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第31話 山ノ内 椿

すみれの弟の話。

 山ノ内(やまのうち) 椿(つばき)は、倉西すみれの弟であり陽架琉(ひかる)たちの叔父である。


 倉西 魂蔵(ごんぞう)のことを父親、ちよこのことは第二の母として、慕っている。


 椿は、海外で仕事をして家庭を持ち住んでいるため、頻繁には日本に帰れずにいた。


 椿は、すみれたちが亡くなる一年前に日本に帰った。


 それを最後にすみれと純と竜輝とあおいに会えなくなるとは、誰も思わなかった。


 陽架琉は、あまり椿のことを認識出来ていなかった。

 それもそのはずで、陽架琉が対面で椿に会ったのは二歳の時だけだ。

 それまでは、モニター越しには会っていた。


2


 魂蔵は、あの()のことを椿に知らせて、そして彼が日本に帰るのを止めさせた。


 理由は、あの()のことで現実を受け止めれないなかで、警察や報道の対応の苦しさを椿に体験をさせたくなかった。

 純粋に、椿には家族を失った悲しみを感じて欲しかったのも理由の一つだ。


 椿は、日本に帰るのを()()諦めるかわりに、魂蔵たちへの支援をすることにした。


 魂蔵たちへの資金や物資の提供を一ヶ月に一回はしていた。

 頻繁にすると、魂蔵たちの性格もあって返って迷惑になるからだ。



 本当は、魂蔵が倒れるまで必死に働き背負い込まなくても、倉西家は経済的に安定をしていた。


 でも、魂蔵は今後のために様々なことを考えて、椿からの資金にはあまり手をつけずに、自分に出来ることがないかと動きまわっていた。


3


 椿は、魂蔵とちよこが入院したのを数カ月経って知らされた。


 これは、退院後に魂蔵が椿と電話をしていた時のこと。


「魂蔵さん、何で入院したのを早く言ってくれなかったの」 


 椿は、拗ねた声で言った。


「椿は、海外で住んで家族もいる。それに、ワシも余裕がなかったんだ」


 魂蔵は、事実を伝えた。彼の頭には椿のことが何度もよぎった。

 でも、魂蔵には本当に何もかも余裕がなかったのだ。


 陽架琉は高熱を出して、ちよこが体調を崩して入院をして、自分も入院をした。


 それをせがれの宮本家とたけしの秋原家が、強引に助けてもらわないと苦難を乗り越えれなかった。


「俺が日本に住んでたらさ。こういう時に、力になれたよね」


「椿は、日本にいなくてもワシたちの力になってるよ。たくさん支援をしてくれてるじゃないか。ワシはそれがありがたい」


「でも、魂蔵さんは俺からのお金をほとんど使ってなかったでしょ」


 椿は、魂蔵の性格を分かっていた。


「そうだな。でも、入院費用には、使わせてもらったよ。ありがとう」


「そうじゃなくて、俺はね。魂蔵さんがしばらく働かずにゆっくりと心を癒せれるように、陽架琉くんたちのためにって、お金を送ったんだよ」


「分かってる」


「じゃあ、なんで? 」


「ワシが意地を張ったり、今後の為にって言い訳をしたりしてな。甘えれなかったんだ。あの()からたくさんの人が協力して助けてくれるだろ」


 椿は黙って耳を傾けた。


「それが何でか分からないが、申し訳なくなってな。ちよちゃんや陽架琉の為にって動いてるほうが、現実を見なくて済むと思った。申しわけない気持ちと見たくない現実がたくさんあるからな」


