第3話 学校祭〜教室イベント
三組の喫茶店は満員、廊下には待ち人が溢れます。
お目当ては、「オムライス」。他のメニューは、みんなで協力して作り置きしましたが、男子たちの猛プッシュにより、「オムライスだけその場で作る」ことになってしまったのです。
「…全く、空玲須のやつ、余計なことを…。」
愚痴をこぼしつつも、ちょっと嬉しそうな女鹿蘭。しかし、やはり一人で作るのが大変です。
空玲須は、料理もウェイターもできないので、相変わらず荷物運びをしています。人だかりで通りにくい三組の前を抜けると、またも人だかりで通りにくい廊下…。どうやら二組も待ちが発生しているようです。
「ケーキ&喫茶」。看板にはそう書いてありました。
ケーキか…。思いついたことを確かめようとひょいと教室内を覗きます。
いた、いた。山高帽を被った必歩流帝が、ケーキにホイップを飾りつけています。作業は美しく、そして速い。ただ、必歩流帝はそのエプロンドレスが気に入らないようでした。
「なんだよこのガーリーなエプロンはよぉ!
パティシエったら、もっとこう、ビシッとしたやつがあるだろうさ!」
しかし、本人の気持ちとは裏腹に、お客様には好評のようです。
人だかりの二組の前を抜けると、またも人だかり…。一組前方の「お化け屋敷」の入り口は二、三組の待ちですが、もう片方の入り口「占い〜魔性」と書かれた看板の前は大行列です。空玲須は、頼まれたウインナーと卵を取りに、人だかりをぬけ、家庭科室へと急ぎました。
「今日、彼女が学校祭に来るんです。『一緒に回ろうね』って。で、どうしようか迷ってて…。」
このダメ男は居戸狼介。どうやら、この学校にも彼女がいて、二股がバレそうだと「占い〜魔性」に相談に来たようです。
「…バカか?
バレろ。
占いにも出てる。
お前に相応しいカード。」
「一組の魔性」平来が見せたカードは「恋人たち」の逆位置。意味は「悪い選択、壊れる恋」。平来は、ギザ歯を見せてニヤリと笑います。
「どちらか選べ。
覚悟を決めろ。
次…。」
平来は、居戸狼介を部屋から追い出しました。
…キツい言い回しもこの店の行列に一役買っているようです。
「…なんだよ、あの占い。
バレろ?
バレるわけにはいかねえーんだよぉ!」
「狼介?何がバレるって?」
一階を歩いていた居戸狼介の後ろから声をかけたのは、「この学校の彼女」でした。
「うわっ!
…いや、な、何でもねえ。」
「何か隠してるでしょ?
ははぁ、実は…
『他の学校に付き合ってる女がいて、そいつが今日、学校祭に来る』
とか?」
ま、まさかコイツ、知ってるのか?
いや、そんなはずはない。痕跡は巧妙に隠してきたはず。ここは平静を装って…。
「そ、そんなこと、あるわけないじゃん。オレは、お前だけが好きだよ。
ほら、こんな感じ。」
居戸狼介は彼女のアゴをクイッと持ち上げて唇をそっと近づけます…。
そこへ通りかかった出井亜寧羅。見てはいけない、そう思いつつも、目は二人の唇から離せません。
ガタガタッ。
夢中になるあまり、持っていた四組のイベント景品を落としてしまいました。
「あ、あ、ごめん、邪魔しちゃって…。
気にせず続きをどうぞ。拾ったらすぐあっち行っちゃうからね…。」
出井亜寧羅は、真っ赤になって慌てながら景品を拾い集め、そそくさとその場を去っていきました。




