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再会

 

「ほら、行くぞ!」

「えー……」


 渋々、付いて行く私。兄様の姿はやる気に満ち溢れて居た。しかしその後は、先程と同じで私が戦い兄様が悲鳴を上げて後退を繰り返す。正直、飽きてきたので別のレパートリーが欲しい。


 やっとの思いで地下3階へ。地下3階には前と同じ様にチェーンソーを持ったジェノサイドが居たが、それも難なく突破。そして歩いて居ると広い場所に出た。


『ようこそ! 三ツ葉の諸君!!』


 イネスの声が聞こえて来たと同時に広場はライトに照らされて明るくなった。眩しい! 目が、目がぁあああっ!

 目が慣れて来た頃、私は上を見上げる。広場の上側にはガラスが貼られた場所が有り、そこにはイネスと、昔の面影を残した若君が居た。


「アキラ! 話が有る!」


 兄様は上を向き、若君に声をかける。


『何かな、ハル』


 ハル? ハルとは【晴間】、私の兄様の渾名らしい。兄様と若君は歳が同じだったか近いかだったかで一緒に育った。なので渾名で呼ぶくらい近しい間柄だったのだろう


「何故、指名手配犯などと……」

『恩人だからね。それに、彼の思想には思う所が有る。だから協力してるんだ』

「そんな……」

『やぁ、佳月。大きくなったね』


 突然、話掛けられた。まさかコチラに来るとは思っていなかったので驚いた。


「でしょ?」


 他に言う事が見つからない。今更、何て話したらいいのか?


『感動の再会はもういいかね? そろそろ、テストがしたいのだが……』


 何を聞こうか、何を話そうか迷っていると、イネスが割り込んで来た。コイツ空気読めないなぁ


「テスト?」

『そう、コイツの実験だよ!』


 イネスが言うと、奥の扉が開き、何かが出てきた。それは……


「【エンヴィー】か」


 以前の様に塊と化したジェノサイドの真ん中にエンヴィーが居た。以前と違う所は全体がドス黒い所だろうか? それ以外は前回戦った個体と同じに思える。あの纏わりついているのは闇だろうか? なら、私の殊技で操れそうだなぁ。


『さて、ショータイムだ! ……あれ?』


 イネスの言葉が終わる前に私の殊技で圧殺した。夥しい量の血が辺りに飛び散る。エンヴィーに纏わりついている闇でギュッとしたのだ。闇を使って私に勝とうとするとは笑止千万! 闇を操れる私の前に闇を纏って来るなんて鴨がネギ背負って来た様なものだぞ! もしくはエビが衣纏って来たみたいなものだ!

 邪龍の時は邪龍そのものに闇の耐性が有ったから使えなかったが、耐性がないヤツなど『こう』よ!

 私は羽を広げ、イネスの居る所まで飛び、ガラスを叩き割る。


「いや……流石、リンドヴァルの弟子。やはり、強いな」


 先程までのテンションは何処へやら、かなり冷や汗をかき出したイネス。隣に居たアキラも若干、冷や汗をかきながらイネスの前に出た


「強くなったね、佳月。嬉しいよ」

「師が良いものでね」

「でも僕に勝てるかな?」

「……」


 アキラは幼少の頃に出て行ってしまったので実力がどれ程のものかは分からない。ギース曰く、私の方が剣と魔法の腕は上だ。しかし殊技は【光を操る】という私と真逆の能力なので、そこが不安材料なのだ。

 それにココはライトが当たり、一面明るい。向こうに有利だ。私が夜に暗闇に強いのと真逆なのが彼なのだろう。彼は昼に明るい場所では強いのだ。


「佳月……」

「何、兄様」


 兄様が青い顔で私の名を呼ぶ。何、今忙しいんだけど! 後にして!


「ハイド様から連絡で、六花がこっちに来てるって。しかも2人」

「ふぁ⁉︎」


 緊急事態発生!! 勘づいた六花がコチラに向かって居るそうだ。マジかよ!


