第40話 時を巡れるなら 【後編】
後編も、長めです。前編を読んでからのほうが分かりやすいです。
陽架琉が、『明日は、学校休みなの』と言った翌日のこと。
魂蔵たちは、陽架琉の意思を尊重をした。本当は、登校を続けて欲しい気持ちもある。
でも、今回は無理やり登校をさせるのは危険だと判断をした。
今回のは、たとえこの時点で『受験生連続放火殺傷事件』が終結しても、あらゆるトラブルとしてやってくるだろう。
『受験生連続放火殺傷事件』が起こらなかったら、多くの人は何年を苦しまずに済んでいる。
2
みんなで、一緒に居間で朝ごはんを食べた。
「たけし、寝ながら食うなよ」
知永生は、隣でウトウトしているたけしに言った。
「椿。たけしは、いつもこうだから。気にするなよ」
魂蔵は、心配そうにしている椿に言った。
「そうなんだ……」
椿は、昨日と今日でたけしの印象が変わってきた。
「そうなんだよ。たけしは、陽架琉と一緒にご飯を食べたいからって、半分以上寝てる状態でも起きてくるから」
知永生が、補足をした。
「おぉ……」
椿は、彼は、向かい合って座るたけしを見ながら、そのことに余計にひいていた。
「今日、学校、お休み」
椿の横で座っている陽架琉が、唐突にそう言った。
「そうだよ。今日は、特別にお休みをしような」
椿が、優しく言った。
「うん」
「陽架琉くん。午前中は、俺と一緒に宿題をしようね」
その言葉に、魂蔵は驚いていた。
「椿、日本の中学校の勉強を教えれるのか? 」
「教えれるよ。えっ、知永生くんまで、不思議そうな顔をして見ないでよ」
「だって、椿さんと陽架琉の時代だと教科書の内容が違うから」
「俺は、これでも、あっちで自分の子供の勉強をみてるから。だいたいは、今の時代のことは分かるよ」
日本と海外で教える内容は、当然違うことが多い。数学や理科やギリ英語は、だいたい似たようなことが多い。
でも、国語や社会だと大きく違う場合があるから。
いくら椿が日本の中学校に通っていても、今の時代に合ったものは教えることが難しいはずだ。
陽架琉は、たけしのおかげで読むことはある程度は出来る。
でも、一行を読むのに時間がかかったり、言葉がゴチャついてしまうことがあったりする。
分からなくて、しんどくなりたくないのに、心が乱れることもあった。
陽架琉は、発達がゆっくりで、同級生より少しレベルを落として書きやすい方法で解答をしている。
そして、知永生お手製の道具があれば、比較的落ち着いて勉強が出来るようになっている。
その道具はは、一行だけしか観えないように切り抜かれた白い紙で、それを使えばほぼ一発で文章が読めるようになってきた。
支援級の担任のお手製のプリントがあれば、ノートに書く量がかなり減らせる。陽架琉が書く量は、必要最低限にしている。
陽架琉の心が荒れそうなときは、勉強道具を観えないところに片付けた。
そして、落ち着いたら陽架琉から伝えて、また勉強を再開する方法をしている。
「一応、電子書籍で陽架琉くんの学校が使ってる教科書を買って、勉強してるから大丈夫だよ」
椿はさらっと、すごいことを言った。
「えっ? 」
知永生が、驚いた。
「昨日のフライトや知永生くんのお家にいた時にね。全教科の内容の読み込み、完了してるよ」
椿は、みんなの心配をよそにさらっと、とんでもない言った。
陽架琉が中学校に入学して数カ月たってないぐらいの教科書の内容を読み込んでいるのは、恐ろしい。
「あとは、陽架琉くんに合わせた勉強方法を教えてくれたら、何とかなりそうかな」
椿のすごさを、魂蔵たちは改めて実感した。
「椿って、頭良いんだな」
「椿さんって、海外で長く仕事をしてるだけあるな」
「そうですね」
三人は、口々にそう言った。
「ねっ、それって褒めてんの?軽くディスってない? 」
「ほめてるよ」
魂蔵が、笑顔で言った。
「良かった! 」
椿は、すごく嬉しそうだった。
「陽架琉の勉強方法は、まとめてるシートをみたり、知永生たちに聞いたりしたら良い」
「分かった。知永生くん、ご飯を食べたら教えてくれる? 」
椿は魂蔵に返事をしてから、知永生の方を見て言った。
「もちろん。でも、俺、このあとじっちゃんと工務店に行くからさ。簡潔に、説明することになるけど。良い? 」
「あっ、そうだったね。うん。それで良いよ」
「了解した」
知永生は、そう言った。
「陽架琉、今日は椿に宿題をみてもらおうな」
魂蔵が、陽架琉の方を見て言った。
「うん〜!楽しみ! 」
「陽架琉くん、ニコニコだね」
たけしはほぼ寝ているのに、陽架琉の笑顔を見逃していなかった。
「たけしの陽架琉センサーって、なんかすごいよな」
「そうだな」
