第41話 修学旅行〜一泊目
神社周りの自由行動は終わり、神社前で各クラス集合写真を撮りました。
そして、市街地のホテルへ移動します。
バスの中で、空玲須は女鹿蘭にもらった葉っぱの饅頭を食べました。
ふわりと柔らかくて、甘い。それでいて甘すぎない絶妙なバランス。
「ここには、神の食物が多すぎる…。」
ホテルに到着すると、部屋に荷物を置いて、休む暇もなく夕食です。修学旅行は忙しいなあと、空玲須は思いました。
同室の男子に連れられ、夕食会場に辿りつきました。空玲須は、あの「神の箱」がよくわかりません。光る石を押し、扉が開くと違う場所にいる…。誰かと一緒でないと、迷子になってしまいます。
低いテーブルに、ズラリと並んだ料理。広い部屋の向こうまで続いています。いいえ、テーブルは続いているのではなく、一人分ずつ別になって並べられているのでした。
席を探していると、心配そうな女鹿蘭と目が合いました。慌てて目を逸らす女鹿蘭。素知らぬふりをして、隣の女子の会話に入ります。お礼を言いには、行けなさそうです。
先生がマイクで話します。
「あー、飲み物は各自、近くのものを持ってくるように。
では、いただきます。」
空玲須は、この食事の挨拶が好きです。シンプルな一言に、神と自然と料理に関わる人々への感謝を凝縮している、素晴らしい挨拶。
「いただきます。」
生徒たちは先生の挨拶を復唱して、食べ始めます。
「うまい、うまい。」
もはや、全てが美味。空玲須が食べているところにホテルの人がやってきました。手に持つ棒の先には小さな炎。
「な!?」
驚く空玲須を気にも留めず、ホテルの人は肉の鍋の下にその火を当てます。
「火が消えたら焼けてますから、食べてくださいね。」
ホテルの人は、移動しながらどんどん火を移していきます。
「一人の食事に、一つずつの炎。
なんと、贅沢な…。」
空玲須は目を閉じて、神に感謝しました。
幸せな夕食の後、時間は瞬く間に過ぎて。
消灯時刻になりました。
電気を消して、空玲須たちはベットに潜り込みました。
「なあ、空玲須。」
一人が話し出します。
「お前さあ、女鹿蘭とさあ、付き合ってんの?」
「キスハグした?ねえ?」
もう一人も話に乗ってきます。
しかし、空玲須は返事をしません。
「…?」
空玲須は、すでに眠っていました。
井尾玲は、追い詰められていました。
「こないだのネコの質問さあ。
結局、どっちが大事ってなったの?」
同室の女子が詰め寄ります。
「あれ、ライオンだよ。ネコじゃないよ。」
もう一人がツッコミますが、追求は止まりません。
「なんかうやむやになっちゃって。
不満なのよ。私は。
…答えを出して欲しいの。
私…。」
話の雲行きが怪しさを増します。
「私、あの子の彼氏が好きになっちゃったから!」
ええーっ!
井尾玲たちは、盛大に声を上げてしまいます。
ガチャっ。
「早く寝なさい。消灯時間すぎてるわよ。」
先生が入ってきて注意します。
「すみません。」
先生が出ていってから、ヒソヒソ話が続きます。
「もう、どうしたらいいか、わからないんだよ〜。井尾玲。『恋と友情』はどっちが大事なの?」
「え〜と。う〜んと。
わたしは、自分で決めるしかないと思うの。」
「何それ無責任〜。」
女子たちの恋愛トークは夜遅くまで続きました。