 魂蔵は、誰かを理由に動いてるほうが現実を見なくて良いと思った。

 それでも、現実は魂蔵を襲うし、助けてくれる人が一緒に何度も戦ってくれるのが、申しわけない気持ちになった。


「まだ、ワシは動けるから大丈夫って、見せたかったのかもな。それも()()だ」


「責めてごめん」


 椿は、見えないと分かってるけど。頭を下げながら言った。


「椿は、すみれさんたちに似て優しいな」


 魂蔵は、すみれの名を少し懐かしむように言った。


「魂蔵さんも、優しいよ」


「そうか? 」


「うん」


「椿は、海外でやりたい仕事と夢を叶えているから。日本にいればって、考えなくて良い」


「えっ? 」


海外(そっち)よりマシかもしれんが、日本は安全じゃないから」


 魂蔵の言葉に、椿はすぐには声が出せなかった。


「なかなか帰ってこいって、言えなくて悪いな。お墓やお仏壇にお参りをしたいって、椿が何度も言ってるのにな」


 魂蔵は、日本で何度も起こるあの()の悲しみの時に報道で少しだけ「倉西さん一家」や住んでいる地域の名などの言葉が年表が載る。

 それでもなにかの拍子で、観てしまうのを阻止をしたかった。

 海外で見るネットニュースよりも、日本の方が頻繁に流れる。


 当事者たちにとっては、残酷な光景がテレビやスマホなどに映し出される苦しみが話題が終わるまで続く。


 とても、(むご)いことなのだ。



「うん。でも、今は陽架琉くんが親やきょうだいがいなくなったことに寄り添っていけば良いんだ。それに、兄代わりの人が二人もいるから安心をしてるんだよ」


「そう言ってくれると、助かるよ。陽架琉やワシたちは、人に恵まれてる。それは、亡くなったすみれさんたちがつないでくれた絆や縁のおかげだよ」


「うん。そうだね」


 二人は、少しの間沈黙になった。


「魂蔵さんが定期的に、陽架琉くんやちよこさんの写真や動画を送ってくれるのを楽しみにしてるんだ」


 魂蔵は、陽架琉やちよこの写真や動画を撮って、椿に送っていた。

 それは、陽架琉の成長をすみれの弟である椿に知ってほしかったからだ。


 椿が大好きなすみれと純によく似ている陽架琉を見て欲しかった。


 二人が遺した子供の成長を一緒に感じてほしかったのと、日本に帰国することを止めている罪滅ぼしもあった。


「センスがいいからな」


「うん。そうだね。陽架琉くん、本当に姉ちゃんたちに似てるよ。それに、角度によって小さいときの竜輝くんとあおいちゃんにも似てる気がするよ」


「そうだろ。陽架琉は、すごい子だよ。みんなに似てるんだからな。でも、どこか面影を探してしまう。それが、つらくてな」


「うん。わかるよ」


 椿も、陽架琉の写真をみながら、もう会えない人たちを探してしまうから。


「ワシは、あの()から、死んでも囚われるだろうな。近くにいたのに、呑気に寝てたんだからな」


「それをいうんなら俺もだ。姉ちゃんとやりとりを最後にしたのはあの()の数カ月前だったから。魂蔵さんとは、少し違うかもだけど。お互いに相手を思って気遣ってね。便りがないのは良いことって。やりとりをしてなかったから」


 すみれと椿は、魂蔵から見ても仲の良いきょうだいだ。

 でも、社会人になってお互いの環境変化が起こった。日本と海外でそれぞれ仕事や結婚をして、忙しさと充実をしていた。


 お互いに相手のことを想って、背負わせないようにとあえて連絡をしなかった。

 連絡がないことは、なんとか元気でやってるだろう。


 だから、『あなたは、大丈夫だ』と想って連絡をしなかったのだ。


 椿は、それを酷く後悔をしていた。もっと連絡のやり取りをしたかった。


 気軽に会えない時を、連絡のやり取りという思い出を残したかったって思ってたはずなのに。


 それが、永遠に出来なくなってしまったのだ。すみれたちのスマホは、あの()に燃え尽きた。


「俺は、あの時、家族とテレビを見ながら。呑気に、ご飯を食べていた。姉ちゃんたちが……、生きるのに必死な時に、俺は……」


 椿の声は、涙に変わった。自分が幸せな時を過ごしてる時に、姉が家族ともに生死をさまよっていた。


 椿は、その残酷さを知ってしまってから、頭にまとわりついてる。

 

「ワシも椿たちも()()()()()()()を過ごしていたんだ。それは、純やすみれさんたちも同じだ。それを犯人が奪ったんだ」


 スマホの向こう側で、椿が泣く声が聞こえた。


「ワシが言いたいのは、()()()()()()と思う気持ちも否定しなくていい。()()()()()()()()()()()()()から。苦しくても生きてくれ」


4


 誰かが亡くなった。それに対して、他人(ひと)は、悲しむと同時に後悔をする。


 あの時、自分が当たり前の幸せを過ごしていたのに、人は生きるために必死にもがいていたのだろうか。


 誰かが、笑っている。その背景に見えないどこかで誰かがこの世から居なくなった。


 あの時、自分がこうすれば良かった。


 でも、それをしても()()()は変わったのだろうか。

 

 それを()()がして、結局は相手を苦しめる結果になったかもしれない。

 ならなかった未来を、果たして想像することができるのだろうか。

 

