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逃走中2

 

『お初にお目にかかるね、僕はディーデリヒ=オドントグロッサム=ショーバーレヒナー。君の故郷の王だよ』

「存じております」


 これはマズイだろう。まさかの事態だ。王様まで出てくるとは。流石に、おちょくり過ぎたのか?


「王様直々に出て来られるとは……」

『……取引しないかい? 君にとって良い話だと思うよ』


 王様は取引を持ち掛けて来た。これは予想の範囲内。恐らく、私に見合った階級をくれる代わりに自分に協力しろっとかの内容だろう


『君の望みを叶えてあげる。君の望みは別にコルネリアでなくても叶えられるんだ。態々、不利な方に付く必要はないだろう?』


 確かに、私の望みはコルネリア様でなくても叶えてくれる。しかし、私は王様側に付く気はない。


「お断りします。貴方の野望の先に私の大事な者達は居ない。そんな事、私は望まない」


 あれ? 今、私カッコイイ事言わなかった?


『そうか……。では残念だね。カミル、ラミル』


 物陰から双子が登場した。やはり居ましたね。


『少し痛い目みる事になるよ?』

「脅しですか?」

『どうだろうね』


 カミルとラミルは剣を抜いて近づいてくる。カミルは既に殊技を発動しているので私は影の中に有る刀を取り出せない。手元に有るのは服に忍ばせているナイフと銃だけだ。武器がこれだけでは六花2人相手に心許ない。

 それに、多分だが六花以外も近くに居る。そんな気がする。さて、どうするか……相手の意表を付いて突破できれば良いが、何か方法はあるのだろうか? 取り敢えず、久遠の時みたいに話てみるか? 意外な情報が手に入るかもしれない。


『大人しくしてくれると助かるんだけどね』

「ちょっと聞きたい事が有るんですが良いですか?」

『うん? まぁ、良いけど』


 カミルとラミルを警戒しつつ、王様に問いかける。


「私、写メ付きのメール送ってるじゃないですか。あれって、誰が返信してます?」


 凄い気になっていたので聞いてみた。すると王様は一瞬『え?』みたいな顔をしたが、直ぐに笑顔になる。王様の後ろに映る師匠が顔を顰めて居た。


『あれは私だよ』

「マジですか⁉︎」


 メル友、まさかの王様だった!! 私、王様とメル友だったの⁉︎


『毎回、面白いから楽しみにしてたんだ。リンドヴァルにも見せてあげてたよ』

「師匠! 見たんですね! 私、実践で奇襲防ぎましたよー!!」


 画面に手を降り、頑張ったよアピールをすると、師匠が天を仰ぎ、ハイドが視線を左下にやった。ギースは笑っていた。え?


『リンドヴァル、育て方を間違えたんじゃないか?』

『……この辺りは管轄外だ』


 画面の向こうで捕まった組が何か話していたわ。私が話している間、ちゃんと待ってくれて居るカミルとラミル。親切だな。よし! このまま会話を引き伸ばして、隙を探ろう!


「あ! 師匠! 言いたい事があったんですよ! 何が『お前1人なら、楽に逃亡できる』ですか! 相手に位置情報の分かる面倒な殊技を持ってる人居るじゃないですか! 全然、楽じゃないんですけど!」


 師匠のモノマネを交えて文句をピーピー言う私に画面の向こうの師匠はなんとも言えない顔をしている。その表情見るの久しぶりだ! ちょっと安心した。


『ふふふ、リンドヴァルのモノマネ上手いね』


 王様は笑っていた。上手いってさ!


『所で……位置情報の殊技はバレてたんだね』


 王様は笑うのを辞めて、目を細めて聞いて来たので知ってる情報を教えてあげた。


「前に故郷に居た時、酒場で酔っ払って自分の殊技暴露してましたよ。コールカーさんですよね?」

「おい、コールカー!」

「すみません……」


 カミルに怒鳴られてコールカーさんが草むらから出て来た。物凄い情けない顔をしている。怒鳴ったカミルは鬼の形相でコールカーさんに詰め寄っていた。

 やはり、六花以外の人も居たのか。多分、この人だけじゃないだろう。あと数名居るな。

 カミルは私から少し離れてコールカーさんの所に行って居る。ラミルは若干、哀れんだ目で彼を見ている。お? 今、行けるんじゃないの? 私はゆっくり後退していく。それに気が付いたラミルが、私の方に来ようとしたので、服の袖に隠し持っていたナイフを取り出し、ラミルに投擲!! その後、森の中へ走った。ラミルが私を追って森に入って来る。続けて、気が付いたらしいカミルも続く。他の数名も追って来ている感じがする。

