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Prologue II 君を見つけるまで


今度は、少しだけ彼の側から。


ノエルを見つけるまでの、

名前のない「君」のお話です。



Jusqu’à ce que je te trouve


魔王城の古い塔は、

相変わらず静かだった。


高い窓から、

細い光が落ちている。


古い本。

革の匂い。

乾いた紙の匂い。


二千年分の埃。


魔王は、本棚の間を歩いていた。


自分の名前。


どこかに、

手がかりくらいないものか。


「……。」


ふと、足を止める。


本棚の一角。

本がぎっしりと並ぶ中に、一冊分だけ、空いている場所があった。


魔王はそこを見る。


「ここ……。」


何かがあった。

そんな気がする。


指先を伸ばす。

空いた場所に、手を入れた。


その瞬間。

ひやり、とした。


「……?」


もう少し、手を伸ばす。


ふわり。

どこからか、香りがした。

魔王が顔を上げる。


「……なんだ、この匂い。」


知っている。

そんな気がした。


次の瞬間。

腕を、何かに引かれた。


「……っ?」


身体が傾く。

光が歪む。


そして——


魔王は、落ちた。


*


夜だった。


頭上に、知らない空がある。


「……。」


魔王は起き上がった。


知らない街。

石造りの建物。


「どこだ、ここ。」


遠くに、

灯りが並んでいる。


魔王は振り返った。


大きな古木が立っていた。


「……。」


よく似ている。

魔王は、その幹に触れた。


それから、もう一度匂いを探す。


近い。

すぐそばだ。


そのとき、

目の前の建物で、窓が開いた。


誰かが、身を乗り出す。

明るい茶色の髪が、夜風に揺れた。


魔王は、木の影からその姿を見る。


匂いがした。

あの匂いだ。


けれど。

なぜ、人間からこの匂いがする。


青年が、こちらを向きかける。


魔王は、その場を離れた。


それから数週間。

魔王は、その人間を見ていた。


大学へ行く。

本を読む。

ノートを書く。


ときどき、空を見る。


何がそんなに面白いのか、よく分からない。


けれど、

あの匂いがする。


だから、もう少し見ていることにした。


ところが。

なかなか、こちらに気づかない。

かなり近くにいても、気づかない。


ようやく気づいたと思ったら、

そいつは、魔王の顔を見て、

すん、すん、と鼻を動かした。


「この匂い、懐かしい。」


魔王は、少し驚いた。


変なやつだ。

そう思った。


けれど。

自分も、同じことを思っていた。


à suivre…



同じ匂いを、

二人とも懐かしいと思っていました。


まだ、お互いのことは何も知らないけれど。


à bientôt.


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