第11話 白い贈り物
昨日、初めて知った「プレゼント」。
今日は、
それを受け取る日です。
Les présents blancs
十二月二十六日。
二人が出かける支度をしていると、
エティエンヌがふと思い出したように魔王を見た。
「そうだ。君、足のサイズは?」
「そんなもの知らん。」
「だよね。」
エティエンヌは立ち上がると、奥の部屋へ消えた。
しばらくして、
箱をひとつ抱えて戻ってくる。
「これ、前に知人からもらったんだけどね。」
蓋を開けた。
中には、
オフホワイトのレザースニーカーが入っていた。
装飾はほとんどない。
けれど、
柔らかな革の艶と、細部の仕立てのよさが目を引いた。
「僕には大きすぎて。ノエルにも無理だったんだ。」
エティエンヌが笑う。
「君なら、ちょうどいいかもしれない。」
魔王は靴を見た。
「履いてみていいのか。」
「もちろん。」
足を入れる。
驚くほど、ぴたりと収まった。
魔王は立ち上がり、何歩か歩いてみる。
軽い。
足の裏が柔らかい。
こんな靴は、履いたことがなかった。
「どう?」
「……悪くない。」
そう言いながら、もう一度歩く。
ノエルが笑った。
「かなり気に入ってるね。」
「そう見えるか?」
「うん。」
ノエルは玄関に置かれた、魔王のブーツを見る。
黒く、重厚なブーツ。
ところどころに、鋭い突起がある。
片方を持ち上げようとする。
「……重っ。」
両手になる。
「これ、何でできてるの?」
「ドラゴンの牙だ。」
「……。」
ノエルは、そっと元へ戻した。
「普段はスニーカーがいいね。」
「そうなのか?」
「うん。絶対その方がいい。」
魔王は、もう一度足元を見る。
白い靴。
自分では、おそらく選ばなかった色だった。
「よかったら、それ、君にあげるよ。」
エティエンヌが言った。
魔王が顔を上げる。
「俺に?」
「うん。僕が持っていても履けないから。」
魔王は、もう一度スニーカーを見る。
昨日、ノエルから教わった言葉が浮かんだ。
「……これも、プレゼントか?」
エティエンヌが少し笑う。
「そうだね。プレゼント。」
魔王はしばらく黙っていた。
それから、足元を見たまま言った。
「……もらっておく。」
「どうぞ。」
エティエンヌは、
何でもないことのようにカフェオレを飲んだ。
魔王は、
もう一度足元を見た。
白い靴。
昨日まで、
プレゼントという言葉すら知らなかった。
à suivre…
自分では選ばなかった、白い靴。
どうやら、
かなり気に入ったようです。
次は、このまま街へ。