 森でカミルを巻いて、カミルの殊技殺しを解いたら殊技を影で移動するつもりだ。それをカミルやラミルも分かっているのだろう。必死で追って来る。


「うそっ⁉︎」


 走っているとまさかの行き止まりに直面した。崖で下は奈落の底。落ちたら死あるのみだろう。まさかの事態だ。これは日頃の行いが悪いからか? 可笑しいな、私イイ子なのに。


「万事休す!」


 振り返ればラミルとカミルが居る。逃げ道なし! これ終わったわ……


「観念しろ」

「それは嫌」


 私が構えると向こうも構えて来た。腹括るか……


 2人の息の合った猛攻に後手に回る私。カミルの剣をナイフで弾きつつ銃でラミルを牽制しするが、カミルに阻まれて上手くいかない。逆にカミルを牽制しても同じ。やはり2vs1は卑怯だ! どちらか1人でこいよ!

 これ以上やっても私に勝ち目はない。なので直ちに撤退を考える。しかし……どうすれば。


「あっ!」


 そうだ、我が逃亡の先輩である友人からレクチャーされてた。逃亡中は『女』を使かえば楽に逃げられるとか言ってた。教えてもらった手の1つを有り難く使わせてもらおう。

 私は自身の服を破く。双子は何事かと動きを止めた。それを気にせず私は続ける。ちょっと際どい所まで破いて私は街に向けて走り出す。その後を追って来るカミルとラミル。しかし、私の足は早いのだ! 追いつけるものなら追いついてみろ!


「アレー⁉︎」


 ラミルは遥かに後方に居るがカミルは近くに居た。コイツ、私と同じくらい足が速い! 差が広がらない! まさかの事態だ。どうでも良いがさっきから『まさかの事態』多くない?



 道路付近まで走って戻ると、この国の兵を数名発見! 運は私に味方した! 私はボロボロの格好で兵の1人に縋り付いた。


「助けて! 乱暴されたの!」

「なっ⁉︎」


 兵は私を見た後、私に追いついたカミルを見た。兵を確認したカミルは流石にマズイと踏んだのか森の奥に逃げた。


「待ちなさい!」


 兵の数人はカミルを追いかけて森に入って行った。私の側に来た女性の兵士さんが痛まし気な目で見て来る。


「もう大丈夫だからね!」


 その兵士さんは私を安心させようと一生懸命、声をかけてくれた。なんだか、申し訳なくなった。

 空にドローンの様な物が飛んでいる。これは恐らく、王様達に生中継している機材だろう。私はそのドローンに舌を出して、女性兵士さんに連れられ街に入った。


 街に入ると、隙を付いて女性兵士さんから離れて、復活した殊技を使い影の中から上着を取り出し着る。そして直ぐに汽車に乗り、街から出た。


「上手く行って良かったなぁー」


 カミルが逃げたのはこの国で揉め事を起こさない為だ。王の命令で動いている手前、問題が起きれば国間での揉め事になり兼ねない。他所の国で下手には動けないのだ。そこを突いたまで。

 これは友人が教えてくれた手だ。本当に感謝しかない。


希望(のぞみ)にお礼言わないとな」


 希望(のぞみ)は逃亡の先輩である友人の名前だ。その名の通り私の希望になってくれた。


「さて……」


 次はどうしようかな? ここで撒いても、向こうに位置情報を探る殊技の持ち主が居る限り、直ぐに追いつかれる。ならば……師匠の様に仕留めてしまうか? いや、それは最終手段だ。他の手を考えるかなぁ。

 私は移りゆく景色を眺めながら考える。

 位置情報を探る殊技か……位置情報を探れるのはどれくらいなのだろうか? まさか世界全てから探れる訳はないだろう。殊技は個人の力量と魔力の量により、強さの度合いが違う。師匠は強く魔力が多いが故に最大で半径500メートルに及ぶ殊技殺しが使える。私は魔力が多いので長距離の影移動が可能だ。ギースも魔力が多いので超回復と言う魔力をかなり使う殊技も使えるのだ。この様に強く魔力量が多い者の殊技は強い。

 あの位置情報を探れるオッサンがどこまで強く魔力量もどの程度か分からないが、流石に世界の裏側までは探れないだろう。いや、位置情報の種類にもよるか……ソナーの様な広範囲を探る系なら、ソナーに引っ掛からない場所まで逃げれば問題ないが、ナビの様な目的地を検索したら目的地が直ぐに出る感じの、人物を検索したら直ぐに居場所が分かる様な能力なら、直ぐにバレるなぁ。


 ほんと、どうしようかなぁ……

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