 『それは誰も、分からないことだ』と、言われることがある。

 「確かに、そう」、誰も分からない。寄り添ってくれてるのかも知れないけれど。

 でも、それで片付けられたとように思えてしまう。 

 この名前のつけれないモノを、簡単に箱に詰め込めれないんだ。


 見えないはずの人生の分岐点は、容赦なく人を苦しめて、時には人を幸せにする。


 どこに人生の分岐点があるのかは、誰も分からないことなのだ。ほぼ無意識に、速度は不明で進んでいく。



 ふとした瞬間に、後悔が頭から離れなくなる。蓋をしたい感情がぷかぷかと浮いてくる。


 何度沈めても、ぷかぷかと浮いてくるを繰り返して、その衝動を抑えるのに酷く疲れる。  


5


 魂蔵は、椿が後悔や残酷さが頭にまとわりついてる理由の一つが分かっていた。


 それは、すみれたちの遺体を見ていないからだ。椿は葬儀に参列も、死を聞かされて墓参りも出来ずにいた。

 

 人は、誰かが亡くなって葬儀でその人を見ることで現実と少しの区切りができる場合がある。


 その誰かが自分にとって、すごく大切で大好きなのに、亡くなった出来事が衝撃的すぎる時がある。


 『その誰かがいない』というのを、言葉や写真で知っても分かっても、衝撃と後悔がまとわりついて離れない。


 実際に見たからといっても、簡単に区切りができる訳がないのが、『死』である。


 みんな、普通に平然と過ごしてるのに自分だけはそう出来ないでいる。


 一生そうなのか、時とともに落ちついてくるのかは誰もが知りたいようで、知れないことだ。


6


 魂蔵は、たくさんの死を観てきたから、椿の心が自分のように痛く感じた。


「椿、一緒にその想いと生きていこう」


「……、良いの? 」


 椿は、沈黙をして震えた声で言った。


「もちろんだ」


 魂蔵は、できる限り力強く言った。


「魂蔵さん()苦しいのに? 」


「ワシも苦しい。椿も苦しい。比べる必要は、ない。傷を舐め合うとかでもない。ただ、お互いが孤独にならないためだ」


 電話の向こう側で、鼻をすする音がした。


「魂蔵さん、少し難しいけど。分かった。ありがとう」


「おう〜 」


 魂蔵は、明るくそう言った。


 椿と魂蔵は、何かあるたび連絡のやり取りをしていた。


7


 椿は、ちよこが亡くなったときには、すぐに駆けつけたかった。


 でも、それが出来なかったのだ。海外で住んでいる椿の隣国で、自然災害が起こったから。

 その自然災害が、椿が住んでいる国にも影響して、飛行機の手配が難しかった。



 椿が日本に来たのは、ちよこの四十九日が終わり、魂蔵の心身の調子が良かった頃だ。

 

 陽架琉は、連休の間にせがれの家に泊まっている時に椿だけが倉西家に来た。

 

 その時も、椿は魂蔵に説教をしていた。それは、魂蔵が荒れていた時のことだ。

 椿は、その時のことをせがれの父親とやりとりで知っていたからだ。


 魂蔵が「椿のところも大変だから落ち着くまで、来れなくて良いから。安心安全に過ごせ」と、またしても日本に帰国するのを止めた。


 そして、連絡のやり取りが途切れ途切れになったり様子がおかしかったりした。

 椿は、色々と落ち着かせた。そして、宮本工務店に電話をしたのだ。


「もしもし。こちらは、宮本工務店さんで間違いないですか? 」


「はい。そうです。宮本工務店の社長をしております。宮本勘助です」


「あっ、勘助さん。久しぶりです。俺、椿です」


「えっ、椿くん? 」


 椿と勘助は、魂蔵のつながりで子供の頃からの知り合いだ。


「うん。今って、時間大丈夫? 」


「大丈夫。どうした? 」


「最近、ちよこさんが亡くなってから魂蔵さんの様子がおかしいんだけど。何か知らない? 」


「あっ……」


 その後、勘助は椿から質問攻めされた。


「分かった。今は、まだ日本に帰れないんだよね。日本に帰ったら、俺が魂蔵さんを説教するから。陽架琉くんと魂蔵のサポートをお願いしても良い? 」


「分かった。任せろ」 


 椿と勘助の電話のやりとりした翌日に、陽架琉が家を抜け出して、宮本工務店に助けを求めて駆け込んだのだ。


8


「椿、ワシが悪かったから。その顔をやめろ」


「どの顔? 」


 魂蔵は、視線をそらす。 


「陽架琉くんが幸せなら、とりあえず良いんだけど。本当は、久しぶりに会いたかったんだけどな〜」


「連休で、宮本工務店に泊まってるからな。残念だった」


 椿は、悔しそうにしていた。なんとか日本に帰国出来るようになったから、急いできた。

 でも、会いたかった甥っ子の陽架琉が家にいなかった。


「よし、作戦変更だ」


「おい、急に何を言い出すんだ」

 

