することはできず。
男子たちは根性で完食したものの、それ以上何も食べられない状態です。
…と、いうわけで、残りは鷹の爪地獄から生還した空玲須が、おいしく頂きました。
女鹿蘭と尾牟派麗子は、なぜだか赤くなっていました。




