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第22話 風の中


荒野に迫る、巨大な竜巻。


逃げ遅れたノエルとエルネ。

そして、二人を追って飛び込んだミュルラス。


三人は、風の中へ。



Au cœur du vent


三人は、急いだ。


荒野の向こう、

大きな岩場が、見えてくる。


「あそこだ!」


ミュルラスが、先に辿り着く。


その頃には、

風は、立っていられないほど強くなっていた。


「早く来い!」


「分かってる!」


ノエルは、

エルネを支える。


トルモたちは、

もう土の中へ逃げていた。


あと少し。


もう少し、

岩場まで――


その時、

ごおおおおおっ。


「……!」


砂と土が、

空へ巻き上がった。


「ノエル!」


巨大な風が、

目の前で、立ち上がる。


竜巻。


ミュルラスが、手を伸ばす。


「手を伸ばせ!」


ノエルも、伸ばす。


届かない。


「エルネ!」


ノエルは、

老人を庇った。


次の瞬間、

体が、浮いた。


「ノエル!」


空へ、巻き上げられる。


「くっ……!」


エルネを、離さない。


風。

砂。

空。

何も、

分からない。


その時、

黒い影が、飛び込んできた。


「ミュルラス!」


強い腕が、

二人を、包んだ。


「馬鹿!」


ミュルラスが、

ノエルを抱き込む。


「ミュルラス!

なんで 飛び込んできたの!」


「お前がいるからだ!」


三人が、

風の中で、

巻き上げられていく。


「このままじゃ……!」


ミュルラスが、

腕に力を込める。


ノエルは、

風を見る。


風。


荒れ狂う、風。


でも、

ふと、思った。


「……風さん」


ノエルは、

目を閉じる。


「僕たちを」


強い風。


その中へ、

声を、置く。


「安全なところに、連れていって」


「ゼフ、リラン」


ふっ。


「……?」


ミュルラスが、

顔を上げる。


竜巻は、消えていない。

ものすごい勢いで、回っている。


なのに、

三人の周りだけ、静かだった。


「なんだ……?」


ミュルラスが、風を見る。


「今のは、魔法か?」


三人を抱いたまま、ノエルを見る。


「風の中が、静かになったぞ」


「ほう……」


エルネが、目を細めた。


「風の魔法。Lv.3じゃの」


「え?」


ノエルが、

エルネを見る。


「Lv.3?」


「そうじゃ」


「僕、Lv.1だったはずなのに」


エルネは、答えない。


ただ、

楽しそうに、笑っている。


やがて、

風が、ゆっくり弱くなる。


三人の体も、

少しずつ、下へ。


木々が、見えた。


「森だ」


枝。

葉。

地面。


ゆっくり。


ゆっくり。


そして、

三人の足が、地面へ触れた。


風が、ふわり。


ノエルの髪を、揺らす。


「……ありがとう」


空を見上げる。


「風さん」


静かになった。


*


「ノエル」


ミュルラスが、

すぐに顔を覗き込む。


「大丈夫か?」


「うん」


ノエルは、笑った。


「僕は大丈夫」


「どこも痛くないか?」


「大丈夫だよ」


そして、


「君のおかげ」


「俺?」


「助けに来てくれたから」


ノエルは、

ミュルラスを見る。


「みんな、助かった」


「君は、すごいね」


「……いや」


ミュルラスが、

風の消えた空を見る。


「お前の魔法がなかったら」


少し、眉を寄せる。


「俺でも、三人を無事に着地させられなかった」


「じゃあ」


ノエルが、笑う。


「二人で、力を合わせたからだね」


「……」


ミュルラスが、

ノエルを見る。


その時、


「ほーっほっほっほっ!」


「……」


二人同時に、

振り返った。


エルネが、

大きな声で、笑っている。


初めて聞く、

老人の、豪快な笑い声。


「なんだ、じじい」


「いやいや」


エルネは、

まだ笑っている。


「何でもない。何でもない」


「変なじじいだな」


「はいはい」


ノエルが、

二人の間に入る。


「無事だったんだから、いいじゃない」


そして、辺りを見る。


木。

草。

さっきまでいた、荒野とは違う。


「……ところで」


ノエルは、

首を傾げた。


「僕たち、どこに落ちたんだろう」


「ああ」


ミュルラスが、

地図を出した。


広げる。


三人で、

覗き込む。


「……」


ノエルが、

瞬きをする。


「ずいぶん、飛ばされたね」


西へ向かっていたはずなのに、

現在地は、西というより、

ずっと、中央に近い。


ノエルは、

地図を見る。


そして。

顔を上げた。


「ここって、どこ?」


à suivre…



思いがけず、風の魔法がLv.3に。


なぜ分かったのかと尋ねても、

エルネは笑うばかり。


そして三人は、予定とは違う場所へ辿り着いたようです。


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