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乾坤一擲

 

 私は部屋にてベッドに寝転がりながら考える。それは王様に捕まった後の事。先程の話し合いでコルネリア様と約束したのだ。もし、私が捕まれば出来る限り時間を稼ぐと……。フェルベルマイヤー様を助け出せたとしても、そこからも時間が必要なのだ。だから出来る限りの時間稼ぎが必要だ。

 恐らく私は捕まって久遠の拷問コースが待っている。私が此処でどれだけ持つかに掛かってる気がする。私は確実に【お願い】の事を吐くだろう。師匠が耐えられなかった拷問に耐えられる筈がない。1週間くらい欲しいが……1日持つのかなぁ?

 私は黒い宝玉を持っているから殺されはしないだろう。


「いや……」


 安息(レクイエム)って可能性も有るのか。それの可能性の方が高いかな。

 私の【闇を操る】殊技の悪用もあり得る。辛いなぁ。なので、どうにか出来ないかを考える。

 私の一族には血中に入った異物の効果を遅延させられる特性がある。これを上手く使えば注入する薬剤である安息(レクイエム)も退けられるかも。


「いや、そこからどうやって起きるんだよ」


 アレはあくまで遅らせるだけだ。それ以上の事は出来ない。打つ手無しだ。こうなれば仕方ない。打たれるのは出来れば避けたいが、その時は諦める。だって仕方ないし。人生、生きてれば仕方ない無い事に何度だって突き当たるんだ。それがコレだっただけ。大人しく眠るに限る。

 だが出来るだけ安息(レクイエム)は避ける方向でいこう。


「私にやれるのかなぁ」


 激しく不安だな


 ◆


 兄様がフラグを建ててくれた日から数日経ち、


「とうとう来てしまった……」


 決闘(デュエル)を行う日が来てしまった。


 キャンピンを海の中に隠して、ジィジはキャンピンに置いて、私とアスターとコルネリア様と兄様とフェルベルマイヤー様の部下達数名とで敵地に乗り込んだ。何故、非戦闘員のアスターが来たかというと、なんとアスターは城の抜け道を知っているかららしい。もし追われても、抜け道を通って逃げる計画を建てているのだ。


 今日の私の出で立ちは勝負服である。そう、いつものジャージだ。ドヤァ!


 闘技場の様な場所に着く。観客席には師匠やハイド、ギースが並べられていた。

 観客席には花弦の者や六花、そして王様も居た。ついでに次期当主様とかも居た。強者しか並んで居ない所に何故かゴミが1人混じっている。


「あれ? 母様じゃないか?」

「マジで⁉︎」


 兄様が次期当主様の後ろに母が居る事に気が付いた。その更に奥には親族一同居た。何故だ⁉︎


「なんで家族まで居るんだ」

「さぁ?」


 王様の意図が分からない。何故、親族を呼んだ?

 私の疑問は解消される事なく、話は先に進む。


「コルネリア、もう一度賭けの内容を確認しようか」

「えぇ、僕が勝てば【フェルベルマイヤーお兄様の引き渡し】を要求します」


 勝たずとも奪って行く気満々だけどな! しかし……こんなに人が大勢居ては魔法をバンバン撃てないなぁ。流れ弾の覚悟は皆んなあるのか? 私の撃つ魔法は地面抉ったり、その辺り吹き飛ばしたりするけど……。


「僕は【黒の宝玉の引き渡し】だね。これで良いかい?」

「えぇ、大丈夫です」


 王様は私を見て笑う。その笑顔は何の笑みなのだろうか? 黒い宝玉と、それを御せる者……。王様からしたらカモがネギを背負って来た感じで笑っているのかな? なんだか腹が立って来たな。


 下に降りて来る様に言われたので、嫌々だが下に降りて相手の前に出る。やはりと言うべきか、相手は六花最強(ベロニカ)だ。間近で見ると貫禄半端ないな!


