帰還
それから暫く経った頃、思いもよらない人物から電話が来た。それはコルネリア様だった。まさかコルネリア様も捕まって端末取られたのか⁉︎
私は急いで出てみる
『佳月か?』
ちゃんとコルネリア様の声だった。良かった……ご無事そうで。
「はい、佳月です」
『無事に逃げているらしいな。だが、すまない事情が変わった。戻って来てくれないか?』
「え?」
なんとコルネリア様のお兄様である第1王子【フェルベルマイヤー=ベンジャミン=ショーバーレヒナー】様が捕まったらしい。あの、ハイドとギースの主人だ。
本来ならば助けないが、あの人は白の方の【お願い】を知っているらしい。
【お願い】は前に私が神聖なる織天使を撃つ際に空にお願いしたアレと同じもの。白の花にも黒の花にも【お願い】が存在し、それが分からないと邪神等呼べないらしい。
その白の花の【お願い】を知っているのは【フェルベルマイヤー】様だけなので、捕まった彼を助けなければならなくなった。
『お兄様が【お願い】を知っている事をデーディリヒお兄様は知らない。でも、直ぐにバレるかもしれない。そうなれば、あの人の事だ、口封じに殺すかもしれない』
マジか……。これにより、第1王子の奪還作戦が始まったらしい。本来、逃げてる私を呼ぶのはマズイのだが、事情が事情なので呼ばねばならなくなった様だ。
『黒を揃える訳にはいかないから、本当は連れて行く訳にはいかないんだが……。最近どういう手を使ったのか、宝玉無しで黒い魔物を召喚出来ているらしい』
前に見た怪物の事だ。あの怪物は無尽蔵に湧いているらしく倒しても倒してもキリがないらしい。このままでは黒が揃わなくても、先に世界が堕ちる。なので急遽、白の宝具持ち達を集めた会議を開催した。こうなれば白を召喚して黒を止めようと思ったらしいが、肝心の【お願い】を誰も知らない。
あ、因みに私の持っていた白い宝具は全てコルネリア様に預けて来たよ。私が今、持ってるのは黒Onlyだ。
『知っているのはお兄様だけ。そのお兄様を取り返さなければ世界は遠からず堕ちる』
思ったより世界は深刻な状態らしい……
◆
という事で急遽、逃げるのは辞めて清々堂々とバトルする事になった。なので私は急いでコルネリア様の居る場所に帰還。
久しぶりに会ったコルネリア様に迎えられ、アーシャ様達への挨拶もそこそこにキャンピンに乗り出発した。
「久しぶりだねジィジ!」
「そうじゃな。お前さんが居らんと車内が静かで良かったのにのぉ」
「酷いな⁉︎」
ジィジやアスター、兄様とも久しぶりに会い、再会を喜んだが、それも直ぐに終わり話会いになった。
「僕はお兄様に決闘を挑もうと思う」
「マジですか⁉︎」
その決闘に出るのは勿論、私。
「いや、無理でしょう⁉︎ 相手は六花が出てくるに決まってます!」
コルネリア様も承知だが、それしか道はないらしい。一か八かの賭け。それは全て私に掛かっている。
「お兄様は恐らくベロニカを出して来る」
はい、無理ゲー。この前の戦いで差がどれだけあるか痛感させられたのだ。あんな化け物に勝てる筈ない!
「お前の言い分も分かる。だから保険は掛けておいた」
なんでも私が戦っている間に間者をしているフェルベルマイヤー様の部下がフェルベルマイヤー様を救いに行くらしい。王の視線が私に逸れている間にフェルベルマイヤーを救出する予定なんだとか。それは、私はどうなるのか? 負けたら想像に難しくない事態が起こる。
「勝っても負けても王はお前を逃がさないだろう。行けばお前は危ない。分かってるんだ、それは!」
コルネリア様の手が震えている。彼女は相当な覚悟を持ってこの話をしているのだ。王族の責務を果たそうと。私はそんなコルネリア様に付くと決めたのだから、コルネリア様の決定には従わねば。
「分かりました。でも、ただでは負けません」
私だって新しい力とか奥の手とかあるんだ! 今までの私と同じと思うなよ!
