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第41話 あなたの笑顔をみるために、救いたい

 陽架琉(ひかる)が中学校を休んだ日のこと。


 魂蔵(ごんぞう)は、学校からの帰り道に少し重だるく歩いていた。


「ハァ〜 」


 気がつけば、ため息が出ていた。これが何度目かのため息かも分からずに、ただ家への歩くしかなかった。


 魂蔵の近くで、車のドアの開閉音と足音が聞こえた。

 周りの音は聞こえても、現実を観たくなくてうつ向きがちになりながら歩いていた。


2


「じっちゃん!」


「えっ? 」


 魂蔵はうつ向いてたのを、聞き慣れた声で頭を上げる。


「勘助(かんすけ)」


「じっちゃん。前をみてないと、危ないよ」 


 知永生の父親の勘助は、少し複雑そうな顔をして言った。


「知永生(ちとせ)は、先にじっちゃんの家に行っててな。俺は、この車にガソリンを満タンにして届けに行く途中だったんだ」


 二人が会ったのは、学校の門から少し離れた場所の公園前の駐車場だった。

 この公園は、生前の陽架琉の姉のあおいがたけしの姉のきよかと胸の内を話した場所だ。


 あの時に、あおいがきよかと出会って話していなかったら、今以上の後悔が陽架琉の家族に襲っていたのだろうか。


「じっちゃん、送ってくよ」


 勘助が駐車場に停めている車は、『宮本工務店』の文字が入っていた。

 この車なら、大人数でも余裕で乗るからだ。勘助は、陽架琉のためにタダで貸している。



「いつものように返す時は、ガソリンを入れてくれたらいいよ。俺は、この車をじっちゃんの家に置いたら、散歩がてら歩いて帰るよ」


「おう」


 二人は、車の前で話していた。


「じっちゃん、陽架琉くんの学校で何かあったんだな。車の中で聞かせてくれないか? 」


「おう」


 二人は、車に乗り込んだ。魂蔵は、後部座席に座った。


 勘助は、エンジンをつけてエアコンを効かすが、出発をしようとしない。


「陽架琉は、あのひ(・)のことを、あと何年苦しめば良いんだ」


 魂蔵の声は、たくさんのいろんな種類の感情がごちゃ混ぜになっていた。


「何も知らない奴らに、竜輝(りゅうき)やあおいのことを、勝手に面白おかしくいられないといけないんだ」


 魂蔵の言葉を、勘助はバックミラーで見ながら話しを聞いた。


「人の命の尊さを、よく分からないヤツが暴れたんだ。その家族に対して、同じ人間と思えない言動しか出来ないんだ」


 魂蔵は、心に溜め込んでた感情を吐き出していった。

 

「陽架琉は、つらくて苦しいのに。ワシらを想って、今回のことを伝えるのが「嫌なの」って言う優しい子なのに」


 陽架琉たちの目の前では、今回のことで出来る限り魂蔵は感情を表に出さないようにしていた。

 

