第20話 体育大会〜借り物競争
学校祭が終わって、学校も落ち着いたかと思いきや、今週末は体育大会です。
「なあ、女鹿蘭。
学校って、祭りが多くて忙しいな。」
「…。
三年生が受験あるから、日程詰まるんじゃない?」
最近の女鹿蘭はこんな感じで、空玲須に冷たいです。
「祭りって、牛を食うもんだと思ってたけどね…。」
「…。
プッ。それじゃバーベキューじゃん。」
「やっと、笑った。」
空玲須は、女鹿蘭が笑ったのが、何だか嬉しいと思いました。
体育大会当日。まずは短距離走からです。
空玲須は、ぶっちぎりの一位。陸上部すらその記録には届きません。
「オマエがいてくれたら、三組は安泰だ!」
男子たちは肩を叩き合って泣きます。
女子短距離走は、二組と四組が新記録。
「ふふふ…。やるわね。
って一度言ってみたかったんだよね。」
出井亜寧羅が、笑いながら必歩流帝に話しかけます。
「ウチ、去年は出てなかったから。」
必歩流帝が出なかった理由は秘密です。
写真部のフラッシュが激しく光ります。
高跳び。
出井亜寧羅の身体が、華麗に宙を舞います。
幅跳び。
必歩流帝が、またも新記録更新!
砲丸投げ。
想定を越える距離を飛ばす空玲須。
…もはや、三人の独壇場です。
男女の長距離走が終わり、記録系の競技から「みんなが楽しむ系」の競技に移りました。アナウンスが流れます。
「借り物競争にエントリーしている生徒は、スタート位置に集まってください。」
「おーい。空玲須。」
男子が空玲須を呼びました。
「借り物競争に出る奴が足挫いちゃって。代わりに出てもらえる?」
空玲須は即答して、集合場所に向かいました。
「三組は…。」
「代理です。空玲須です。」
審判係にそう言って、空玲須はスタートを待ちます。でも。
「借り物競争」って何だ?
競争である以上、ゴールまで走るのは間違いありません。問題は「借り物」。
空玲須は、先に走る組の生徒の様子を、まじまじと観察しました。
カードを拾う、観客に見せる。カードに書かれたものをもらってゴールへ走る。
何だ、簡単じゃん。空玲須はそう思いました。
いよいよ、空玲須の組のスタートです。
「よーい、バン!」
「いっけー!
空玲須!」
女鹿蘭も応援に熱が入ります。
一斉にスタート!カードを拾います。
…
…
空玲須のカードに書かれていたものは。
「三首の犬」
…いるわけない。女鹿蘭は思いました。
「あなた様、がんばれー!」
観客席から声がかかりました。平米です。
犬を連れています。
三首です。
「ケルちゃん。
あなたも応援してね!」
「ばう、ばう、ばう。」
ケルちゃんも応援します。
…周りの人の目は、点になりました。
空玲須はケルちゃんを借りて、一位でゴール!三つの舌でベロベロベロです。
「ケルちゃんは、あなた様を覚えているのですね。ペルセポネ様からお借りできてよかったです。」
平米の言葉はわからないことが多いけれど、何となく納得した空玲須なのでした。
その後、ケルベロスは、平米を通じて駅土奈先生に無事返されたようです。