「目的を果たして早急に離脱しろって」

「クソが!」

「こら、口が汚いよ」

「あ、ごめん」


 悪態を吐いたらアキラに嗜められた。何で君に注意されるんだよ。

 しかし、彼に構って居られくなった。急いで目的を達成し素早く帰還せねば。相性がどうとか言ってられなくなった。もはや全力でぶつかるのみである。戦略とか知るもんか!


「アキラ、白い宝具の在処……教えてくれません?」


 取り敢えず、情報を敵に聞いてみた。師匠も初めは慈悲なのかなんかのか戦闘前や拷問前に1回は聞くのだ。真似て聞いてみた感じだ。


「……ふふふ」


 笑っただけだった。これは教えてくれない感じだな。時間が無いのでもう実力行使しかないな。


「すみません、若君。引いてくださいませんか?」


 私は刀を構えて一応聞いてみる。相手は引く気などは更々無いだろうが、ほら、意思確認は必要でしょ?


「悪いね。できないよ」


 微笑みながら拒否るアキラ。決裂である。


「仕方ないです……ね!!」


 これ以上は時間の無駄だ。私はアキラに斬りかかった。

 アキラはイネスを巻き込まない為か、殊技を使い彼らが居る場所から私を下の広場に落とした。羽が消失したんだが⁉︎


 驚愕していると、アキラは無数の光の球体を作り出していた。そしてコチラに放つ。私は慌てて回避の為、影に避難。そしてその辺の影から出てくる。

 お返しにと、影から生み出した獣を3匹向かわせて襲わせようとしたが、彼に辿り着く前に消失した。


「やりずらいわ」


 ここは明るい為、彼の殊技が私の殊技を上回って居る。なので私の殊技が掻き消されるのだ。やりずらい事、この上ないな!

 すかさずアキラが斬りかかって来たので応戦。何度か打ち合った後、アキラは再度殊技による攻撃をして来た。それを殊技で防ぎつつ、魔法で攻撃してみたり、近づいて刀で攻撃したりした。

 何度か打ち合いを続けて居ると、アキラの攻め方が変わった。先程までは近接主体で殊技はサブな感じだったのに、今は殊技を基盤として近接を少々って感じになった。恐らく何度か打ち合いをして、殊技で押した方が押し切れる事に気付いたのだろう。


「ホント、やりずらい!」


 これだから殊技が効かない連中は!


 球体からレーザーよろしく飛んで来る攻撃を影を操り撃ち落として行くが、手数は向こうの方が多く中々、攻められない。

 そうして居ると天井から極太レーザーが降って来るのだ。それも何発もだ。当たればタダでは済まないだろう攻撃の嵐に流石に冷や汗も流れてくる。しかし、負けてはいられない。私も直ぐに応戦する。

 光有る所には闇は有る。有り難い事にアキラの攻撃のお陰で影が大量に出来ているのだ。これは好機だ!


 私が動こうとした瞬間!! 私の目の前に太い剣が突き刺さった。見覚えの有る剣。それは


六花最強(ベロニカ)……」


 ベロニカの剣であった……。まさかの事態だ。到着が速すぎる。最悪だ!

 ベロニカの姿を確認するとアキラの猛攻も止んだ。


「アキラ代われ」

「しかし……」

「続ければお前は負けていたぞ? なのに続けたいか?」


 アキラは渋々、下がった。そして私の前にベロニカがやって来る。


「兄様……。ベロニカ来るの早くない?」


 あまりに予想外の出来事過ぎて兄に聞いてしまった。兄が知っている筈は無いと分かっていたのだが、現実逃避の為には仕方がなかった


「知るか!」

「だよね!」


 知る由も無いよね!


 しかし六花が来ると言われていたが、よりによってこの男か……。とことん付いてないな。

 ベロニカの剣が宙を舞っている。それは、まるで剣の踊りの様だ! とか言ってみる。


「……全力で逃げたら逃げられるかな?」


 私は及び腰になる。だって六花最強の相手なんて冗談じゃない。私は師匠にだってハイドにだってギースにだって勝った事は無いのだ。その3人より強いベロニカに、私の勝ち目は万に1つもない!