「王様! 質問宜しいですか?」

「良いよ」

「魔法をバンバン撃つつもりですが、流れ弾的なものの心配は良いんですか?」


 私が質問すると王様は腹を抱えて笑って来た。え? 何か私、可笑しな事言ったか? 王様のツボが分からない。

 他の連中も笑い出した。やだぁ、私笑い取っちゃった! 笑いのセンスあるかもしれない。


「ベロニカ相手に魔法で挑むのかい?」

「あ、そういう笑いだったのね」


 魔法が効かない相手に魔法撃つ馬鹿は居ないっていう笑いだったのか。納得だ。しかし、アスターが言っていた事が本当で有れば私の魔法は通じる。王様は私が魔法が得意な事は知って居る筈だけど……上級の魔法が使えないと思ってらっしゃる? いや、違うな。魔力の都合上、上級魔法をそんなに撃てないと思っているんだ。上級魔法は魔力をかなり消費するから、あまり使用しすぎると途中で魔力が無くなり殊技などが使えなくなる可能性がある。魔力が有っても進んで使う者は少ない。

 そう言えば、私の魔力がどれくらいなのか師匠達には言って居た。それを師匠達から聞き出して居るんだ。

 だが残念だったな! 師匠から聞き出した魔力量は、私が邪龍から力を奪う前までのモノだ。アレ以来、私の魔力は大幅に増えている。

 それに私には奥の手が有る。勝てるかどうかは分からないが善戦は出来るだろう。


「大丈夫だよ。ベロニカの攻撃の心配も有るし観客席との間には障壁が張ってあって、流れ弾はいかない様になってる」

「そうですか」


 なら安全だ。しかし、私の光線 (龍が吐いてたヤツ)は威力が有り過ぎて防御魔法(ウォープロ)も紙同然なんだけど……本当に大丈夫かな。花弦や六花は良いとして母や親族は大丈夫なのか?

 やだぁ、邪龍強すぎ!


「余裕だな」

「余裕に見えるんですね」


 ベロニカは私を見据えて剣を構えて来た。私は剣を構える事なく棒立ちをしている。その姿を不振に思ったのかベロニカは眉を寄せた。


「貴方相手に剣で挑んでも勝ち目なさそうで」


 ハナっから正々堂々は捨てた私。初めっからチキンプレイする気だ。

 私は師匠を見上げてみる。タブレット越しには会ったが生で顔を合わせるのは久しぶりだ。なんだか涙が込み上げて来そうだよ。


「師か……あやつも成長したものだな」

「あ、そういえばベロニカが師匠の師匠でしたっけ」


 そんな事を師匠が言っていたな。師匠と久遠はベロニカでハイドはギースだとか。ではあの双子は誰が師なのか? まぁ、前の六花の誰かだと思うけど。


「さて、そろそろ始めようか」


 王様が手を叩き、早く始める様に促す。降りて来たのに早く始めない私に痺れを切らしたのかもしれない。

 チィッ! 時間稼ぎしてたのに。

 元々、時間稼ぎが目的なので勝つつもりはない。フェルベルマイヤー様の部下がフェルベルマイヤー様を救出している間、時間を稼げばいい。救出出来るかは私の頑張り次第だ。


「では、始め!」


 王様の声と共に銅鑼が鳴る。


 開始と同時にベロニカの剣が飛んで来たので、回転しながら避け後ろに後退。そして私は殊技発動。闇を生み出す能力で闇を作り、それを闇を操る能力で6本の剣を作る。それを操りベロニカの真似をした。


「……⁉︎」


 再度飛んで来た剣をそれで弾くとベロニカは驚いた表情を見せた。しかしこれでは終わらない。私は口を大きく開けて光線を吐く準備をする。ぶちかましてやるのだ!

 私は光線を吐く。極太レーザーがベロニカ目掛けて飛んだ!


「……⁉︎」


 身の危険を感じたのかベロニカが避けた! ビンゴだ。この光線でもベロニカは倒せる!

 避けた光線は観客席に張ってある障壁に穴を開け、観客席にまで到達。そこに人が居なかったので惨事は免れたが、人が居れば大惨事になっていただろう。


「ドヤァ!」


 私は王様にドヤ顔を披露してやる。貴方が笑った魔法系統でベロニカは身を引き、守りに入りました!

 私はちょっと誇らしい。まぁ、凄いのは邪龍なんだけどもね。でも、それを倒した私の方が凄いという事で!


 高みの見物だった王様も驚いて破れた障壁辺りを呆然と見ている。初めて王様の表情を崩せた! 優越感が起きる。


「中々やるな」

「まだまだですよ」


 ベロニカの勝ちは揺るがないかもしれないが、善戦はさせてもらうから!!

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