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悲しい時は身一つ

 

 エスタスに着いて直ぐ、私はコルネリア様にキャンピンから降りる様に言われた。どういう事⁉︎


「佳月……ここからは別行動だ」

「ふぁ⁉︎」


 コルネリア様が胸の内を語ってくれた。


 以前、師匠にもし私が宝玉を持っている事がバレたら単独で逃がした方が良いと言われていたらしい。師匠は私1人ならば苦労もなく逃げ延びられるだろう。師匠やハイドという敵に位置を教える様な奴が近くに居るのは、足枷にしかならない。私は1人にすべきだと言われたそうだ。


「お前に負担を強いる事は分かっている」


 コルネリア様は今、戦力を手放すのがどういう事か分かっている。だから1番安全なエスタスに来たのだ。ここならば私への恩がある為、信用出来る。ここならば安全だ。しかし私が居ては黒の宝玉が欲しいディーデリヒ王は戦争を仕掛けてくるかもしれない。

 そこまで迷惑は掛けられない。ならば、兼ねてより助言されていた通り、私を他所に逃がす事にしたのだ。


「すまない、佳月」

「……いいえ、大丈夫です」


 確かにここならば安全だ。私への恩があるこの国の人々が私の仲間を売る筈はない。良かった……邪龍倒しておいて

 それにこれからディーデリヒ王は私を狙ってくるだろう。私と共に居ればコルネリア様に危害が行くかもしれない。ここで離れるのが最善だ


「暫く留守にしますね」

「あぁ……」


 私は近くに居たアーシャ様にコルネリア様をお願いしますと言っておくと、アーシャ様は「お任せ下さい。どうかご武運を」っと言ってお守りをくれた。本当に良いお姫様だなぁ……


「では!」


 仲間に何も言わず私はこの国を出た。思ったより早く兄様の側を離れてしまったなぁ……。


 ◆



「ボッチつらっ……」


 勢いで出たは良いが何処に向かったら良いのか。取り敢えず、飛行船に乗って遠くの国に行った。しかし飛行船は失敗したと思う。だって飛行船は身分証が必要だからだ。調べれば何処に行ったかバレてしまう。なので、そこからは汽車で移動する事に。汽車では身分証の掲示が必要ないので、安心して旅が出来る。


「はぁ……」

「お嬢さん、旅かい?」


 これからどうしようか考えあぐねていると、胡散臭いオッサンに声を掛けられた。ジャージ着た女にナンパなんて普通しない。これは怪しさ満点だ。そのオッサンは図々しくも私の座っている席の横に座って来た。何用だ!


「いえ、旅じゃないです」


 逃亡です。コイツ、私が荷物持ってないの分からないのか? 私は手ぶらだぞ? 普通、旅ならキャリーケースとか持ってるだろ。


「違うのかい」

「違いますね」


 出来るだけ会話を続けない様に素っ気ない態度を取る。そうすれば、勝手に何処かに行くかと思われたが、男は粘ってくる。


「何処で降りるの?」

「さぁ? 心の赴くままに進みます」


 このオッサン、滅茶苦茶怪しいので目的地は言わない。後を付けられたら困るからね。

 素っ気ない態度を取っているのに粘ってくる男に痺れを切らし、私は汽車が止まったと同時に汽車を降りた。着いて来る男に確信した。コイツ王の手先だ! っと


 私は人混みを掻き分けて男を撒いた後、影で別の通りに移動した。これでもう大丈夫だろう。確実に撒いた。そう確信したのだが……数十分後、そのオッサンは現れた。何故だ⁉︎


「酷いねぇ、置いて行くなんて」


 付いてくんなし! 私はまた撒いたのだが、結果は同じ何故か見つかる。何故だ!

 私は困り果てて逃亡経験のある友人にメールを送った。


 《逃亡中ナウ。撒いても撒いても追っ手に見つかる。どうすれば良い?》送信!