知永生と魂蔵は、少し呆れたように言った。
3
知永生は、雑魚寝布団を用意して、たけしをとりあえず居間の隅に寝かせた。
単純に、二階の部屋に運ぶのが面倒くさかったからだ。
その後に、知永生は椿に陽架琉の勉強方法を簡潔にシートも使いながら伝授をした。
「知永生くん、ありがとう。これで安心して、陽架琉くんと勉強ができるよ」
「そう言ってくれて良かった。まぁ、なんかあったらさ。力仕事や危ないことじゃなかったら、たけしを叩き起こしたら良いよ」
「それって、あり? 」
「うん。陽架琉のことなら、ノリノリでするから。ひくかもしれないけど。気にしなくて良いよ」
「通常運転なんだね。理解したよ」
椿は、深く考えるのをやめた。
「うん」
知永生はそう返事をして、クスっと笑った。
一方、魂蔵は陽架琉を洗面所に連れて行って、朝の身支度を一緒にしていた。
椿は、魂蔵たちに聞こえないように居間の戸を閉めて、小さな声で話し始めた。
「知永生くん、いつもありがとうね」
「えっ? 」
知永生は、椿からの突然のお礼に驚いた。
「俺は、魂蔵さんや陽架琉くんのお世話を任せきりにしてるから。色々と大変なことを、まだ子供って言える時からしてもらって……」
「俺たちが好きでやってるから。気にしないで良いです。本当に」
知永生も小さな声で、椿の言葉に被せる言って、居間に飾っている竜輝たちの写真に視線を移した。
「確かに、あのひから色々あったよ。投げ出したくなることだって」
知永生は、視線を椿の方に戻した。
「でも、これが俺の人生の分岐点だからさ。俺は、好きでやれるところまでやるよ」
知永生は、自信持った顔つきと声で言った。
「知永生くんって、本当に俺より年が下なの? 」
「えっ? 」
「『人生の分岐点』って、魂蔵さんがよく言ってるよね。俺は、知永生くんと同じ状況でも、そうは言えないよ。君は、大人だね」
「褒め言葉? 」
「うん。そうだよ」
椿は、あのひがきっかけで、まだ子供でいれる年の知永生たちを大人にさせてしまったと、ずっと後悔をしていた。
本当は、自分が海外に住んでいるとか魂蔵にとめられたからとか関係なく、日本に行きたかった。
でも、椿自身が行かないという人生の分岐点を選んだから。
そのせいで、まだ高校三年生の知永生たちを犠牲にしたと思った。
「椿さんが、何で悩んでるか知らないけど。俺とたけしは、本当に好きやってるだけだよ。よく言うでしょ。人生は、楽しんだモン勝ちって」
「ハハッ。そうだね」
知永生は、椿が悩んでることをなんとなく察していた。
椿が、自分からハッキリ言わないのなら、こっちだって言わない。
「お~い! 」
洗面所の方から、魂蔵が呼ぶ声が聞こえた。
「じっちゃん、どうした? 」
知永生は戸を開けて居間から出て、廊下で返事をした。
「知永生、アレを持ってきてくれ」
「また、やらかしたの? 」
「おう」
「分かった。ちょっと待って。すぐ取ってくるから」
「助かる」
知永生は、慣れたように受け答えをした後に、陽架琉の部屋に行った。椿は、なんとなくついて行くことにした。
知永生は、陽架琉の部屋の引き出しを開けていた。
「知永生くん、またやらかしたって? 」
椿は、何かを察して小声で聞いた。
「あぁ。時々、陽架琉が顔を洗う時にね。無意識に、服の袖や襟元を水でびちゃびちゃにしてしまうことがあって」
知永生も、小声で話した。
「それで、これを持っていくんだ」
椿の視線の先には、知永生が陽架琉の着替えの服を持っていた。
「うん。対策をすれば、取りに行かなくても良いんだけど。俺たちも、人間だからさ。うっかりで忘れちゃうんだよね」
「あ〜。なるほどね」
椿は、納得したように頷いた。
そして、知永生は慣れたように陽架琉の服を脱衣場に持って行った。その後ろを、椿が付いていく。
この時の陽架琉は、まだパジャマだった。タイミング的に、普段着を着れるから余分な洗濯を増やさなくて良かった。
「じっちゃん、お待たせ」
「おう、助かった」
「ありがとうね」
陽架琉が、ニコリと笑って言った。
「良いよ。今度は、濡らさないようにしような」
「うん〜 」
知永生は、陽架琉の着替えを手伝うことにした。
「狭いから、ワシらは廊下で待ってるよ」
「了解した。パジャマは、一旦ハンガーにかけておく」
こういう時には、知永生はお風呂のドア枠にハンガーにパジャマをかけて干している。
「助かる」
魂蔵はそう言って、椿と一緒に洗面所を出た。
「それで、たけしは起きてなかったか? 」
魂蔵が、小さい声で椿に聞いた。
「たぶん、起きてないと思うよ」
「良かった」
魂蔵は、ホッとした。
「なんか、濁してたのってやっぱりそういうこと? 」