「陽架琉は、また階段から落ちるかもしれなかった。普段は、階段を気にしてるのに。その余裕さえなかったんだ」


 勘助は黙って、魂蔵の言葉たちを受け止めた。


「本当は、もうどうしたら良いか分からん。みんなが、ワシを繋ぎ止めてくれるから。何とか、踏ん張れてるだけなんだ」


 魂蔵の声や顔は、普段と違ってグチャグチャだ。



「じっちゃん、喉乾いてるだろ。ほら、水でも飲んで」


 勘助は、袋から水のペットボトルを取って魂蔵に渡した。


「悪い」


「おう」


 後部座席から、「ゴクっゴクっ」と水を飲む音がした。


「悪い子ばかりじゃなくて、一人だけ良い子がいるんだ」


「そうなの? 」


 魂蔵は、陽架琉と同じクラスの錦城(きんじょう)のことを話した。

 陽架琉の認識では、「錦城くんが悪いことをしたと認めたり、階段のところで止めてくれたりしたから、良い子」になっている。


「良い子だな。これから、陽架琉くんと仲良くなってくれたら、良いね」


「そうだな」


 また、魂蔵は水を飲んだ。


「勘助、話しを聞いてくれてありがとうな」


「良いんだ。ため込みすぎると、心と身体に悪いからね。じっちゃんには、まだまだ長生きをしてほしいからね」


「フッ」


 バックミラー越しの魂蔵の顔色は、最初よりも良くなっていた。


「そろそろ、行こうか」


「そうだな」


 勘助は、公園の駐車場から車を走らせる。


「陽架琉くんたちは、良い子だからな。外野の声を完全に無視はできなくても良いから。俺たちが、良い子だって分かっていたら良いんじゃないか」


 勘助は、前を向いて運転をしながら言った。


「そうだな」


 魂蔵は、持っていたタオルで顔を拭いた。


「これから、遊園地に行くんだろう。楽しんできて」


「おう。今更だけど。社長がこんなことしてて、良いのか? 」


「う〜ん。息抜き」


「フッ」 


 勘助の言葉や言い方が、魂蔵にとってなんだか面白かった。


「本音を言うと息抜きが半分。もう半分は、じっちゃんが心配。知永生にも、色々聞いて。実は、さっきの公園に先回りして、待ってたんだ」


「やっぱり、そうだったんだな」


「バレてた? 」


「そりゃあ、タイミングよく声をかけてきたからな」


「だよな」


 勘助は、「ハハッ」と笑う。


「これでも、声をかけるかってギリギリまで悩んだ。じっちゃんの雰囲気が、この世の終わりのような感じで怖かったから」


 勘助の声は、震えていた。


「そうか。声をかけてくれ良かったよ。ありがとうな」


「うん。そう言ってもらえて、良かった」


 勘助の声は、安心が混じっていた。そして、彼は話題を変えることにした。


「知永生も、遊園地を楽しみでな。いつもよりよイキイキしていたよ」


「そっか。知永生にも、負担をかけてないか心配だったんだ」


 魂蔵は、安心したようにため息を吐いた。


「じっちゃん、大丈夫だよ。うちの息子は、心も身体も頑丈だから。じっちゃんが気にしてるほど、知永生は、そんなに負担って思わずに、好きで楽しんでやってるよ」


「ありがとうな」


 魂蔵は、安心した表情をしていた。


 勘助は少し遠回りの道で、魂蔵を倉西家に送っていた。  


「じっちゃん。俺で良ければ、いつでも話を聞くから。負担に思わなく良いからね」


「……良いのか? 」


「おう。だって、俺はじっちゃんの雇い主だからな。従業員の話を聞くのも社長の務めだよ」


「フッ」


 魂蔵は、笑う。



「勘助のクセに、調子の良いことばかり言いやがって」


「それも、あるけどさ」


 勘助の声は、さっきと違って低かった。


「ん? 」

 

