第23話 体育大会〜打ち上げ
体育大会は、三組の優勝でした。
でも、誰も不満はありません。
真面目に競技に取り組んだ生徒たちも。
春日伊逢も、久礼田太朗も。
それぞれ心は、満足感でいっぱいでした。
こうして、体育大会は幕を閉じます。
「やっほー!待った?」
制服に着替えた出井亜寧羅が、女鹿蘭に声をかけます。
ここは、駅前ショッピングモールのフードコート。ドーナツ屋の近くの席には、或高生のカバンがたくさん席取りをしていました。
「みんな、お疲れサマ〜!」
出井亜寧羅の明るい声で、みんながグラスを掲げます。
「おおー!」
「お疲れ〜。」
…そう、高校生のイベントは、まだまだ終わりません。
「打ち上げ」です。
それぞれのテーブルは、初めこそ今日の体育大会についての話題でしたが、やがて、男子と女子の席は自然と分かれて行き…。
女子は、誰かと付き合っている噂で盛り上がります。
「クイーンも誘ったんだけど、何か用事があるってさ。
…彼氏かな?」
「まさかあ。あの人と付き合える男子なんて、この世にいるわけない。」
「何かヒドイ言われよう…。
でも、ちょっとわかる。強いよね、いろんな意味で」
「空玲須ぐらいなら、釣り合うんじゃない?よく、一緒にいるし。」
「一緒にいると言えばさ。」
「そうそう!空玲須って…。」
「周りに女いっぱいいるよね。しかも。」
「そう、しかも。」
女子たちの声が揃います。
「美女ばっかり!」
女鹿蘭と、出井亜寧羅と、井尾玲は、自然と同じ席に集まっていました。
「わたし、体育大会では全く出番がありませんでした。」
しょぼくれる井尾玲を、女鹿蘭が慰めます。
「わたしも似たようなもんだよ。運動できる人が羨ましいわ。」
ちらっと、出井亜寧羅を見ます。
「んー?
わたしも今年はあんまり。
でも、パン食い競争はできてよかったよ。」
うんうんと頷く井尾玲。そこに、噂話が聞こえてきます。
「…空玲須ぐらいなら、釣り合うんじゃない?よく、一緒にいるし。」
ピクッ。三人ともおかしな反応をします。
一緒にいる?誰の話?
…わたし?
三人は耳をそばだてます。
「…空玲須って…。」
「周りに女いっぱいいるよね。」
ズーン。
そう言われてみれば、そうだ。
わたしも、よく一緒にいるし。
三人はそれぞれ、複雑な思いに沈みました。
男子は、目の前の光景を夢かとばかりに眺めていました。
三組のマドンナ。
四組のアイドル。
五組のプリンセス。
同じテーブルで、仲良くドーナツを食べている。
…尊い。尊すぎる。
二度とはないかもしれない、奇跡の光景。
男子たちは一瞬も見逃すまいと、一心に見守り続けました。
その横で。
空玲須は、一人「どーなつ」を食べていました。
ふわふわで、甘い。雪のように白く降りかかるこれも。甘くて、美味。
神の食べ物に相応しい。コレを人が普通に食べられるなんて…。
「あなた様。
お口が砂糖まみれですよ。」
いつの間にか、空玲須の隣には平米が座り、口についた砂糖をハンカチで拭いています。
「よう、空玲須!遅くなっ…!?」
遅れて来た必歩流帝が、空玲須に声をかけ…ようとして言葉に詰まりました。衝撃の光景に、思わずドーナツを落として立ち尽くします。
みんなの注目も、空玲須に集まります。
「ん?
どうかした?」
…空玲須は、またしばらく女鹿蘭に冷たくされそうです。
「くくく、牽制してる。
平米…。」
平来は、離れた席でチョコドーナツをかじりながら呟きました。