「あぁ。朝ごはんの時をみれば、わかると思うけどな」
「うん。なんとなく察したよ」
「たけしが、無理してるとこがあるから。少しでも寝かしたくてな」
たけしは、陽架琉命のところがあった。自分よりも優先するべき人に、陽架琉がダントツ一位を飾っている。
今回のことで、魂蔵と知永生は彼に無理をさせてしまったと思っているから。少しの間でも、休ませてあげたかった。
「お待たせ〜 」
ちょっとしてから、脱衣場から知永生と陽架琉が出て来た。
「知永生、ありがとうな」
「うん」
「あっ、二人とも時間は大丈夫? 」
「「えっ? 」」
椿は、二人にスマホの画面を見せた。
「やばいな」
「そろそろ、行かないとな」
知永生と魂蔵は、やらかしたという顔をしている。二人は、必要な物を急いで取りに行った。
4
四人は、玄関の方に行った。
「椿、なにかあったら連絡をしろよ。お昼前か昼過ぎには帰るから」
「分かった。魂蔵さんも、帰る前に連絡して」
「了解」
「椿さん、なんかあったらさ。たけしを叩き起こして」
椿は、「フフッ」と笑って頷いた。
「二人とも、いってらっしゃい」
「じいちゃん、知永生くん。気をつけてね。いってらっしゃーい」
「「陽架琉、行ってきます」」
二人は、ニコッと笑っていた。そして、陽架琉の頭を撫でてから家を出た。
5
知永生たちが家を出た後のこと。陽架琉は、少し元気がなかった。
「陽架琉くん? 」
椿は、陽架琉の視線が合うようにしゃがんだ。
「あのね」
陽架琉の声は、小さくて震えていた。
「ゆっくりでいいよ」
「うん」
陽架琉は、うつむいていた。
「陽架琉くん。俺から提案をしたいことがあります」
「なぁ〜に? 」
「陽架琉くんのお部屋に、一緒に行ってね。おしゃべりをしてから、宿題をしよう〜」
「手をつないで〜 」
「良いよ〜 」
椿は、差し出された手を握って廊下を歩く。陽架琉の部屋に入ると、まだ布団が敷かれてるままだった。
「布団の上で、座ったりゴロンとしたりして、おしゃべりをしよう〜 」
椿は出来るだけ、陽架琉が安全にリラックスをして話せれるように考えた。
「うん」
陽架琉がゴロンっと寝転がったので、椿もそうすることにした。
「おしゃべりは、陽架琉くんからしてもらって良いかな? 」
「良いよ」
陽架琉の言葉に、椿はホッとため息を着いた。
「ぼくね。やっぱり、みんなにね。迷惑なの」
「えっ? 」
椿は、陽架琉の言葉にドキッとした。
「僕ね。もう一つのクラスにね。いないほうが良いんだって」
陽架琉は、昨日のことをポツリポツリと話しだした。椿は、それを黙って聞くことしか出来なかった。
「ぼくって、悪い子なの? 」
陽架琉は、言葉と一緒に涙をポロポロと流した。
「錦城くんが、ぼくのことね。すごいねって。先生も、出来ないって」
陽架琉の言葉は、チグハグしてることが多くて一度ではどういう意味なのか分からない。
でも、椿は陽架琉が初めて自分から昨日のことを話してることがすごく嬉しかった。
誰だって心はまだつらいのに、自分の気持ちを言葉を伝えるのは怖いからだ。
その怖さの中には、誰かを傷つけないかという不安と心配が入っていた。
「兄ちゃんとお姉ちゃん、悪くないのにね。嫌なことを言われたの」
同じクラスの男子たちが、自分都合で好き勝手に竜輝たちのことを笑いながら言っていた。
「ぼく、悪くないから。気にしないようにしてたの」
陽架琉の瞳からは、ポロポロと涙が溢れていた。椿は、近くに保管をしていた陽架琉用のタオルを渡した。
「ぼくね。階段のところ、危ないねした」
陽架琉は気にしないようにしても、苦しくて堪らなかった。自分を制御出来ずに、苦手な階段の存在を認識出来なかった。
「錦城くんがね。危ないねって、助けてくれたの。すごいねって」
陽架琉の言葉は、繋がってるようで繋がってなかった。
椿は、少ない手がかりを頼りに陽架琉の言葉を理解した。
陽架琉は、クラスメイトが自分と竜輝あおいに対して嫌なことを言っているのは分かった。
そして、陽架琉は自分たちが悪くないから、気にしないようにした。
でも、「もしかしたら、本当は自分が悪い子で迷惑なのかな」って思うと、不安で怖くなった。
陽架琉は、苦手な階段を無意識に使おうとした。錦城くんが、「危ないよ」と止めて助けてくれてた。
おそらく、錦城くんが、陽架琉の気持ちを聞いてくれたのだろう。
そして、「すごいね」と褒めた。何かの流れで、先生が「出来ないことだよ」と言ったのだろう。
椿は頭をフル回転させて、陽架琉の言葉を理解したのだ。
「陽架琉くん、お話をしてくれてありがとう」
椿は、できる限り明るく伝えた。
