第18話 学校祭〜備青恋②
「そうですね。
…みなさんにも、手伝ってもらいましょうか。」
平米はそう言って、必歩流帝、女鹿蘭、出井亜寧羅、井尾玲、そして尾牟派麗子の額を、順に人差し指で触れていく。
「あ、あれ?」
意識を取り戻した五人は、空玲須が抑えている備青恋を見て、すぐに状況を理解した。
「みなさん、楽しくバンドをやりましょう。」
平米は、女子たちに微笑みを送った。
「歌には歌、ということじゃな。
ならば、わらわはギターじゃろ?」
「わたし、キーボードなら家にあります。」
「えー?じゃあわたしがベース?
初めて触った…。」
「ウチは、何でもできるよ?
女鹿蘭は…?」
「わたしは、サックスなら…中学の頃やってたから。でも、楽譜がないと、急には…。」
「わかりましたわ。サポートいたします。
…はい!」
平米は、どこかからアルトサックスを出して、女鹿蘭に差し出した。
「楽譜のことも、心配ありませんよ。」
女鹿蘭は半信半疑で受け取った。
「じゃ、ウチはドラムか。
でも…。」
必歩流帝は、半壊したステージを見回して言った。
「この状態で、演奏なんかできるのか?」
「大丈夫ですよ。安心してくださいな。」
平米が、自信たっぷりに言う。女子たちは、何となく機材をセットして、試しに音出し…。
ブブンブン、ベケベケベケ、タラリロリン。タタタッタッタタンシャーン。プバプババババ…。
全ての楽器が、きちんと鳴る。しかも、素人のはずの出井亜寧羅すらきちんと音が出せている。
「行けるか?
イントロ…。」
必歩流帝がスティックを鳴らしてテンポを決める。
初めてのはずなのに、なぜか体が勝手に動く。知らない曲なのに、イントロがピッタリ合う…。
空玲須は、五人がピッタリ合わせているのを聞いて、思わず力を緩めてしまった。備青恋が、隙を逃さず飛び立つ。
「待って!」
出井亜寧羅が呼びかけた。
「一緒にやろうよ!
ボーカルは、あなた。」
飛び去ろうとした備青恋が、地上に戻ってくる。
「『怪化』の力じゃない、あなたの声が聞きたいな。」
出井亜寧羅が手を差し出して微笑みかけた。
かっかっかっかっ。
「ワン、ツー、ワンツースリーゴー。」
必歩流帝のカウントの後、演奏が始まりました。
聞いたことがない、でも聞いたことがあるような気がする曲。イントロのギターソロが決まります。
そして、メロディ。歌うは、備青恋。
美しく、伸びのある高音。パワフルな低音。メンバーは、目を合わせて頷き合います。
観客の瞳に、次々と輝きが戻っていきます。
いつしか、備青恋の「怪化」は解け、元の人間の姿に戻っていました。
ギターとボーカルのセッション!尾牟派麗子と備青恋の競い合うような演奏&歌唱!
ドラムソロ!激しく刻むビートに合わせてボーカルが復帰します。
間奏はキーボードのソロ。少し儚気なメロディから、アルトサックスが被さります。
観客席からはクラップが溢れ、会場の熱気はさらに増します。空玲須も、もう夢中で手を叩き、応援しました。
「平米…。」
平来が何か言おうとしたのを、平米が笑顔で遮りました。
「『青春』ですから。」




