第2話 学校祭〜準備
夏休みも終わり、空玲須たちは学校祭の準備で忙しい毎日を過ごしています。
「学校祭」。
相変わらず空玲須には意味がわかりませんが、とにかく言われるままに飲料の段ボールを運んだり、塗料箱を運んだり、カゴいっぱいの野菜を冷蔵庫に運んだりして、皆に貢献できているようです。
遡ること、一週間前。
学校祭の教室のイベントを考える話し合いが行われました。
三組の男子たちは、なんとか女子たちの可愛い姿を見たいと作戦を練りました。
水着やコスプレなど、あまりに度が過ぎると運営側に却下されます。そこで思いついたのが…。
「メイド喫茶」。
もちろん女子は総反対!「メイド服」は男女差別だ、という意見をはじめ、多数の意見が出されました。
しかし、三組は男子十九人に対して女子は十五人。多数決で、出し物は「メイド喫茶」に決まりました。
「全く、ウチのクラスの男子ときたら…。」
女鹿蘭は、他の女子と愚痴を言い合いながら、空玲須を睨みつけます。反対に男子たちはウキウキです。
「いやぁ、さすが、我々の団結力は大したもんですな。」
「全くですね。ああ、女鹿蘭さんのメイド姿。今から楽しみで眠れません!」
「空玲須、お前も楽しみだろ?」
男子の一人が空玲須の肩に腕を回して言いました。
「うん。女鹿蘭のオムライスは美味いんだよね。」
男子たちは苦笑しました。
「そうじゃなくて、メイド姿、
…!?
ちょ待て、お前女鹿蘭さんの料理、食ったことあんの?」
空玲須は頷きました。男子の声が揃いました。
「うらやまー!!!」
こうして、三組の出し物は「メイド喫茶」に…なりませんでした。
「校内風紀維持」の観点から、運営に却下されたのです。仕方なく、出し物は「喫茶店」になりました。女子も、ホッと胸を撫で下ろします。
男子は、別の目的を持ってがんばることに決めました。
すなわち、「女鹿蘭さんのオムライスを食すること」です。
教室イベントは「喫茶店」になったので、料理好きな男子女子たちは、メニュー開発と調理の練習を始めました。しかし、空玲須は「切る、加熱する」以外の料理はやったことがありません。
そこで、荷物運びの仕事をかって出たのでした。
放課後。
空玲須は、校門から荷物を運ぶ途中、中庭で井尾玲を見かけました。
モップと大きな紙のロールを持って。
服装も普段の制服ではなく、白い上衣に黒い袴姿。髪型もいつもと違う、ポニーテールです。
「あら、空玲須くん。」
井尾玲も空玲須に気づき、声をかけます。
「その格好は?」
「ああ、これ?
今日は体育館が空いているので、練習しに行く途中なの。」
井尾玲は、そこで一息置いて、意を決したように言いました。
「…空玲須くん、見に来る?」
空玲須の心はものすごく揺らぎましたが、荷物を放っておくわけにはいきません。
「ごめん、今はコレ。」
荷物を持ち上げてアピールします。
「…うん。わかった。
じゃあ、またね。」
歩いていく井尾玲の銀のポニーテールが、少し寂しそうに見えました。
この様子を、柱の陰から見つめる者が一人。
長い黒髪、黒ブラウスの改造制服。垂れた前髪に隠された端正な顔…。
ちらっと見えるギザ歯の奥からつぶやきます。
「…平米。
…なんでワタクシがこんな『魔女』みたいなキャラなんですの!
元に戻ったらお仕置きですわ…。」




