第4話 学校祭〜居戸狼介①
学校祭の教室のイベントは、前半と後半で担当を分ける決まりになっています。同じ生徒がずっとイベントを運営すると、他のイベントに行けなくなるからです。
空玲須も荷物運びを交代して、学校内を見てまわりました。
部室棟までくると、いつものように元気に手を振る出井亜寧羅の姿が。今日は制服です。
「空玲須く〜ん。釣りやろうよ〜!」
水泳部のイベントはここ数年釣り堀です。簡易プールに魚を放して、お客さんに釣ってもらう遊び。
「空玲須くん、めっちゃ上手いな。普段も、釣りに行ってるの?」
空玲須は、瞬く間に四匹釣り上げました。出井亜寧羅がそう言っている間にももう一匹釣り上げます。
「すごい昔にやったことがあるような…。」
出井亜寧羅は、空玲須の変な答えを笑います。
「何それ!
すごい昔って、前世とか!?」
そのとき、出井亜寧羅は空玲須の持っているお守りに気がつきました。
「あー、それ!
四組に行ったの?」
お守りは、木の板のようなものに紐で手足をつけた素朴な人形でした。二つペアで、男女のようにも見えます。
「ああ。『しゃてき』でいい点をとって、もらった。」
「それ、わたしが作ったの。前にいた国のお守りなんだけど。」
出井亜寧羅はそう言って、男の足と女の足を結びました。続けて手と手も。
「ごめん。壊れかけてたりしたか?」
空玲須は心配になって、お守りをいろんな角度から見てみました。
「ううん。こうしとくとね、
いいことがあるかも、って。」
ズズン!
そのとき、大きくはない音と共に、地面が震えました。
「!もしかして。」
空玲須と、出井亜寧羅は釣り堀に魚を戻して校門の方へ走ります。
予想は大当たり。
大きな、双頭の犬。
後脚で立ち上がり、女子を前脚で掴んでいる。片方は或呉巣高校、もう片方は他校の制服…。
「あの人!
さっき、廊下でちゅ…、
してた人だ。」
出井亜寧羅は途中から顔を真っ赤にした。
「?
なんか、どっか悪いのか?」
空玲須が問いかけるが、出井亜寧羅は赤くなったまま下を向いて首を振った。
「…さっきの二股男。」
いつのまにか、空玲須の横にいた平来が呟く。
「空玲須!」
「空玲須くん!」
女鹿蘭、必歩流帝、井尾玲も集まってきた。どうやら、みんな「怪化」に気がついたようだ。
「オオーン!
二人とも好きなんじゃああ!!」
双頭の犬は、大声を上げた。校舎に反響し、音量が増幅する。
「あの人は、『居戸狼介さんの彼女さん』ですね。」
「知っているのか、井尾玲?」
「ええ。
一度、『私の彼氏にちょっかい出さないで』と言いにきました。『興味ありません』と言ってお帰りいただきましたが。」
居戸狼介…、オルトロス。
少しの頭痛を感じながら、空玲須は、目の前に立つ双頭の犬を見上げた。