「俺にとって、じっちゃんはさ。俺のもう一人の親父で、家族なんだよ。それで、陽架琉くんも俺にとっての大切な家族。家族って、どんな時でも支えて生きていくもんだろ」


 後部座席からは返答はなくても、タオルで鼻をすすり、声を少し抑えながら泣く音が聞こえた。


 勘助は、黙って車を運転していた。


3


「せっかく、まともな顔になったのによ」


 少し経ってから、魂蔵はそう文句を言った。


「……俺は、じっちゃんと親父たちに教わったことを言っただけだよ。これは、俺の人生の分岐点だ」


「そうか」


 勘助が少し遠回りの道を使っても、最後の角を曲がれば倉西家に着く。


「道の端に、一回停めるよ」


 勘助はそう言って、邪魔にならない所で車を停めた。

 そして、すぐに運転席から後部座席の方に座っている魂蔵の顔を直接観た。


「思ったよりも、人間味のあふれる顔だ。陽架琉くんたちは、心配しないよ」


 勘助は、魂蔵の顔を観て安心をしていた。


「ハァ? 」


「じっちゃんは、気づいてないかもだけど。朝、工務店に来た時、じっちゃんを観てすぐに分かったよ」


 勘助は、窓越しの空を少しの間観ていた。


「すごく無理してるのにさ。必死に平気なフリをしているように観えた。その時も、すごく思い詰めてるようで、あ(・)の(・)時(・)みたいで、怖かったよ」


 勘助は、知永生から今回のことで分かっている範囲をだいたい聞いていた。

 その翌日である今日、工務店に現れた魂蔵を観ると、なかなか言葉が出てこなかった。


 苦しくて堪らないのに、平気なフリをしていた。まるで、仮面を被ってるようだった。

 それでも、工務店で付き合いの長い人たちにはバレている。

 一部の若い連中にもバレていたが、どうしたら分からずに困っていた。

 長年の付き合いのある人たちが中心になって、魂蔵と業務のやりとりをした。


 勘助の言うあの時は、魂蔵の妻のちよこが亡くなった年のことだ。

 魂蔵が誰も見たことがないような、顔つきと心が酷く荒れていた。

 その時のことを、関わった全ての人が忘れることが今でも出来ない。



 魂蔵は、自宅では陽架琉にバレないようにと演じていた。

 でも、職場の工務店に行くと無意識に気が抜けるのか、感情が観て分かりやすかった。


 家では、陽架琉がまた不安にならないようにと、魂蔵は自分の感情を出来る限り抑えるようにしていた。


 今(・)は、いつもの二人と普段は海外に在住してる椿もいるから。少しは、気持ち的にもマシだった。


「やっぱり、迷惑だよな」


「じっちゃん、何言ってんの? 」


「えっ? 」


「迷惑じゃないよ。俺は、家(・)族(・)のために考えてるんだ」


 勘助は、たくさんの感情を込めた大きな声で言った。


「じっちゃんの能力を活かして、心と家族のために動けやすいように、現場仕事はあの時からさせてない。工務店内なら、時と場合にもよるけど。じっちゃんの本音を、もう少し出しても良いよ」


 勘助は、あのひ(・)をきっかけに、現場仕事にいけなくなった魂蔵のことを思って仕事を考えた。


 工務店の作業場所なら、陽架琉のことで急遽早退や遅刻をしても、学校関係と倉西家が近いから何かと動きやすい。

 工務店内なら、何かと気を張っている倉西家よりも心を休めるかもしれないと思った。


 同じ敷地内の宮本工務店と宮本家は、魂蔵が若い頃からよく過ごしていて、何度も寝泊まりをしたこともある、もう一つの家なのだから。


 工務店のみんなは、魂蔵に数え切れないほど助けてもらった。

 魂蔵の老後も、協力していこうと密かに団結をしていた。

 

 そんな時に、『受験生連続放火殺傷事件』が起こった。


 魂蔵の息子夫婦と孫の二人が、この世からいなくなった。

 それから、魂蔵の険しくて苦しくて、とてつもなく悲しい人生の分岐点に始まってしまった。


 工務店のみんなは、「じっちゃんの老後のために協力する時期が、少し早まっただけだ」と言って、自分たちができることをしようと思った。



 じっちゃんの感情が揺れ動いたら、そっと寄り添っていこう。


 陽架琉のことで大変なら、仕事の調整をしていこう。


 少しでも、じっちゃんがゆっくりと心を休めるように、陽架琉を宮本家に泊めよう。


 ある時、自分たちは生きることがつらかったり、道を踏み外しそうになったりした。

 そんな時は決まって、じっちゃんが一番に想って駆けつけて助けてくれたんだ。

 

 じっちゃんがいてくれたから、今の自分たちがいる。


 だから、今度は自分たちが、じっちゃんにそう想ってもらいたくて助けたいんだ。


 だって、じっちゃんに比べたら、自分たちの苦しみや負担は大したことないから。


 工務店のみんなは、たくさんの時を一緒に過ごした『じっちゃん』のことが大好きだ。

 彼らは、ひたむきに生きているじっちゃんを苦しめる『受験生連続放火殺傷事件』だけが許せなかった。 


 何もなんの罪も犯していない倉西家の命があるひ(・)突然奪われた。

 そして、今生き残ってるじっちゃんと陽架琉くんを苦しめる存在が許せない。


 だから、工務店のみんなは、『じっちゃん』への返しきれない恩を今(・)返している。


 自分たちをじっちゃんが救ってくれたように、今度は俺たちが救いたいんだ。


 これは、じっちゃんへの配慮や特別扱いじゃない。


 これは、人として当(・)た(・)り(・)前(・)の(・)こ(・)と(・)を(・)し(・)た(・)だ(・)け(・)。


 ただ、それだけなんだ。


「俺たちは、さすがにじっちゃんのようにはなれないけど。じっちゃんのように、数え切れないぐらいの何かの助けが出来れば、俺たちはそれで良いんだ」


 魂蔵は、ティッシュで涙を拭いてからペットボトルの水を飲んだ。


「俺たちは、じっちゃんと陽架琉くんの笑顔をこの先と変わらずに見たいんだ」


「ありがとうな」


 魂蔵は、ありがたくその気持ちを受け取った。


「大きなお世話かもしれないけど。色々とつらくなったら、逃げてもいいからさ」


 勘助の声は、どこか重かった。


「えっ? 」


「じっちゃんだけが、俺の家に泊まりに来たらいいよ。陽架琉と一緒に来ても良いけど。離れたくなる時もあると思うから。そういう時は、陽架琉くんは知永生たちとじっちゃんの家でお留守番をしてもらったら良いんだ」


