第11話 護持者
今日は、
新しい出会いがあります。
Le Gardien du Livre
遠足から帰ってから、
ノエルは風邪をひいて寝込んでいた。
日本へ来てから初めての熱だった。
マイさんがお医者さんを呼んでくれて、
薬を飲むと、熱は少しずつ下がっていった。
温かいミルクに、ちぎったデニッシュをひたひたに浸す。
蜂蜜をたっぷりかける。
風邪をひくと、いつもママンが作ってくれた。
ベッドの中で、ノエルはぼんやり天井を見上げる。
春が過ぎ、
夏が過ぎ、
もう秋。
今日は秘密基地には行けないな。
手縫いの白猫、ドドをお腹にのせる。
それにしても──。
風の魔法。
風の声が聞こえるって、
この前みたいなことなのかな。
でも、本当に耳を澄ませないと聞こえない。
ノエルは小さくつぶやいた。
薬が効いてきて、うつら、うつらしていると、
誰かが呼んでいるような声がした。
しゅるるるる……。
しゅるるる……。
風の音?
なんの音だろう。
ふっと目を開ける。
夢……?
机の上のノートが、淡く光っていた。
ゆっくり近づく。
ひとりでにページがめくれ、
今まで読めなかった、一番最初のページが開く。
そこには、
シュル・シュシュル
と書かれていた。
「……読める。」
ノエルは、そっと声に出してみた。
「シュル・シュシュル。」
その瞬間、
遠く、
あの古木の方から、
小さな声が聞こえた。
「ぼっちゃま!」
「……ぼっちゃま?」
*
次の朝。
熱はすっかり下がっていた。
ノエルは朝ご飯もそこそこに、裏山へ駆けていく。
秘密基地へ入り、
絵本を開いた。
静かに息を吸う。
「シュル・シュシュル。」
絵本の中央。
三角の紋様が、やさしく光り始める。
光はふわりと浮かび上がり、
手のひらほどの小さな人影になる。
ぽすっ。
ノエルの膝に降り立つ。
小さな人影は、服の裾を整えるように立ち上がると、
深々と頭を下げた。
「ぼっちゃま。」
つづく
また、
秘密基地でお待ちしています。