「ありがとう佳月。そして、すまない」
「いいえ」
そうして私達は故郷アドリウスに向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「いや〜、私、今度こそ死ぬかな?」
私は今、アスターの部屋に来て駄弁っている。コルネリア様はディーデリヒ様とお話し中だ。内容は先程話した決闘。
「弱気だな」
「弱気にもなるよ。相手は魔法も殊技も効かない猛者だよ?」
私の新しい殊技も効かないとみていい。やはり無理ゲーか?
「リンドヴァルは言ってなかったんだな」
「うん?」
「ベロニカの殊技には弱点がある」
「マジで⁉︎」
ベロニカの魔法系等無効化には弱点があるらしい。それは上級以上の魔法を使われたら無効化出来ないっというもの。彼の殊技で無効化できるのは、殊技と中級魔法まで。なので私が前に使った神聖なる織天使なんかは絶対に防げないらしい。なので私にも勝算はある。因みにあの魔法は最上級魔法だったりする
「リンドヴァルは自身が魔法を苦手としているから、絶対に勝てなかったけど、お前はもしかすると勝てるかもしれないぞ?」
要は相性の問題という事か。
ベロニカ自身、魔法は得意らしいが、私には敵わない筈。私は邪龍の分もプラスされ中々の多さになっており、上級魔法とかバンバン撃てる様になっている。
「前に使ってた終わる大地でも効くと思う」
これはチキンプレイ確定かな? 近づかず、騒がず、遠くから魔法を撃って戦おうか? 浮いてる剣が飛んで来ない様に出来るだけ距離を置こう。そうしよう!
ちょっと明るい未来が見えて来た。頑張れ私!
「まぁ、勝った所で無事に帰って来れるとは思わないけど」
「そこだよねー」
私を血眼で追っている王様が私を逃すとは思えない。やだぁ、私モテモテじゃない!
「一応、薬飲んどけよ」
アスターに薬を貰った。これ何の薬?
「大事な薬だ。もしもの事が有っても最悪の事態は避けられる」
「本当に何の薬?」
「……久遠はお前を気に入ってるんだぞ? 捕まった後、どうなるかなんて分かりきってる。それに拷問には種類がある。女の堕とし方だって心得ているさ」
「……何の薬? それとやっぱり、行くのやめていいかな?」
マジで何の薬? そして激しく行きたくなくなった。久遠マジで怖い。それに私は散々王様とか他の面々をおちょくって来たからな。その報復も怖いよね
アスターと話を終えて部屋を出ると廊下で兄様に会った。もしかしたら、もう2度と会えないかもなので、お話しする事にした。
「帰って来れるのか?」
「無理じゃない?」
兄の部屋にて向かい合ってお話し中である。兄は若干、悲しそうな顔をしている。こんな顔初めて見たよ。兄様もこんな顔出来たんだね
「俺さ……」
「うん?」
「お前が旅に出たと知った時、またバカな事してるなぁって思ってた」
「……」
なんか突然、喧嘩売られたんだけど! これ殴っても許されると思う?
「あの家は正しくて、お前が間違てる。ずっと思ってた。お前と旅する様になって、俺は随分狭い世界を見てた事を知らされた」
なんか語り出したんだけど、この兄。別に兄様の語りとか必要ないけど、私は優しいから聞いてあげよう。
「旅をしてお前が尋常じゃないくらい強い事が分かった。ギースに扱かれて、リンドヴァル様にお前と比較されて……お前が俺の届かない所に居た事を知った」
「知るの遅くない?」
師匠に私と比較されたか……確か前に師匠が『お前と全然違う。覚えも悪いし、動きも悪い。根気よく教えているギースの忍耐力に感服する』とか言ってた気がする。その時、私は『兄様ザマァ!』とか思っていた。相変わらず、師匠はキツイ事を言うよね。純菜の時然り
「……兎に角、俺はお前を認めるよ! 兄として誇りに思う」
「前、『出来の悪い妹を持って俺は不幸だよ!』とか言ってませんでした?」
「……」
今更だなぁ。でも、まぁ、私の最終目標は親戚達に認めてもらう事だったから、それの第一歩だと思えば気が楽になるかな?
「帰って来いよ佳月。無事に帰って来れたら、俺が家の連中に言ってやるから」
「……兄様、それフラグって言うですよ?」
フラグ建てられた。巫山戯んな!




