第16話 学校祭〜一番カワイイ或高生コンテスト⑥
まだまだ続いている「一番カワイイ或高生コンテスト」。次は、井尾玲が立ち上がりました。
「あの、すみません。スクリーンを。」
事前に頼んでいたらしい、大型のモニターがステージに出されました。
「わたしも、あまり人前に出す特技がないので、うちの子たちのことを話します。」
井尾玲がスマホを操作すると、モニターに写真が映し出されました。明るくて少し見えにくい…。観客は目を凝らしました。
二匹の猫が、井尾玲と思われる膝の上に座っています。
「うちの子たち。イピちゃんとトスちゃんです。やーん。かわいい。」
みんな、耳を疑いました。「やーん!?」口調がいつもの井尾玲ではありません…。
次々と写真をめくる井尾玲。
「ああ、コレもいい…。あ、コレ、最高です。イピちゃんはここが好きで…。あ、トスちゃんは怒ってます。怒ってるのにかわいいーん。」
そして一瞬。
「あ、コレはダメ。ダメです。」
井尾玲はすぐに写真をめくってしまいましたが、観客たちは、そこに映ったもの見逃しませんでした。
「猫耳…。」
猫耳カチューシャをつけた井尾玲が、猫と一緒に猫ポーズをしている写真。
観客はモニターに釘付けです。もう一度見たい…。また映るんじゃないか…。
井尾玲はもう二度とその写真に戻すことはありませんでしたが、観客の心には「猫耳でにゃーん」の井尾玲の姿が強く焼きついたのでした。
「ついに、わらわの出番じゃな。」
最後に、尾牟派麗子が立ち上がります。
布石は既に打ってある、空玲須は、わらわがピアノを弾くと思っておろう…そこで、ギャップじゃ。
尾牟派麗子が持ち出したのは、ギター。アンプに接続して、微笑みます。
➖➖ほわわ〜(麗子の妄想world)➖➖
「尾牟派麗子、ピアノだけでなく、ギターまで弾けるのか!」
「ふふ、驚いたじゃろ?」
「ああ、何てかっこいいんだ尾牟派麗子。
あなたが、好きです。」
「許す。
抱きしめて、たも…。」
ぎゅーッ。
➖➖➖➖ ほわわ〜 ➖➖➖➖
「勝ちに、いくぞよ。
曲は『FU・GO 〜Billionare remix』!」
前奏、カウントに続いて、ギターソロ。
…上手い。
つかみは上々です。そして、いよいよ歌い出し。
…下手じゃない。
決して下手じゃないけど、ギターの方が上手い。ロックバンド解散後のギタリストのソロ曲みたいです。
そして、その歌声に怒りを露わにする者が一人。
「あんな歌。しかも他校の生徒のくせに!
私は歌う場すらないのに!」
備青恋の足元から、黒い煙が巻き上がります。
空玲須!
女鹿蘭!
必歩流帝!
出井亜寧羅!
井尾玲!
尾牟派麗子!
皆、一斉に『怪化』に気づいた。
演奏を止める尾牟派麗子。
やがて煙はすっかり吸収され、備青恋は両腕の羽を羽ばたかせてステージへと舞い降りた。肌は青白く、足元までたなびく長い髪。上半身は美しい女の姿だが、備青恋のそれではなく、その身体は羽毛に包まれていた。
「♪〜。」
備青恋は口を大きく開き、息を吐いた。音は聞こえないのに、歌に聞こえる。美しい歌。
観客たちは、たちまち魅了されたようにその場に立ち尽くした。
ステージ上の女子たちも、空玲須も同じように恍惚の表情を浮かべ、その場から動かない。
「コレは、まずいな。」
平来は、ギザ歯の奥で小さくつぶやいた。