「陽架琉くんは、悪い子じゃないよ。竜輝くんとあおいちゃんたちも、悪い子じゃないよ。頑張り屋で、良い子だよ」
陽架琉はタオルを触って泣きながら、椿の方をみた。
「ほんとう? 」
陽架琉は、今にも消えそうな声で言った。
「本当だよ」
「いやなの」
「何が、いやなの? 」
「ほんとうはね。じいちゃんたち、かなしいから。いやなの」
「本当は、じいちゃんたちが、このことで、悲しいくなるから。話すのが、嫌だったんだね」
椿は、陽架琉気持ちを代弁した。
「陽架琉くんは、頑張り屋で優しい子だね」
「えっ? 」
「陽架琉くんたちは、悪くないんだよ。迷惑じゃないんだよ」
陽架琉は、椿のほうを見てポカンとした。
「陽架琉くんが、じいちゃんのことを想ってくれるようにね。じいちゃんたちも、陽架琉くんのことを想ってんだよ」
陽架琉はただ涙を流して、椿を観ていた。陽架琉の中で、昨日の学校帰りの道で魂蔵たちが言ってくれたことを思い出した。
「今回のことは、クラスの子たちが悪いんだよ」
「錦城くん、ごめんねしてたの」
「その錦城くんは、陽架琉くんに何か悪いことをしたんだって。わかってるんだね」
「良い子」
「うん。錦城くんは、良い子だね」
陽架琉の瞳からは、涙が溢れてこぼれているのに。いつもよりも、呼吸は比較的に安定していた。
いつもは、泣きすぎてえづいたり呼吸がやりにくそうだった。
「陽架琉くんも、良い子だよ」
「うん〜 」
陽架琉は、ニコリとして言った。
「陽架琉くん。このことを、俺からじいちゃんに伝えても良いかな?」
「……うん」
陽架琉の表情は、一瞬にして曇った。
「陽架琉から言いにくいかなって。俺がお手伝いをしようかと思ったんだけど。嫌かな? 」
「ぼく、言いたいけどね。怖くて、いやなの」
「うん。そうだよね」
椿は、陽架琉の気持ちを受け止めた。
「……椿くん、良いよ」
「勇気を出してくれて、ありがとうね」
陽架琉は、ニコッとした。
「顔をタオルで、拭いてみようか」
「良いよ」
二人は、起き上がった。そして、陽架琉は涙で濡れた顔と鼻水を拭いた。
陽架琉は、少し様子を伺うように椿を観た。
「あのね、頭をヨシヨシして」
「うん。気の済むまでヨシヨシするよ。陽架琉くんは、頑張り屋で良い子だからね」
陽架琉は、髪がボサボサになるまで頭をヨシヨシしてもらってご満悦だ。
ちょうどその時に部屋の外で、何か物音がしたような気がした。椿は気がついたけど、陽架琉にはバレていなかった。
「陽架琉くん、宿題をする前にトイレに行く? 」
椿は、事前に魂蔵から陽架琉がよくトイレに行くタイミングを聞いていた。時計をみると、その時間帯だった。
「水分補給をしてからね」
「そうだね。たくさん、おしゃべりをして喉が渇いちゃったね」
「うん」
陽架琉は、部屋に常備していた水が入ってたペットボトルを取ってきて飲んだ。
「椿くんは? 」
「俺のは、うっかりして居間に置いてきたんだ。一緒に部屋を出ようか」
「うん」
二人は、廊下を出た。
「俺は、居間に行くから。陽架琉くんは、トイレに行っておいで」
「は〜い」
陽架琉はトイレに行って、椿は居間に行った。
「たけしくん」
椿は、さっきまでと違って雑にタケルケットをかぶっている人物の名前を呼んだ。
「寝たフリしなくて良いよ」
「バレました? 」
たけしは、ムクリと起き上がった。
「この家は、古いからね。床がきしんでいたよ」
「できる限り、気配を消して気をつけていたのですが」
「だいたいのことは、聞こえていたと思うんだけど」
「はい」
たけしは、うつむいていた。彼は、気配を消して廊下に出て、陽架琉の部屋から漏れ聞こえる声を盗み聞きをしていたからだ。
「陽架琉くんのことは、俺のほうから魂蔵さんに言うからね。陽架琉くんと約束したから」
「はい」
たけしは、下を向いた。
「だから、いじけないで」
「バレましたか」
「たけしくん、わかりやすいよ」
椿は、「フフッ」っと笑う。
「もう少しで、陽架琉くんがトイレから戻ると思うからさ。そうしたら俺が二階に行って、魂蔵さんに電話をするよ。もしも、電話に出なかったら、メールをしようかな」
「分かりました。じっちゃんが、学校に行く前に、このことは知ってたほうが良いですね」
「うん。俺が電話をしてる時に、たけしくんは陽架琉くんと一緒にいてもらえないかな? 」
「分かりました! 」
たけしは、さっきと違って元気そうな声で言った。
「しんどくない? 」
椿は、色々心配になりながら聞いた。
「陽架琉くんで、充電するので」
椿は、たけしの目が輝いているのがおかしくて笑った。
「任せるよ」
椿がそう言った時に、トイレの方から水を流す音が聞こえた。