 この友人、名家の出でこの時代には古い政略結婚をさせられそうになった所を「私の人生勝手に決めるな!」 と切れて家出した子である。父親が議員とかで権力があり、追っ手に追われて国外逃亡をした筈だ。国外に逃亡しても追われて大変な思いをしたらしいが、つい先日、鬼ごっこは終わったらしい。なんでも見つからない場所に逃げたのだとか。確か人口の少ない島でサバイバルしてるとか言ってた。その子の階級はオルディナリオ。普通の子なのだが、どうやったのか追っ手から逃げ切った。

 その技を是非伝授してほしい。

 一応、電波は届くのでメールしておいた。すると直ぐに返信が来た。


 《この時代にジャージ着てる女が外を徘徊してるなんて見つけてくれって言ってるようなもの。目には目を、歯には歯を、一般人の装いには一般人の装いを》


 っと返ってきた。成る程! 私のジャージが目印だったのか! 確かにジャージ着た子知りませんか?って聞いたら直ぐ見つかるわな。今時、ジャージでウロウロする奴いないもん


「そうと決まれば!」


 私は大型ショッピングモールに行き、店員さんに自身をコーディネートしてもらった。最後に帽子を被りこれでOK。誰がどう見てもその辺りにいる普通の子だ。これで私だとバレないだろう。

 仕上げにお化粧もして、準備満タン!!


 これで勝つる! 私は意気揚々と外に繰り出した


 ◆



 先程のオッサンとすれ違ったが私だと分かって居ない様だった。完璧だ! 友人ありがとう!


 これで堂々と汽車に乗れる。私は汽車に乗るべく、駅に向かった。


「……⁉︎」


 駅に向かう途中、なんとカミルを発見してしまった。なんでここにカミルが居るんだ! カミルはマズイ。殊技殺しが有る! 出来ればバレるのは避けたい。だが、ここで逃げ出したり、回れ右をして方向転換したら怪しまれる。

 私は帽子を深々と被り、出来るだけ動揺が外に出ない様に装いながらカミルの横を通った。


 カミルは私に気付かず横を素通り。安心のあまり一気に肩の力が抜けた。


「はぁ……」


 師匠は私1人ならば逃げられると言ったが、どうにも逃げられる気がしない。向こうが躍起になって私を探しているからだろうか? それとも私の雲隠れが下手なのだろうか?

 この際どちらでも良い。今は師匠やコルネリア様の言い付け通り逃げ切る事だけ考えよう。


 私は足速に駅に向かう。もう少しで駅だ! っといった所でまさかのラミルを発見! 六花2人も動員してるのかよ……。

 私は先程カミルを対処した時と同じ様に帽子を深々と被り、通行人Aを装い横を素通りしよう……と思ったらガシッと腕を掴まれた。マジかよ……。


「リンドヴァルの髪飾りだな?」

「oh……」


 まさかの事態だ。バレるとは。しかも師匠の髪飾りで。しまった! つい、いつもの癖で師匠から貰った髪飾りをつけてしまっていた。師匠に執着しているラミルが、師匠の物を分からない訳ないのだ。

 凄い、執念だなぁ……。ドン引きだよ


「すみません。どちら様ですか?」


 私はちょっと声のトーンを上げてラミルに別人であると思わせようと頑張った。ここで私の演技力が試される!

 ラミルの握る手に力が入る。痛い、痛い!


「ちょっと! 人呼びますよ!」


 私は女だ。近くの人に悪漢に襲われてる! 助けて! って言えば不利になるのは向こう側。それが分からない男ではないだろう。


「離して!」


 私が大声を上げて、か弱い女の子みたいな抵抗をすれば周りがザワつき始める。これでラミルは女性を乱暴する悪漢だ。

 ラミルはその空気を感じ取ったのか鋭い殺気を一度向けた後、手を離し私から離れた。ふぅ……。

 しかし何時迄も此処には居られない。直ぐに移動しないと。だが、駅前で見つかってしまったので、このまま汽車を使って移動するのはマズイ。汽車に乗る気だとバレて居るだろう。確実に追っ手がある。


「バスかなぁ……」


 私は急遽、路線変更。バスで次の街を目指す。いや、バスに乗ろうとするとカミルを発見したので、また変更。仕方ないので徒歩で行こう。もうじき夜が来るし、夜ならば闇夜に紛れて進む事も可能だろう。それに飛んで行っても誰にも気付かれない。昼間とかに飛んでると、道行く人に発見されて新種のモンスター発見! とか言われ兼ねないので極力控えている。

 夜になるのを待って街から出る。街から出る際、新しい装いに変えておいた。先程と同じでは直ぐに見つかってしまうし。

 命懸けの逃亡劇だが、ちょっと楽しくなってきた。変装したり、演じてみたりと普段出来ない事をしているからだろうか? それとも単純に隠れ鬼ごっこを楽しんでいるのだろうか?

 まぁ、この気持ちが恐怖に変わらないことを祈ろう。

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