「そういことか」


 魂蔵は、ため息をついた。


「うん。知永生とたけしくんとなら、陽架琉くんは大丈夫だと思うから」


「そうだな」


「俺の家は、昔とほとんど変わってないところもあるからさ。じっちゃんが懐かしく思える場所もあるし、心もリラックス出来るんじゃないかなって」


「そうだな。ワシの家なのに、知永生とたけしが我が物顔して好きにしてるから。ワシも、宮本家でそうしようか」


 魂蔵は、少し冗談ぽく言った。


「それは、ごめん。あとで、知永生を叱っとくよ」


 勘助は、少し冗談ぽく返した。


「良いよ」


 魂蔵は、少し笑いながら言った。


「なんだか言って、ワシもそれを許してるからな。ワシ一人じゃ、もう大きくなってきた陽架琉についていくのは疲れたよ」


 魂蔵は、本音を入れた。


「疲れるよな。そう言えば、じっちゃんって今いくつだっけ? 」


「そんなのは、もうとうに忘れたよ」


 二人は、「ハハッ」と笑う。


4


 突然、車内に着信音が鳴り響く。


「あっ、俺だ。電話、出るよ」


「おう」


 スマホの画面には、知永生の名前が表示されていた。


「あっ、もしもし」


『今、大丈夫? 』


「うん。大丈夫。車をじっちゃんの家の近くの路肩に停めてるから。知永生、どうした? 」


『「どうした? 」じゃないだろ』


 知永生は、ため息を付いた。


『「工務店の車をじっちゃんの家に持っていく」って言ってから、結構時間が経ってるからさ』


「心配してくれたのか」


『おう。悪いかよ』


 知永生は、少し恥ずかしそうに言った。


「悪くないよ。心配してくれてありがとうな」


『おう』


 知永生は、嬉しそうに言った。


『で、なんでこんなに遅いんだよ。陽架琉が、「今から行く」ってモードになってるから。それに、じっちゃんからも連絡こないし、帰ってこないから』


「あっ、悪い。途中でじっちゃんを見つけて、車に乗せたんだ。それで、ゆっくりとドライブしててな」


『そうか。それなら、仕方がないな。じっちゃんは、大丈夫そう? 』


 知永生は、すぐに勘助の意図が分かった。


「だって、じっちゃん? 」


『えっ? 』


 勘助は、いつの間にかスピーカーにしていた。


「知永生、心配かけてごめんな」


『良いよ』


「勘助に、話を聞いてもらったから。大丈夫だ。これで、心置きなくみんなと遊園地を楽しめるよ」


『そりゃあ、良かったよ』


 知永生は、安心したように笑った。


『椿さんと陽架琉と一緒に、遊園地のサイトを見てたんだけど。遊園地のキャラのぬいぐるみが欲しいって。あと、服とかカチューシャとかを、目をキラキラさせながら言うから。じっちゃんに、任せるって言っておいたよ』


「フッ。そうか」


 魂蔵は、その様子がすぐに想像がついて笑った。


「じゃあ、椿に買わせようか。たくさん、稼いでると思うから」


『それ、良いな。あっ!たけしが、自分の財布から出そうとしてる』


 魂蔵は、知永生のほうから少しにぎやかな声が聞こえたのに、なんだか安心をした。


「もう、帰るよ。遊園地で、昼メシを食おうか」


『そうしよう。陽架琉が、フードメニューを見て目をキラキラさせてた』


「そうか。陽架琉、元気そうで良かったよ」


『うん。じっちゃんも元気そうで良かった』


「……おう。じゃあ、またあとでな」


 勘助が、通話を終了させた。


「やっぱり、知永生も気がついていたか」


「そうだよ。知永生は、俺らよりもじっちゃんと過ごしてる時(・)期(・)もあるから。分かるんだよ」


「フッ。時(・)期(・)て、今(・)もそうだろう」


「ハハッ、確かに。あっ、じっちゃん」


「ん? 」


「これは、今日のお小遣いな」


 勘助は、お金が入った封筒を魂蔵に差し出した。


「もらえない」


 魂蔵は、それを受け取ろうとしない。


「じ(・)っ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)にじゃなくて、陽(・)架(・)琉(・)く(・)ん(・)にだよ。昨日と今日と頑張ってるからな。そのご褒美に、俺のポケットマネーから出してるよ。管理は、じっちゃんがしたら良いよ」


