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最後の宝具

 

 イネスの所在が判明した。それは【アドリウス】にある『迷いの森内部』だ。

 アドリウスは私達の国である。つまり最後の宝具を持つイネスは敵地に居る事となる。

 昔、あそこを通った際に見かけた気持ち悪い怪物……あれはイネスが放ったジェノサイドだった様だ。通りで廃遊園地に寄った時、ジェノサイドを見た際に『見た事あるな』っと思った訳だ! 既に迷いの森で見てたんだ!


「迷いの森か……」

「あそこなら身を隠すのに最適だな」


 迷いの森はイネスの本拠地だ。あの森はイネスが作ったと言っても過言ではないらしい。


 イネスの居所が分かった理由は、同盟を組んだ白い宝具持ちの人達による捜索だった。特にアーシャ様とルアンナ様が率いる【エスタス】(邪龍の居た国)の人達が頑張ってくれた様だ。感謝である。


「お兄様はまだ僕らの動きに気づいていないだろう。乗り込んで白い宝具を奪ったら、直ぐに離脱する」


 作戦は至ってシンプル。王様の兵達が来る前にイネスをボコって白い宝具を奪ってトンズラである。王様はまだ私達の動きに気づいて居ない筈だから、今なら六花や花弦に邪魔される事なく辿り着けるだろう。


「お兄様に勘付かれる前に行くぞ!」


 という訳で迷いの森に向かう私達。敵地である為、気を引き締めないといけない。私達は1度、初めてクレマチスのジィジに会った場所、機械の墓場に身を置き作戦会議をする。ここは迷路みたいに入り組んで居るので、もしもの際は逃げやすいのだ。

あまり時間が無いので手短に作戦会議。黒を持つ師匠とハイドが居るから他の六花達に行動が筒抜けなのだ。直ぐに兵が来てしまう!


「佳月、お前は別行動だ」

「はい」


 ここからは私と兄様で行動を余儀なくされる。師匠とハイドは位置がモロバレなので敵兵を引き付ける役をしてもらう。キャンピンには戦闘要員としてギースが残る。

 師匠とハイドが敵兵やら六花やらを相手取って居る間に、私と兄様がイネスの所に行き白い宝具を奪ってくる予定なのだ。

 ハイドはイネスを殺したいので乗り込みたかった様だが、リスクを解っているので渋々囮役に応じた。


「もし、ヤバくなったら私を置いて逃げてくださいね。私なら影移動でも飛んででも逃げられますから」

「あぁ、分かっている」


 私と兄様だけなら、どうとでもなる。最悪、一族に乗り込んで人質でも取ろうかな?


「チョッカーを渡す。これで全員の位置は分かる」


 位置が特定できるチョッカーを渡され全員装着。


「いいか? 無理はするな」


 コルネリア様からお言葉を頂き、私達は迷いの森に入った。

 方向音痴で不安が残る師匠だが、ジィジとアスターがキャンピンから方向を指示してくれるらしいので問題ないだろう。そしてハイドも居るし大丈夫だろう。


「いざ!」


 私達は出発した



 ◆


 森に入って暫く経つ。無言で歩き続ける私と兄様。いや、嘘ついた。兄様は無言じゃない、ヒィヒィ鳴いている。


「そういえば兄様、【一ツ葉】の家紋ですが……」


 そうだ、イネスの所に行って一ツ葉の事を調べないといけないんだった! それを兄様に言う。


「そういえば、そんな事、言ってたな」


 兄と一ツ葉の家紋について話しながら捜索する。前回、山の中の廃墟に研究施設を構えていたイネス。なので前回と同じ様な場所を探す事に。

 薄暗い森の中を只管歩く。その後ろには兄様が続いている。


「なぁ、ヤバくないか? 帰らないか?」


 兄様が後ろから、ずっと呼びかけて来る。そんなに不安ならばキャンピンに残れば良かったのに、変にプライドが高い所為か行くっと言い出したのだ。しかし今になって帰ろうと言ってきた。チキンかよ


「私は好奇心旺盛なんだよ! 冒険でしょ、でしょ!」

「それがダメなんだよ! だから酷い目に合うんだろ!」


 森の中で兄とヤイヤイ言い合いをする。私と兄様は最近になって話す様になったが、馬が合わないのか良く喧嘩になる。終いには取っ組み合いになるのだが、結果は私の全勝。兄様にはまだまだ負ける気がしない。


