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師匠とお出掛け

 

 ある日の出来事。キャンピンのリビングにて


「そういえばハイドよ」

「なんだ?」

「昔、泣き虫だったんだってね」


 ギースから聞いた事を言ってみた。


「何の事だか」

「ギースが言ってたよ」

「ギース……」


 ハイドが恨めしげにギースを見た。珍しい、こんな表情初めて見たよ。


「プスス。ザマァ!」

「……あんなに触れ合った仲なのに、随分な物言いだな」


 なんかハイドが妄言言い出した! 触れ合った仲? あり得ない!


「水の中で……」

「あー! 違う! あれはお前が溺れてたから!」


 いつぞやの無人島で巨大蜘蛛に2人して水に引きずり込まれた時に、口移しで空気送った時の事か⁉︎ あれは人命救助であって甘い雰囲気なんて微塵もなかったから!


「その後にもしただろ?」

「アレは魔力の為でしょ⁉︎」


 怪物から逃げ延びた際の、魔力の口移しの事か! アレも人命救助みたいなものだろ! 甘い雰囲気なんて無かったじゃん!


「お前達、まさか……」

「やるのぉ!」

「若いもんは盛んじゃな」

「佳月が姉は嫌だなぁ」

「ハイド様が弟?」

「ないから! そんなのないから! 絶対ないから!」


 私は必死に否定する。絶対に無いから、変な妄想はやめてくれ! 慌てる私を見てハイドは微笑を浮かべる。性格悪いヤツめ。


「初めてだろ?」


 ハイドが問うて来た。初めて? はてなんの事やら……。私が首を傾げていると、ハイドが自らの唇に指をやったので、ピーンっと来た。ファーストキスだったか問うて来たのか!

 しかし、私のファーストキスは久遠だ。砦に攻めた際、トラバサミに足を挟むという間抜けな事をして久遠に捕まった時に血の味したファーストは済んでいる。


「残念でした! ファーストは久遠でした!」

「……」


 私が言うとキャンピン内は静まり返った。なんだか気まずくなったんだけど……。何故だ?

 私はこの微妙な空気を元に戻す為、話を逸らす。


「ハイド、ギースの弟子なんだってね。って事は……兄様と兄弟弟子なんだね」


 ハイドがギースの弟子という事は現在ギースに鍛えられている兄様とは兄弟弟子にあたる。


「うわぁー、兄様、兄弟子との差がありすぎだね」

「五月蝿い!」


 出来の悪い弟子だなぁ。


「お前もな」

「カチンっと来た。表出ろ。日頃の鬱憤、ココで晴らしてやる」

「いいだろう」


 よし! 今こそ昔年の恨みを! 後、セクハラされまくる恨みも返そう!

 こんな感じでハイドと、よく割とガチ目の戦闘を繰り広げております。


「絶対安静!!」


 アスターに怒られた……。


 この出来事からハイドのセクハラが加速した。普通に女性にしたらアウトな事まで平気でしてくる。このキャンピン内は治外法権なので、何処に訴えても私の主張は通らない。なんて職場だよ。唯一、コルネリア様に訴えれば行けると思うが……幼い女の子に『仲間にセクハラされるんです!』なんて訴えられないので却下。

 なので私は師匠や兄様を盾にしたり、アリクイの威嚇ポーズで逃れたりするが、流石はハイド。なかなかに、ねちっこくてしつこい! 

 本気で息の根止めてやろうかと悩んだ。


「なんか、最近、師匠もセクハラしてくる気がする。気のせいかな?」


 気のせいかもしれないが師匠もセクハラしてきている気がする。勘違いなら恥ずかいので、本人には言えないが。


「いや、アレはそうだと思うよ」

「マジか」


 アスターに愚痴ったら、肯定をもらえたわ。


「因みに、かなり前から」

「マジか」


 気付かなかったわ。


「本人に自覚はないけど」

「じゃあ、セクハラじゃないんじゃないの?」


 無自覚ならセクハラじゃないんじゃ? セクハラって自覚有りでするもんじゃないの?


「髪を触っている時点で中々だよ」

「え、髪触られたらセクハラなの?」


 何処から何処までがセクハラなのだろうか? 世の中って分からないな


「人によるんじゃない?」

「じゃあ、私は気にしないからセクハラじゃないな!」


 師匠は髪が好きだから仕方ないね!


「後は寝てる時とかエグいよ」

「え」


 あの休眠状態の時に顔をモニモニされてた時のかな? アレでセクハラになるんだぁ。ハイドの様にあからさまじゃないのにセクハラ扱いされるなんて、世の中って怖いな。これじゃ、何にもできないじゃないか。


「でもまぁ、私もセクハラしてるからお相子でしょ!」


 世間一般から見たら師匠の胸元に飛び込んで頬擦りする弟子も中々にセクハラだと思うし、自覚もしてる。これは相子でしょ。師匠の件は気にしない事にした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 最後の宝具を持つイネスに逢いに行くべく進む私達。しかし、イネスの所在は未だ分からず捜索は難航している。


「わーい、お出かけだ!」


 補給の為、街に寄ったキャンピン。全回復した私は師匠と外出を行った。


「師匠と歩くなんて久しぶりの感じがします」

「そうだな」


 アスターやハイド達が合流するまで私と師匠、コルネリア様の3人で行動していた。今ではとても懐かしい。今回のお出掛けにコルネリア様は居ないが、何だが懐かしい感じがする。

