第37話 尾牟派麗子〜ドラカイナ②
「おおぉ!
やっと、その気になってくれたのぉ!」
怪しい女性の声が歓喜に沸く。尾牟派麗子の顔を空玲須に近づけてきた。
空玲須に掴まれた尻尾をするりと抜くと、蛇の身体を空玲須に巻きつけた。
「やった!やったよ〜!
おおお〜っ!」
キュッと蛇体を締め付ける。空玲須は、少し力が抜けた感じがした。
「おおお〜。
いい…。
コレは、いいぞよぉ。」
怪しい女性の恍惚の声。空玲須は、巻きつかれた蛇体を振りほどこうと力を込めた。すると、
「そのままにしておけ。」
平来が空玲須に言いました。
「でも。『怪化』を解かないと。」
空玲須が反論する。
「オマエがその蛇体を引きちぎれば、元の娘にも累が及ぶぞ。
いやだろ?」
平来は、ギザ歯の奥で笑った。
蛇体は、少し太くなったようだ。
「オマエの精気なら、くれてやれ。
いくらでも、な。」
平来は、そう言って部屋の壁にもたれかかった。
蛇体はさらに太く、長く伸びていく。尾牟派麗子の顔が天井近くまで高くなった。
「おおお〜、いい。
いいぞよぉ〜。もっと。
もっとぉ!
ほれ、この娘も喜んでおる…・」
怪しい女性の声に紛れて、
「わらわは、こんなこと…。
いや…。」
尾牟派麗子の声が聞こえてくる。
蛇体は、さらにきつく空玲須を締め付けてきた。
「よい、よいぞぉー。」
「いや、いやじゃー。」
二つの声が重なる。蛇体はまた、どんどんと太くなり、ついに天井を突き破った。
「な、なんじゃ。
どうしてわらわが大きく…。
そちは、なぜに平気なのじゃ。
こんなに精気を吸っておるのに。」
尾牟派麗子の様子が変わる。怪しい女性の声に、空玲須は答えた。
「そんなこと。
オレが知るか。」
平来が、くくっと笑う。
「おお〜。
これ以上は耐えられん。耐えられんのに〜。
よい…。止められない〜。」
蛇体は、さらに太く大きくなる。
「空玲須。すまぬ。
わらわが、悪いのじゃ。
わらわが、そちのことを想ったから。
妙な夢を見たから、こんなことになったのじゃ。
本当にすまぬ。」
かすかに、尾牟派麗子の声が聞こえた。
「…行く末は見えた。
わらわが、吸えば良いのじゃ。
さすれば、このまま大きくなって、そのうち耐えられなくなるじゃろ。
空玲須。
迷惑をかけてすまなんだ。
でも。
来てくれて、嬉しかったぞよ。」
空玲須は、また少し力が抜けた感じがした。蛇体が、さらにさらに巨大化していく。やがて、蛇体から黒い煙が噴き出しはじめ…。
「それでは、の。
さらばじゃ。」
尾牟派麗子の声が、上空から聞こえた。
拘束が緩み、蛇体が黒い煙となって霧消していく。
「勘違い。
あの娘は消えない。
受け止めろよ。」
平来は不機嫌そうに言って、ドアから出て行った。
空玲須は、上空を見上げた。
降ってくる尾牟派麗子。
空玲須は、慌てて落下点に入り、尾牟派麗子の身体を受け止めた。