「陽架琉くんをコッソリと、明日の朝か昼かに見に行こう」


「見るだけか? 」


「急に「俺が、陽架琉くんのおじさんです」って、言ったらびっくりするでしょ。陽架琉くんにとっては、ほぼ初対面みたいなもんだから。コッソリと見て、魂蔵を通して少し離れたところから視界にはいるようにする。それで、慣れたころに会う。良し決めた」


「おい。早口で勝手に決めるな。不審者になるぞ」


 魂蔵の言葉に、椿はピタリと動きをとめた。


「陽架琉には、椿の写真を何度か見せてるから。陽架琉の母ちゃんの弟って言ったら、「ぼくといっしょ! 」って、喜んでた」 


「なにそれ、早く言ってよ」


「悪かったって」


9


 翌日、椿は陽架琉を少し離れた物陰から見ていた。場所は、宮本工務店の裏庭だ。


 陽架琉は、裏庭で遊んでいる。その近くで、せがれとたけしが見守っていた。


「おい、何でそんなところにいるんだ」


「なんか、恥ずかしくなった」


「ハァ〜 」


 魂蔵は、少し頭を抱えた。


「陽架琉〜! 」


 魂蔵は、大きな声で陽架琉を呼んだ。


「じいちゃん〜! 」


 陽架琉は、ニコニコしながら魂蔵の元に走った。


「陽架琉、よく寝れたか? 」


「うん〜! 」


「良かった」


 魂蔵は、陽架琉の頭を撫でる。


「陽架琉に、会わせたい人がいるんだ」


「ん? 」


 陽架琉は、首をかしげた。魂蔵は、片手で椿の腕をつかんでいた。


「陽架琉、この人が誰か分かるか? 」


 魂蔵は、陽架琉の前に椿を差し出した。


「あっ〜! 」


 陽架琉は、ピンっと来たようだ。


「ぼくといっしょの人〜 」


「正解だ!この人は、陽架琉のおじさん。名前は椿」


「つばち? 」


「惜しい。つ・ば・き」


「つばき! 」


 陽架琉は、時々発音が怪しいところがある。


「ちゃんと言えたな! 」


 魂蔵は、また陽架琉の頭をなでた。陽架琉は、嬉しそうに笑った。


「じいちゃん! 」


「どうした? 」


「つばきくん。泣いてるよ」


「えっ? 」


 魂蔵は、少し後ろにいる椿を見た。


「おい、どうした? 」


「ごめん」


 椿は、魂蔵の手を振り払ってしゃがみ込んだ。


「椿、しんどいのか? 」


「ちょっと、まっててね」


 陽架琉は二人にそう言うと、せがれたちのもとに走っていった。


「魂蔵さん。やっぱりあの子に会わないほうが良かったよ」


 椿は、小さな声でそう言った。


「なんで? 」


「だって、写真や動画で見たときよりも、あの子を通して見てしまうんだ」


 椿は、陽架琉を通して亡き姉たちを思った。


「実物の方が、やっぱり笑った顔がすごく似てて」


 椿は、すみれたちの死後の陽架琉の成長は写真や動画で知っていた。


 知ってるはずなのに、実際に陽架琉を見ると残酷なことが起こったんだと実感をした。


 『こんなにかわいくて、みんなに似ている陽架琉から亡き姉たちを奪われたんだ』と言う現実を分かってしまった。


 そして自分と違って魂蔵たちは、それを何年も何年も目の前で実感をしていたことにも気がついた。


 椿は、日本に帰国をせずに自分が今住んでいる国にいれば、現実から逃避ができるから。自分だけは、魂蔵に逃げ場を作ってもらっていたんだと思った。


 もしかしたら、魂蔵は自分を残酷なメディアだけじゃなくて、『残酷な現実』から少しでも遠ざけようとしてくれたのだろうか。


 魂蔵は自身を椿にとっての「帰国を止める憎む相手」になってまで、彼の心を守ろうとしたのだろうか。


 魂蔵が二人を会わせたのは、純粋に会ってほしかっただけだった。

 残酷な現実じゃなくて、叔父(おじ)甥っ子(おいっこ)としてだ。


10


 魂蔵は、黙って椿の想いを受け止めながら、背中を擦った。


「おまたせ〜 」


「おう、陽架琉。袋に何を入れてきたんだ? 」


 陽架琉は、ニコニコしながらビニール袋を両手で持って来ていた。


「えっとね。タオルとティッシュと飲み物とおかし〜! 」


 陽架琉は、中身を言いながら見せた。


「つばきくんが、しんどそうだからね。いるかなって思ってね」


