第22話 体育大会〜久礼田太朗
春日伊逢の竜巻も収まり、体育大会は再開されました。
と、その前に来賓のあいさつです。
「聖リディア女学院生徒会長、尾牟派麗子さんから、あいさつをいただきます。」
「うむ。
いつも世話になっておるな。
尾牟派麗子じゃ。
皆、青春せよ!
全員、カッコ良いぞ!」
会場からは割れんばかりの拍手!
「…学校祭の校舎破損に関しまして、尾牟派グループからの修繕に援助をいただいたことをお知らせします。皆さん、拍手を。」
会場は、再び拍手で溢れました。
さて。いよいよ、体育大会の花形「綱引き」です。
三組は、四組と対戦です。そして、ここにも。
「二年間、オレのクラスは負け続けだった。
…最後ぐらい、勝って終わりたい。
俺の高校生活が、負けではないと証明するためにも、この綱引き、負けられないんだあ!」
三年四組、久礼田太朗のハートは燃えています。
そんなこととはつゆ知らず、空玲須は三組の殿として綱の端を持ちました。
「ほら。これ。
身体に巻くんだよ。あっちもそうしてるでしよ?」
女鹿蘭が、空玲須の腹に綱をぐるぐる巻きつけます。空玲須は女鹿蘭の顔をじっと見つめました。
「な、何よ?」
「うん。女鹿蘭はよく気がつくなあ、って。
いつも、ありがとう。」
女鹿蘭は、何も言わずに赤くなって行ってしまいました。
「綱引きか。」
軽い頭痛。アルゴー号。少しだけ、過去の記憶めいたものが、空玲須の頭をかすめます。
「位置について。」
掛け声の後、号砲!
みんな一斉に綱を引きます。
観客は、おかしなことに気がつきました。
…綱が、動いてない。
三組も四組も、みんな必死で綱を引いているのに、綱は微動だにしません。いえ。四組の方が力は強いように見える。それでもつなが動かないのは。
三組の綱の端の空玲須。コイツが、強すぎる…。
三年四組、久礼田太朗は思いました。
「このままでは、勝てない。
終わってしまうのか、俺の高校生活は。
負けたままで?」
思わず叫びます。
「負けるわけに、いくかあー!」
足元から黒い煙が立ち上り、久礼田太朗の身体を包みます。驚いて逃げ出す生徒たち。
煙が晴れたとき、そこに立っていたのは青銅の巨人でした。
綱を持ち、力を込めて引きます。不意をつかれて、空玲須は三歩ほど前に出てしまいました。
「やるな!」
空玲須も引き返します。綱は最初の位置まで戻りました。
「ぬうううー。」
「おおおおー。」
空玲須と巨人は、その後は双方譲りません。綱は一進一退。
観客席も、熱い戦いに声援を送ります。
「平米?
あれ、どうすんの?」
平来が聞きます。
「…青春ですから。
気の済むまで、やってもらえたらいいですよね。」
平米は、にっこり笑って言いました。
「かかとの栓とか、ぬかないんだ…。」
平来はギザ歯の奥でつぶやきました。
ミシミシ…。
観客の予想通り、綱は二人の力に耐えきれなくなってきました。
空玲須と、久礼田太朗。二人はお互いの目を見つめ合います。
好敵手。
その言葉、まさに目の前のアイツに相応しい。二人は腕に、手に力をみなぎらせます。
号砲!
残酷にも、時は終わりを告げてしまいました。綱は…
わずかに、三組寄り。
しかし審判の旗は、赤白二つ挙げられていました。
…引き分け、の判定。
会場からは割れんばかりの拍手。判定に異を唱えるものなど、いるはずもありません。
降り注ぐ拍手の中、久礼田太朗は人間の姿に戻っていました。
空玲須が、握手を求めます。
立ち上がって、その手を掴む久礼田太朗。
二人の素晴らしい闘いに、拍手が鳴り止むことはありませんでした。