そして、トイレのドアを開ける音が聞こえる。
「椿くん? 」
陽架琉の声が、廊下から聞こえた。
「陽架琉くん、居間においで〜 」
「は〜い! 」
椿が呼ぶと、陽架琉はバタバタと廊下を軽く走って居間に来た。
「あっ、たけしくんが起きてるね」
「はい。今しがた、起きました」
たけしは、さらっとウソを言う。
「陽架琉くん、たけしくんの相手をしてあげて。俺は、二階で電話してくるからね」
「は〜い! 」
陽架琉は、ニコッとした。
「たけしくん、陽架琉くんをお願いするよ」
「はーい」
椿はその返事を聞いてから、居間を出て二階に行った。
5
椿は、魂蔵に一か八かで電話をでかけた。呼び出し音になってから、思ったよりも早く通話にきり替わった。
「あっ、もしもし。魂蔵さん? 」
「おう、椿か。どうした? 」
「今って、時間は大丈夫? 」
「あぁ、まだ忙しくなる前だから。時間、取れるぞ」
魂蔵は時計を見てから、宮本工務店の社長の勘助に視線を送った。
勘助はそれに気が付いて手で、オッケーサインを送る。
「陽架琉に、何かあったか? 」
「う〜ん。手短めに伝えるよ」
椿は、どう言おうかと少しだけ悩んでから、決断した。
「おう」
椿は、魂蔵や工務店のことも気遣って、できる限り手短めに要点をまとめて『陽架琉の言葉』を伝えた。
「そういうことがあったんだな。昨日、担任から聞いたことも含めるとな。陽架琉、つらかったな」
魂蔵の声は、落胆していた。
「優しい陽架琉のことだ。そりゃあ、今回のことをワシらには、言いたくないよな。『嫌なの』になるわ」
魂蔵は、陽架琉が家族想いなのを知ってるから。陽架琉が、一人で向き合っていたのが分かってつらくなった。
「椿のおかげで、『陽架琉の言葉』が聞けたよ。ありがとうな」
「うん」
椿は、魂蔵の返事にホッとした。
「陽架琉に、伝言を頼んでも良いか? 」
「もちろん。メモ帳を用意するから待って」
椿は、クセで小さいメモ帳とペンを持ち歩いていた。それらをポケットから出して、書く準備をした。
「準備、出来たよ」
椿は、魂蔵からの伝言を一字一句間違えないように耳を傾けて、メモ帳に書いた。
「分かった。これをちゃんと、陽架琉くんに伝えるね。仕事中なのに、時間を取らせてごめん」
「おう。この時間は、ワシらにとっても必要だから。気にすんな」
「うん。無理せずに、仕事を頑張ってね」
「ありがとう」
二人は、少し話してから通話を終えた。
6
椿は、メモ帳やペンをポケットにしまってから階段を下りた。
そして、陽架琉とたけしが待つ居間に行った。
「二人とも、お待たせ」
「椿くんだ〜 」
陽架琉は、ニコッとして言った。
「まだ、二階でゆっくりしてていいですよ」
たけしは、少し不服そうで目の奥が笑っていなかった。
椿は、二人の言動の差にクスッと笑った。
「俺が二階でゆっくりしてたら、陽架琉くんの宿題が終わらないよ。そうしたら、困るのは陽架琉くんだよね」
「そうですね」
さすがのたけしも、今回は正論を言われて負けを認めた。
「陽架琉くん、一緒にお布団を片付けてから宿題しようか」
「うん。いいよ」
椿と陽架琉は、居間を出ていった。
たけしは、また居間に取り残されたのだった。
7
陽架琉は、椿と宿題をして約一時間経った頃のこと。
「陽架琉くん、宿題終わったね。頑張ったね」
「すごい? 」
「うん、すごいよ」
椿は、そう言って陽架琉の頭を撫でた。陽架琉は、ご満悦だった。
「椿くん、英語の絵本を読んで〜 」
陽架琉は、椿からもらった子供向けの英語の絵本を手に持って言った。
「うん。良いよ。居間で、たけしくんも一緒に読んでみる? 」
「うん〜! 」
二人は手をつないで、部屋を出て居間に戻った。
「たけしくん〜! 」
「は〜い! 」
たけしは、陽架琉の呼びかけに笑顔で応えた。彼の近くには、数枚の紙が散らばっていた。
「たけしくん、忙しかった? 」
椿は、それに気がついて聞いた。
「あ〜、大丈夫ですよ」
たけしの顔は、少し焦っていた。
「ちょっと、アイディアをまとめたり、編集からの難題をメモしたりしてただけです」
たけしは、そう言いながら紙を雑に一カ所にまとめた。
「どうしましたか? 」
たけしは、爽やかな表情で言った。
「イヤイヤ、「どうしましたか? 」じゃないでしょ。見るからに忙しそうだよ? 」
椿は、思わずツッコミを入れた。
「大丈夫です。もう、終わったことです」
たけしは、少し遠い目をしていた。
それを見て、椿はヤバいかもと思って、陽架琉に別の見通しを立てることにした。
「陽架琉くん、たけしくんが忙しそうだからね。また陽架琉くんこお部屋に戻って、絵本を読もうか? 」