「おう。そういうことなら、ありがたく受け取る。ありがとうな。陽架琉にも言っとくよ」


「うん」


 勘助は、嬉しそうだった。


「勘助、自分の息子には、小遣いはあげないのか? 」


「じっちゃん、もう知永生は成人して一(・)人(・)前(・)から。自分の金は、自分で出させたら良いよ」


「そう言えば、そうだな」


 二人は、笑った。


「じゃあ、出発するよ」


「おう」


5


 数分後に、二人は倉西家に到着をした。そして、車を降りると、すぐに玄関のドアが開いて陽架琉が出て来た。


「じいちゃん、遊園地に行こう! 」


 陽架琉が、目をキラキラさせながら言った。


「お、おう。陽架琉、準備万端なところ悪いけど。じいちゃんは、トイレに行きたいから。その後に、遊園地に行こうな」


「はーい! 」


 魂蔵は、ホッとため息をついた。陽架琉を追いかけて家から出て来た知永生たちも、ホッとため息をつくのだった。


 魂蔵がトイレに行ったり一息をついたりした。工務店の車を知永生が運転ですることにして、家を出発した。


6


 そして陽架琉は、楽しみにしていた遊園地に行くことが出来た。


 陽架琉は、欲しかったぬいぐるみを買ってもらったり、お目当てのフードを食べたりして楽しい時間を過ごした。

 お金を出す場面では、椿とたけしが静かな戦いをしていた。


「陽架琉、これが欲しいのか。じゃあ、俺が買うよ」


 と、お土産屋さんで知永生は言ってサッと買った。


「陽架琉、これが食べたいんだな。じいちゃんが、かってくるからな」


 と、魂蔵はフードコートでそう言って、サッと買った。もちろん、勘助からもらった陽架琉へのお小遣いから使った。


 陽架琉は、小四の時の階段からの転落時の後遺症で身体が少し不自由だ。

 知永生は慣れたように陽架琉をサポートをしながら、アトラクションを楽しんだ。

 

7


 魂蔵は、暗くなってきた遊園地を出る前にベンチに座って話すことにした。

他のみんなは、少し離れた所で二人を見守っている。


「陽架琉、今日は楽しかったか? 」


「うん!また、みんなで行こうね! 」


 陽架琉は、とびきりの笑顔でそう答えた。


「おう!また、行こうな。陽架琉が喜んで楽しんでくれて、じいちゃんは嬉しいよ」


「うん〜! 」


 嬉しそうにしてる陽架琉を見て、魂蔵は一度深呼吸をして話し出した。


「陽架琉が、つらいって思ったことは、伝えてくれたら。じいちゃんは、嬉しいんだ」


「えっ? 」


「一緒に、つらいって気持ちと戦えるからな。それに、じいちゃんと陽架琉には、たくさんの家族がいるんだから。つらくなっても、独りじゃないから。大丈夫だよ」


「うん。分かった。ぼくとじいちゃんには、たくさん家族がいるね!大丈夫! 」


 陽架琉は、少し涙を浮かべてこぼしながらでも、笑顔だった。


「たくさん、楽しめたね! 」


「そうだな! 」


 魂蔵は、陽架琉が遊園地で買った服とカチューシャやぬいぐるみを見た。


 服は、陽架琉がたくさん汗をかいたりフードを食べてる時に、こぼしたりしたから着替えとして買った。


 カチューシャは、たけしがお揃いにしたいという熱望で魂蔵と椿以外が買った。

 

 ぬいぐるみは、元々陽架琉が集めるのが好きなのとお目当でもあったから買った。


 陽架琉を観れば、遊園地を全力で楽しんでいるのが分かった。


 それが、なんだか面白くて魂蔵は笑った。そうしたら、陽架琉も釣られたのか笑ったのだった。

読んでいだたき、ありがとうございます。

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