「やけに弱気だな」


 兄様は屁っ放り腰になりながら言って来た。辛うじて構えている剣はプルプルと震えていて、とても情けない。


「ベロニカの殊技は確か……」


 そんな兄様を尻目にベロニカの殊技を思い出す。確か、殊技と魔法全般を無効にする能力と6本の剣を自在に操る能力だった気がする。

 コチラの殊技と魔法はベロニカの無効化能力により完封され、ベロニカのもう一つの殊技で攻撃を加えて来るというチート級の能力だ。面倒極まりない。


「構えろ」


 ベロニカが言う。


「あの、すみません、ちょっと待ってもらっても良いですか?」


 私はタイムを要求。受け入れられる訳ないと思っていたのだが……


「まぁ、良いだろう」

「良いんだ⁉︎」


 タイムのOKが出た。なんて心の広いお人なんだ! 師匠、ハイド、ギース、見習え!

 タイムが許可されたので、私は端末を取り出して師匠にTEL。敵前で端末を使い電話を掛ける私を見た兄様とアキラが変な顔をしていた。

 あ、そういえば迷いの森は電波行けたっけ? 繋がるのかな? そんな心配を他所に何コールかの後に師匠が出た。 

 あ、出た。電波行けたらしい。


「し、し、し、師匠! 師匠! 師匠! 私の目の前にベロニカ居るんですけど! これ、どうすれば良いですか! 白、諦めて帰っても良いですか!」

『……うるさい。こっちも立て込んでいる』

「ハイドじゃん! 何でお前が出るんだよ! これ師匠の端末なんだけど! 師匠どこ⁉︎ 変わって! 師匠に判断仰ぐから! それと必勝法みたいなの聞くから!」

『うるさい。切るぞ』

「え、ちょ!」


 切られた。え? マジで? どうするの? 私は呆然と端末の画面を眺める。


「もう良いか?」


 待ってくれて居たベロニカが焦れたのか聞いて来た。え、ホントにどうすれば良いの?


「あー、はい」


 これ以上の先延ばしは無理だろう。仕方ないな。

 私は刀を構え戦闘態勢に入る。勝てない相手だが、逃げに転じれば逃げる事は可能だろう。そうすれば白い宝具の行方は分からなくなり、イネスも取り逃がすが、ここで私が捕まるよりマシな筈だ。マシなのかな? この気を逃したら、もうイネスと会えないかもしれないし……それにハイド辺りはキレて来そうだ


「行くぞ」


 ベロニカの殊技により宙に舞う黄金の6本剣と、ベロニカ自身が持つ2本の剣。合わせて8本の剣を構えたベロニカが私に突っ込んで来た。

 私はもう1本の刀を取り出して二刀流にする。これでも防ぎきれないだろうが、無いよりマシだろう。


「いざ!」


 私も勢いをつけ、ベロニカに突っ込む。



 不本意だが六花最強とのバトルが幕を開けた。

どうでも良い『人物設定』


ベロニカ=ヴォルケンシュタイン

髪色:白髪

年齢:63

殊技:魔法系等無効・自身の武器を自在に操る・蘇生(10年に一度の殊技)

階級:ドクトゥス

備考:ギースの同期でライバル。リンドヴァルと久遠の師。ギースとは違い、弟子には愛着があり見捨てるという考えはなかった。

自身とは違う道を歩んだリンドヴァルを評価しており、いつか自分を超えてくれる事を願っている。

そんな弟子が弟子を取ったと知り、気になってヴェドルフの砦に来ていた。実は野次馬精神で見に来ていたのだ。初孫を喜ぶお爺ちゃんみたいな感じ。

余談だが、一目見ただけで佳月が天才である事を看破し、魔法の不得意なリンドヴァルでは育てきれないと思い、取り上げて魔法も銃も扱える久遠に渡そうとも考えていた

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