「どうしよう? 」
陽架琉はそう言って、うつむいた。
「陽架琉くん、大丈夫ですよ。僕は疲れたので、陽架琉くんに癒やされたいと思っていた頃です」
椿は、たけしの言葉に小さくため息を吐いた。
「本当? 」
陽架琉は、少し疑うようにたけしを見た。
「はい、本当です」
二人は、「それだったら、絵本を読んでも良いでしょ」と椿の方を見た。
椿は、「ハァー 」とため息を吐いた。
「たけしくん、一緒に絵本を読もうか? 」
彼は、椿の誘いにノルことにした。
「陽架琉くんのためなら」
たけしは、笑顔で答えた。
「陽架琉くん。たけしくんに、絵本を渡してあげて」
「は〜い」
陽架琉はお気に入りの座椅子に、椿とたけしは彼を挟むように座布団を置いてからそこに座った。
絵本のタイトルは『変化するボール』だ。シェリーが文を書き、アメリアが絵を描いた。
文章は、英語と日本語の両方で描かれている。それによって、英語や日本語の勉強も出来ると、世界中で話題になっていた。
この絵本は、今では世界中に愛された一冊に入っている。登場人物は、全て動物たちになっている。
イジメについての加害者と被害者の心を、大人から子どもまでが理解がしやすいように書かれていて、道徳の授業にも使われている。
今の陽架琉にとっては、ある意味ピッタリなのかもしれない。
英語の文章は、椿がゆっくりと読んだ。その後に、日本語の文章は、たけしがいつものように読んで言った。
「この本は、とても良いですね」
「同じ作家としても、そう思うんだね」
「はい。勉強になります。この二人の作家は、別で翻訳を頼まずに自分たちの言葉で書いてるんですね」
たけしは、絵本の後書きに書かれた文章を読んでいった。
「そうなんだよ」
椿は、たけしを見て答えた。
「俺の子供たちも、この絵本が大好きでね。自分の言葉を、改めて大切にしたらいいなって想ったから。今回、買ってきたんだよ」
そして、今度は静かに涙を流している陽架琉に向けて言った。
椿は、いつも陽架琉の成長に合わせて考えたお土産という名のプレゼントを買い込んでいた。
陽架琉が心身ともに成長して中学生にもなったので、この絵本の内容が分かりやすくなると思った。
今の陽架琉と絵本に出てくる動物たちの状況は、少し違うところがある。
この二人の作家が自分たちの言葉で、加害者と被害者の心を表現してることに感銘を受けていた人たちが多かった。
その一人が、椿だった。そういうことがあるのは、今までの人生で、見聞きしたり経験をしたりして分かっている。
この絵本の二人の作家が、自分たちの言葉でイジメの現実を世間に突きつけるのは、とても酷で勇気がいることだ。
そして、椿は陽架琉にこの絵本を通して伝えたいことがあった。
「今の陽架琉くんは、この絵本に出てくるトゲトゲボールを投げられて、つらいよね。「嫌なの」ってなってるね」
椿の言葉に、陽架琉は小さく頷いた。
「トゲトゲじゃない丸いボールが、欲しいよね」
また、陽架琉は頷いた。
「「助けて」とか「このことを言っても、相手が傷つかないかな」って不安で怖いよね。俺も、たけしくんも怖いよ」
陽架琉は様子を伺うように、椿とたけしを観た。二人は、頷いた。
「でもね、その言葉を言ってくれたらね。陽架琉くんの家族は、丸いボールを陽架琉に渡すことが出来るんだよ」
陽架琉は、まだピンとは来てないようだ。
「陽架琉くん、自分の言葉を大切にしてね。誰かに伝えてくれると、ちゃんと陽架琉くんの言葉が届くんだ。難しかったかな? 」
陽架琉は泣きながらでも、指で『ちょっとだけ』と伝えた。
「ちょっと、難しかったの? 」
椿の確認の言葉に、陽架琉は頷いた。
「陽架琉くん、人ってね。一人じゃ生きられないんです」
たけしが、話しだした。陽架琉は、彼の方を向いて話しを聞くことにする。
「自分の心がね。苦しくなることもある。誰かに聞いてほしいけど、悲しませないかなって、不安と心配になるんですよ」
たけしは、陽架琉に伝わりやすいように、言葉を選びながら、ゆっくりとした口調と区切りながら言った。
「でも、その誰かはね。苦しくて、不安な人が、心配なんだよ」
たけしと椿は、陽架琉が『ヘルプ』を自分たちに出せないのを責めてるのでなかった。
誰だって『ヘルプ』を出すのは、勇気がいって怖いんだ。陽架琉には、それを知ってほしかった。
「どんな話でも良いんだよ。その人の心が、元気になるんだったらね。誰かは、一緒に同じ気持ちになって、助けれるからね」
陽架琉は、小さく頷いた。なんとなく、陽架琉の中で、二人の話が結びついたようだ。
「助けることは、大変な時もあるよ。でも、助けれて良かったって。嬉しくなるんだよ」