 陽架琉はそう言いながら、少し後ろで見守ってたせがれとたけしを見た。


「陽架琉が、椿さんが大変だって通ってきて」


「それで、せっちゃんのお家にあるもので。必要そうなのを、陽架琉くんが自分で考えて袋に入れてました」


「遠慮なく使っても、大丈夫なやつばっかりだら。陽架琉のためにも、受け取ってください」


 椿は戸惑いを隠せずに、せがれとたけしをそして陽架琉を見た。


「おかしね。かあちゃんが、つばきくんが、すきって

、いってたの。じいちゃんが、いってたの」


 陽架琉は、自分の言いやすい言い方で言った。


「えっ? 」


 椿、もらったお菓子をよく見た。


「本当だ。俺が好きなチョコのおかし。覚えてたんだ」


 椿は、涙を流した。


「つばきくん、だいじょうぶ? 」


「うん。嬉しくてね」


 椿は、しばらく涙が止まらなかった。もらったタオルで顔を覆っていた。


11


 裏庭に集まっているのを知った勘助が、みんなを客間に連れてい行った。


「椿くん。久しぶり」


 椿が落ち着いた頃に、勘助がそう言った。


「うん。勘助さん。魂蔵さんのお世話をしてくれてありがとう」


「おい」


「なかなか大変だったけど。俺以外にも協力をしてくれる人が、たくさんいたからな。じっちゃんには世話になってるから」


「うん。みんなにお礼を言わないとね」


「そうだな」


 魂蔵は、頷いた。


12


 陽架琉は、たけしとせがれと一緒に昼寝をしていた。



「さっきは、みんなに恥ずかしいことを見せちゃったな」


「そんなことない」


「そうそう。じっちゃんも同じことを前に言ってた。二人とも、やっぱり似てるな」


 三人は、笑った。


「俺、やっぱり日本に帰らないほうが、良かったとも思うんだ」


「どうして? 」


 勘助が聞いた。


「だって、会いたい人がたくさんいなくなって。その人たちのことをね。陽架琉くんを通して、見てるのが分かって。やっぱり、つらくて」


 椿は、内心迷いながら想いを伝えた。自分よりも、それを実感して、日々を過ごしている人たちに言っていいのかと。



「そうだな。確かに陽架琉は、すみれさんや純たちによく似ていて。陽架琉を見てるはずなのに、違う人を想うんだ。それで良いんだ」


 魂蔵が、そう言った。


「俺だって、そう思うときがある。みんなだって、言わないだけでそうだと思う。でもよ、俺たちは生きてるから。いなくなってしまった人たち以上に、これからも陽架琉くんといるんだ」


 勘助が、そう言った。


「もう、あの後悔をしたくない。あの()から生き残ったから。ワシたちが、幼い陽架琉をその想いともに守らないと。命は簡単に残酷に消えてしまうからな」


「溜め込んだらダメだから。大人でも泣いていいから。じっちゃんみたいに、泣いちゃえ。荒れてもいいから」


「おい、勘助。急に巻き込まな」


 勘助は、笑った。


「これからは、椿が日本に帰りたい時に帰ればいいし、陽架琉を通して違うことを見てもいいから。また、会いに来てくれってことだ」


「ありがとう」


 椿がそう言った翌日に、海外に戻った。


13


 現在の陽架琉と椿は、テレビ電話をする仲になった。

 陽架琉が小学校の階段の転落事件を聞いて、気が気じゃなかった。

 免疫が弱ってる陽架琉に、海外に住む自分が会いに行って何かあったら怖くて帰国をしなかった。

 

 魂蔵から陽架琉の様子を聞いたり、出来る限りの支援をした。椿の心配は、尽きなかった。


 陽架琉が前に会ったよりも、少し幼く色々なところに傷がついてるのがつらかった。


 陽架琉が無理なく幸せで過ごせるように、椿は遠い地で願うばかりだ。

僕の親族が亡くなった時のことを、感じた気持ちを4と5のところに書きました。


僕にとって、とても大切な人です。登場人物たちのように、僕は後悔をして苦しくても生きてます。


魂蔵さんには、いつも欲しい言葉を言ってもらってます。


読んでくださりありがとうございます。

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