 買いたい物も思い付かずブラブラと散歩しながら、道すがら店を観て回る私。その後ろを何も言わず付いてくる師匠。昔はあまり話さない師匠に気まずさを感じて居たが、今は慣れた。


「師匠! 銃見に行きましょう」


 私は銃弾の補充の為、銃を売るお店に向かう。


「コレください」

「はい」


 手際良く会計をしてくれる店員さん。笑顔で対応してくれる店員さんだったが、身分証を提示する様に言われたので身分証を提示すると態度を一変。見下す様な態度を取られた。

 そうだった。私の階級は【ウィークトゥス】。下界中の更に下界の住民だった。六花とか普通に相手して来たから自分の階級の事をスッカリ忘れて居た

 そして、この態度、久しぶりだ。最近無かった反応に場違いだが感動を覚えた。


「使えないでしょう? ご購入はお辞めになられた方が良いのでは?」


 敬語を崩さなかった事は賞賛に値するが、蔑んだ目はダメだ。そんな目でお客様を見るのは辞めなよ


「使えますよ」

「嘘言わないで下さい。ウィークトゥス風情が使える訳ないでしょう」


 宜しい! ならば戦争だ!


 ウィークトゥス風情とか言いやがった! 敬語だけどコレはダメだ。久しぶりに説得 (物理)をした方が宜しいのでは?

 私の頬がピクピクして居るのを師匠が目敏く見つけた様で、私の額をペシッと叩いて来た。怒るなっという事らしい。確かにイライラするのは得策では無い。ココはコチラが大人な対応をするに限る


「じゃ、使える所見せますから……」

「時間の無駄。早く帰れ」


 とうとう敬語が外れた店員。その店員は逆にイライラし始めたのか、貧乏揺すりを始めた。短気かよ


「責任者を呼べ」


 とうとう師匠が出てきた。師匠が出ればイチコロだな。師匠は自身の身分証を見せて責任者を呼ぶ様に言った


「何で……。あ……。すみません! 今すぐ呼んで来ます」


 師匠の階級を確認した店員は顔色を変えて奥に引っ込んだ。流石ドクトゥスだ。いいなぁ、私もドクトゥス欲しい。

 店員が居なくなったので私は殊技を発動させ、手持ちの銃弾の在庫を数える事にする。これから先、補充しなくて良い様に出来るだけ銃弾を蓄える為だ。ずっと師匠にお願いする訳にもいかないからね


「も、申し訳ございません! うちの店員が!」


 師匠に平謝りする店長を尻目にどれがいるかピックアップする。その様子を店員が目を見開いて見ている。まぁ、殊技使ってるし、そういう反応になるわな。

 結局、師匠のお陰で銃弾を買えた私。これで暫くは大丈夫だろう。師匠には改めてお礼を言わねば


「そういえば、旅を始めた当初も銃ショップで同じ様なやり取りしましたね」

「……そういえばしたな」


 今や懐かしいあの頃、こんな出来事も有ったものだ。

 前王に宝玉を託され、コルネリア様達と出会い、砦に潜入してみたり、裏切られてみたり、捕らえられ船から脱出してみたり……。師匠と出会う前は想像もしなかった経験をしている。


「随分、遠くまで来ちゃいましたねー」


 距離の事では無い。気持ちの事だ。気持ち的に随分、遠くに来てしまった気がする。あの頃は、ただ親戚から逃げたくて旅に参加したが、今の私は何を思い旅を続けているのか。


「何も変わらない。お前はな」

「それ、成長してないって言ってます?」


 私がそう言うと師匠は珍しく笑ってくれた。そして


「そうだな」

「酷い⁉︎」


 酷い一言。師匠なりのジョークだと思いたいが、この人ジョーク言わないしな……。


「冗談だ」


 師匠が冗談言った! これこそ成長ではないだろうか? 師匠が冗談言うなんて!


 この後、私達は特にする事もなくブラブラと歩き、束の間の休息を楽しんだ。


「それと……」

「なんですか師匠?」

「ハイドと久遠は辞めておけ」

「何の話ですか⁉︎」



 そんな、ある日の出来事。何でもない様な日。

どうでも良い『人物設定7』


ギース=シャクナゲ


髪:白髪

殊技:痛覚遮断 ・超回復

年齢:63歳

階級:ドクトゥス


備考:ベロニカとは同期でライバル同士。ハイドの師であり、良き理解者。

ハイドが幼少の頃に弟子に取り、何かと世話を焼いて来た。ハイドの性格が悪くなって行くのは反抗期だから〜っと思い込んでいたので、手が付けられなくなってから事の重大さに気付いた。因みにリンドヴァルや久遠が非道に走り出した時も反抗期だと思い込んでいた。

普段は温厚なお爺ちゃんだが、裏腹に冷たい性格をしており他者を切り捨てる事に戸惑いは全くない。弟子であるハイドも切り捨てる事に躊躇はなく、ハイドが囚われた際、真っ先に切り捨てる対象にしていた。優先順位はコルネリアの次に宝玉を持つ佳月だったので、4人が囚われた際、ハイドと共にリンドヴァルも切り捨てる気だった。結果、佳月が1人で逃げたので2人を救出した。

佳月の兄、晴間は多少使える様になれば良いなぁーっと思いながら鍛え中。期待はしてない模様。

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