たけしは、優しい笑顔を陽架琉に向ける。
「誰かに、話を聞いてもらったらね。お礼を言うのは、忘れたらダメだよ。「話を聞いてくれてありがとう」って、言ってくれると、すごく嬉しいです」
たけしの言葉を聞いて、陽架琉は「あっ! 」という顔をして椿を見た。
「つ、椿くん、話をね。聞いてくれて、ありがとうね」
「うん。どういたしまして」
陽架琉は、椿をみてニコッとした。そして、大きなあくびをしてから唐突に寝た。
「「えっ? 」」
たけしと椿は、顔を見合わせて小さく笑う。
「昨日から続いていた緊張の糸が切れて、寝ちゃったね」
椿は、小声でそう言った。
「はい。たくさん泣いたあとの陽架琉くんは、疲れて寝てしまうことがありますから」
たけしがさっきまで使っていた雑魚寝布団のに、陽架琉を寝かせることにした。
椿は、陽架琉を起こさないように気を付けなが抱き上げて雑魚寝の上に移動をした。
その後に、たけしはタオルケットを陽架琉にかけであげた。
「あまり寝すぎないようにしないとですね」
「そうだね」
二人は、居間に置いてあるお菓子を食べて一息をつくことにした。
8
椿たちは、出来ないのは分かっていても、あることを想ってしまう。
それは、時を巡れるならあのひに戻りたい。あの家が燃えて、純たちが逃げ出すよりも前に行きたいって。
そして、今を一緒に生きていきたいって。
でも、あのひはもう変えれない過去になった。
当事者でない外野から、何年経っても好き勝手に言われてしまう。
家族を突然亡くして苦しんでいても、前を向いて歩いてくのを、邪魔をするかのように外野が襲ってくる。
本当なら、椿たちはとてつもなく悲しくてつらくなって、心に傷をつくらなくて良かったのだ。
言葉は、時に救いにもなれば凶器にもなっていく。
陽架琉の心の苦しみを、魂蔵たちは寄り添って生きていく。
時を巡れるなら、また亡くした家族に会いたいなと思いながら。
9
魂蔵は、宮本工務店で仕事をしてから中学校に行った。
支援級の担任が魂蔵を出迎えて、会議室に一緒に行った。
会議室には、既に校長と教頭や学年主任と生徒指導の先生たちが座っていた。
魂蔵は、内心大ごとになったと思って、げんなりした。
支援級の担任と魂蔵が、それぞれの席に座ったのを合図に話し合いが始まった。
「倉西さん。本日は、お越しくださりありがとうございます」
校長が席を立ってから言うと、教師たちも立ち上がり礼をした。
「皆さん、座ってください」
魂蔵の言葉に、教師たちは席に座った。
「こちらこそ、昨日から、孫の陽架琉の身に起こったことを早急に対応をしてくれたことには、感謝しております」
「そう言っていただくと、こちらも安心いたします」
校長は、一礼をした。
「早速なのですが。あいにく、普通級の担任が授業の関係もあって、この場は欠席をしております。申しわけありません」
校長は、頭を下げた。
「普通級の担任からは、昨日のことについてまとめている書類をもらってます。それを含めて、昨日の陽架琉くんについてのお話をさせていただきます」
魂蔵は、校長の言葉を一度受け取ってから「その前に、こちらから良いか」と前置きをした。
校長たちは、それを受け入れた。
魂蔵は、椿から聞いた「陽架琉の言葉」を元に、昨日のことを陽架琉目線で伝えた。
校長たちは「陽架琉の言葉」を聞いて、つらく悲しく思った。彼らは、あのひのことが、今でも陽架琉を苦しめることを分かっていた。
でも、実際にそれを目のあたりにしたことで、彼らは酷くショックを受けた。
学校側は、毎年行なっている黙祷の時に『受験生連続放火殺傷事件』とは明記をしていなくても、「生命が失われたことには変わらない」と集会で伝えていた。
黙祷については、学校側から遺族に頼んだことであると伝えている。
そして、遺族からは亡くなった生徒の情報は最小限にする約束をしているから、そのことをよく考えて言動をするようにと指導をしていた。
『この学校で、罪のない二人の生徒が事件に巻き込まれて亡くなりました。我々は、彼らの冥福のために、毎年黙祷をします。けっして、事件を風化させてはいけませんが。嘘偽りや面白半分で、彼らのことを語ってはいけないのは、自覚してください』
と、校長は集会で告げていた。それだけ、学校側は『竜輝とあおいの死』を向き合っていたのだ。
学校側が言っている彼らとは、竜輝とあおい、そして遺族になってしまった人たちのことである。
それなのに、今回の事態がよりにもよって陽架琉が在籍している普通級で起こってしまったのだ。
「陽架琉くんの言葉を教えていただき、ありがとうございます。こちらでの加害者生徒たちへの聞き取りと陽架琉くんの言葉で、より今回の事態の詳細が分かりました」
