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第5話 友達を連れて行く


今年のクリスマスは、ひとり増えます。


J’amène un ami.


彼が家にいるようになって、

もう数週間が過ぎた。


いつから、

そうなったのかは分からない。


朝になるといる。


大学へ行けば、

どこかにいる。


帰ってくると、

だいたいついてくる。


夜になれば、

ノエルの部屋にいる。


十二月。


ベルサイユの空は、

冬の色になっていた。


クリスマスをパリで過ごすため、

ノエルは二週間ほど、

父のところへ戻ることにしていた。


「ねえ、君。」


「なんだ。」


「僕、明日からパパのところに戻るんだけど。」


彼が顔を上げる。


「パパってなんだ。」


「え?」


「パパ。」


「ああ。お父さんのこと。」


「父親か。」


「うん。パパはパリにいるんだ。」


彼は、

少し考えた。


「それで、君は?」


「俺?」


「クリスマスは、家族のところに帰るの?」


「クリスマス?」


今度は、

ノエルが彼を見る。


「クリスマス、知らない?」


「知らん。」


「キリストの誕生日だよ。」


「キリスト?」


「イエス・キリスト。」


「誰だ。」


「……。」


どこから話そう。


ノエルは少し考えて、

やめた。


「まあ、誕生日をお祝いする日。」


「ふーん。」


彼は、

それ以上聞かなかった。


「君は?」


「何が。」


「家族。」


「……。」


少しの間。


「俺には、そのパパというのはいない。」


「そうなの?」


「たぶんな。」


「たぶん?」


「部下なら、たくさんいる。」


「……そっか。」


ノエルは、

少し考えた。


「じゃあ、君も来る?」


彼が見る。


「どこへ。」


「パリ。」


「なぜだ。」


「一緒にクリスマスしようよ。」


「……。」


「パパ、料理が上手なんだ。」


ノエルは、

少し嬉しくなって話し始めた。


「毎年、クリスマスはすごく美味しいものを作ってくれるよ。」


「何を作る。」


「それは、その年によるけど。」


「肉はあるか。」


「あると思う。」


「そうか。」


少し、

興味が出たらしい。


「あ。それと君。」


「なんだ。」


「いつも僕の服、着てるでしょ。」


「そうだ。」


「新しいの買おう。」


「なぜだ。」


「僕の服がなくなるから。」


「……。」


「パリには、いろんなお店があるよ。」


「店……。」


彼が、

少し黙った。


「どうしたの?」


「なんでもない。」


「そう?」


「行ってやってもいい。」


「じゃあ、決まりだね。」


ノエルは、

スマートフォンを手に取った。


父にメッセージを送る。


友達を連れて行く。


すぐに、

返信が来た。


大歓迎。


ノエルは笑った。


「パパも喜んでるよ。」


「……。」


彼は、

何も言わなかった。


その夜。


ノエルは、

パジャマに着替えた。


いつの間にか、

二人で並んで眠るようになっていた。


最初は狭かったベッドも、

少し慣れた。


それでも、

彼は大きい。


横になると、

かなり場所を取る。


部屋の灯りを落とす。


窓の外には、

冬の夜が広がっていた。


しばらくして。


隣から声がした。


「そういえば。」


「なに?」


「キリストの誕生日ってなんだ。」


「さっき言ったよ。」


「誕生日というのはなんだ。」


ノエルは、

暗闇の中で瞬きをした。


「生まれた日。」


「生まれた日。」


「うん。その人が生まれた日を、お祝いするんだよ。」


「……。」


少し、

静かになった。


「君の誕生日はいつ?」


「俺の?」


「うん。」


彼は、

天井を見ていた。


「……。」


「分からない。」


「忘れたの?」


「もう二千年くらい前だからな。」


「そっか。」


また、

少し静かになる。


「お前は?」


「僕?」


「誕生日。」


「十月だよ。」


「十月。」


「十月五日。」


「もう終わったのか。」


「うん。」


ノエルは、

天井を向いたまま目を閉じた。


長い睫毛が、

頬に影を落とす。


彼は、

その横顔を見ていた。


誕生日。


生まれた日。


「……。」


俺は、

いつなんだろう。


そう思ったとき。


胸の奥に、

何かが引っかかった。


何か。


忘れている。


ずっと遠くに、

何かがある。


けれど、


手を伸ばそうとすると、

消えてしまう。


隣から、

小さな音がした。


すう。


すう。


ノエルの寝息。


静かな部屋に、

同じ音が繰り返される。


彼は、

しばらくそれを聞いていた。


「……まあ、いいか。」


少しだけ、

ノエルの方へ身体を寄せる。


頭が、

そっと肩に触れた。


ノエルは、

起きなかった。


彼も、

目を閉じた。


窓の外では、

十二月の夜が、


静かに深くなっていった。


à suivre



明日は、二人でパリへ行きます。

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