「お前はいつもいつも生意気なん……。何だ、アレ」


 兄様が私に怒鳴り散らし、いつもの様に取っ組み合いになりかけた所で、兄様は何かに気が付いた。それは


「観覧車の妖精ではないか!」


 そう、【ジェノサイド】であった。これは紛れもなく此の近くにイネスが居るという証拠だ。


「兄様! アレに付いて行けば研究施設は直ぐです!」

「え゛⁉︎ アレに付いて行くのか⁉︎」


 及び腰になった兄様を引きずり、私はジェノサイドを追った。 

 ジェノサイドに付いて行く事、数分。不気味な雰囲気の廃墟に到着した。迷いの森にこんな場所があったとは……。中に入って行くジェノサイドを追いかける私と、嫌々付いて来る兄様。


 ピピッ


 首に着けたチョッカーから何か聞こえて来たがスルーしよう。多分位置情報的な何かだろう。


 中に入ったジェノサイドは入って直ぐの地下室への入り口を開けて中に入って行く。それに私も続く。


「暗っ」


 外も暗かったが中もくらい。暗いのでいつもの様に暗視の魔法を使い、見える様にする。しかし兄様は暗視の魔法が使えないらしく、困っている様なので、優しい妹である私が懐中電灯を貸してあげた。


「まぁ、無いよりマシ……。ギャー!!!!」


 ライトを付けた途端、騒ぎ出した兄様。やれやれだ。兄様の視線の先には、ジェノサイドの群れが居た。確か前もこんな感じだったな。


「騒ぎ過ぎですよ兄様。五月蝿い」

「騒ぐに決まっているだろ! これを見ろ! うわー!! 襲って来たーー!!!!」


 一目散に走り出す兄様。私はパパッと殊技でジェノサイドを倒し、兄様を追いかける。隅でプルプルと震えている兄様に思わず吹き出してしまう。


「あはははっ」


 何だか可愛らしい。


「先行くよ(あに)様」

「ま、待て!」


 私の後ろをビクビク震えながら付いてくる兄様に、場違いだがスカッとしてしまう。普段、どんなに私を下に見ようが、私の方が遥かに兄より優れているのだと兄に現実を突き付けるこの瞬間が楽しいのかも知れない。酷い性格になったものだと、自分でも自覚はある。しかし、大半は師匠による教えと黒い宝玉の所為だっと責任転換しておく。


『ブラボー!! お久しぶりだな、佳月君!』

「ひっ⁉︎」


 いつぞやの様にスピーカーから聞こえてくるテンションの高い声。その声に兄がピクリと反応して縮こまった。兄様よ、本当に男か?


「私の名前、ご存知なのですね」

『勿論だとも! 君の名前は王から聞こえてるよ。あのリンドヴァルの弟子なのだとか! 彼はどうだい? あれから随分と時間が経ったが大きくなったのかな?』


 あれからとは師匠の父親を殺した時の事を言っているのだろう。師匠はまだ十代だったらしいのでイネスからしたら子供だった筈。その頃の師匠がどれくらいの大きさだったのか知らないが、今はかなりの高身長なのでイネスからしたら大きくなっている筈。

 相変わらずテンションの高いマットサイエンティストのイネスの問いには答えず、私の気になって居る事を聞いてみた。それは……


「【一ツ葉】の家紋」


 そう、一ツ葉の家紋の謎だ。私が思うに一ツ葉の若君が出て行った時に若君を拾ったのが、イネスだったのでは? っと推測している。でなければ、イネスの研究施設に一ツ葉の家紋が書かれていた理由が他に無い。


『アキラの事だね……。そうそう、アキラも君達に会いたがっているよ?』


 それだけ言うとイネスはスピーカーを切った。スピーカーからは何も聞こえてこなくなり、辺りには静寂が訪れた。


「ビンゴだね」


 やはり、一ツ葉の若君はイネスの元に居るのか。ならばする事は1つ!


「いや、別にどうでもいいな」

「えぇ⁉︎」


 私の言葉に兄様は目を見開き、驚きの声を上げる。だって別に今更、会いたいないんて思わないし……。ただ、何で家紋が描かれていたのか気になっただけで謎は解けたのだから、もう満足だ。これ以上はどうでも良いや!


「いや、俺は家を代表して問いたださねばならない!」

「あ、そう? じゃ、頑張って」

「まてーい!」


 兄様と軽いコントをして居るとスピーカーから声がした


『君は案外ドライだね。誰に似たんだい?』


 通信切ったんじゃなかったのかよ

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