校長は、少しつらそうな表情をして言った。そして、教頭の方を見た。
「倉西さん、私の方から今回のことを説明させていただきます」
教頭は、真っすぐと魂蔵を見て言った。
「頼みます」
魂蔵は、彼らの覚悟を感じてそう言った。
教頭は、今回のことへの調査結果の資料を元に説明をした。
魂蔵には、その資料は席に事前に配布されていた。
教頭や他の教師からの補足が終わって、会議室はシーンとした。
「校長先生、ワシから一つ良いでしょうか」
黙って話を聞いていた魂蔵は、挙手をしてから言った。
「もちろんです」
校長は、何を言われても良いように覚悟をしながら了承した。
「錦城 創くんのことですが……」
魂蔵は、資料に書いていた「錦城 創」の文字を見た。おそらく、陽架琉が言っていた「錦城くん」だろうと思った。
「はい。彼がどうしましたか? 」
校長は、出来るだけ冷静に言った。
「錦城くんには、罰を与えて欲しくありません。全く与えないのは、今回関わってる同じグループから良い顔をされないと思う。もしかしたら、彼自身が罰を望むかもしれん。それなら、罰は軽いモノにして欲しい」
教頭の説明や資料には、今回関わった生徒には適切な処罰を考えているとあった。
その場にいて巻き込まれた生徒には、こういった場合はどうしたら良かったかの話し合いや指導をした。
この場にいる人たちや欠席している担任を含めて、主導権を握って面白おかしく言った男子やそれにノッた生徒たちは、厳しい処罰をしたほうが良いとなった。
この話し合いの後に、専門機関を交えて正式に処罰を決める予定になっていると資料や教頭からの説明にもあった。
「理由をお聞きしても、よろしいでしょうか? 」
校長は、そう言った。
「理由は、陽架琉が彼に悪い感情を抱いていないからだ」
魂蔵は、「陽架琉の言葉」を椿から聞いて、学校側からの説明を元に考えて思った。
「錦城くん」という人物は、あの場に居合わせて同じグループの子を止めようとした。
でも、止めることが出来ずに陽架琉にあのことを聞かれてしまった。
「陽架琉は、錦城くんに謝ってもらって許していた」
陽架琉自身は、何で彼が謝ってるのかも正直よく分かっていなかった。
でも、彼自身が悪いことだと言って、素直に自分から謝った。
だから、陽架琉は混乱してても、素直に許したのだ。
「陽架琉の気持ちが不安定な状態の時に、階段を下りようとしたのを止めてくれたんだ」
昨日のあの教室の中で、彼だけが支援級の担任以外で必死に走って、陽架琉が階段を下りる前に止めたのだ。
「彼は、命の恩人でもある。また、ワシが陽架琉を失うかもという地獄から、救ってくれた人だ」
教師たちは、相槌を打ちながら魂蔵の言葉を受け止めた。
「倉西さん、お気持ちをお伝えしてくださりありがとうございます。我々も、錦城くんに対しては、重い処罰は与えることを望んでません」
校長は、魂蔵を安心させるような口調と表情で言った。
「彼は、今回のことへ協力的で、聞き取りでも常に陽架琉くんのことを心配しています。そして、「同じグループの暴言や差別的発言をとめれなかった」と反省をしていました」
「そうか。彼は、良い子だな」
魂蔵は、陽架琉が感じてたように純粋にそう思って言った。
そして、今後の見通しを立ててから話し合いを終えることになった。
魂蔵は、支援級の担任にある人へ伝言を頼んだ。
「陽架琉が、錦城くんのことを受け入れてくれてるから。それぞれが、無理のない範囲で仲良くしてくれると嬉しい。陽架琉を助けてくれてありがとう」
後日にその言葉は、錦城創に無事届けられた。
彼は、今回のトラブルに協力したり陽架琉を助けたり直接謝罪をしたことで、処罰はなかったのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
【補足】
この話は、長いので番号を振っています。
7に登場する「変化するボール」の絵本について。
僕が以前書いて完結している小説に登場します。それは、長編で書いた『最後に誰が笑顔になるだろうか』です。
『最後に誰が笑顔になるだろうか』の作中に、「変化するボール」の絵本の内容が読めます。
気になる方は、そちらも合わせて読んでいただけると嬉しく思います。
今回の『時を巡れるから』が思ったよりも長くなったので、遊園地に出かけるのは次の話にします。
僕も、時を巡れるならと考えることがあります。時を巡って、大切な人にもっと何か出来たのではないかと。
もう、過去になったら変えれないと言うけれど。そうかもしれないけどれど、何とも言えない気持ちになる。




