山に入る際は野生の動物に注意しよう
絶賛ピンチである。目の前には体長5メートルほどあると思われる、白く巨大な生き物が人をバリバリモシャモシャと食べている所に遭遇してしまった。人の様に座って手に獲物を持って食べている。
体は白いが顔は真っ赤で口しかない。目は何処なのかと思っていると口を開けた時に口の中に目が1つある事を確認出来た。
「これが【ビヤタムズ】ですかね?」
「かもなぁ」
ヤバイ奴がいたものだ。こんな化け物が出るっと張り紙だけで注意を促すのではなく、もっと別の注意方法にしろよ! 普通に猪注意みたいなノリで書いてあったぞ!
ビヤタムズがこちらを見た。すると手に持っていた食べ掛けの人間を捨てて私達に向き合う。
「四足歩行やん」
そして四足歩行の体勢を取る。口からは真新しい血が流れている。先程食べた人間のものだろう。
「どうしますギース。今、武器持ってます?」
「持って来とらん。素手かのぉ」
荷物になるからっと武器を持って来なかったギース。完全に仇になった。私は絶対安静中の身なので戦う事は避けたい。なので完全傍観の姿勢でギースの1歩後ろに下がり彼に任せる事にする。幾ら武器のないギースでも強者は強者。これくらいなら一捻りにできるだろう。
「気持ち悪いなぁ」
地面に着いた手足は異様に細く頼りない。その手足を左右の地面につけて、体のバランスを取る様にしている。蜘蛛の脚を4本にして、胴体を細くして、真っ赤な顔をつけた感じだ。うん、気持ち悪い。
それが私達に向かってくる。食す気だな! しかし相手が悪い。素手でビヤタムズを撃退した。
「おぉー」
「さぁ、続きと行くぞ!」
「え、まだ行くの?」
先に進むギース。ギースには帰ると言う選択肢はないらしい。
◆
「ぎ、ギース……帰りましょう? そろそろキツイでしょう?」
「何を言う! 全然じゃ!」
「いや、血がダラダラですけど! 腕食い千切られましたけど!」
山を登っているとビヤタムズに何度も遭遇した。奴らは白い体を活かして雪の中に隠れている事が多く、動かれるまで気付かない事が多い。歩いていて地面が赤い場所があったなんて事もよくあった。地面に埋もれて顔だけ出しているので、一部赤い場所があるのだ。
気付かず進めば大きな口に自ら入りそうになる。それに何度か引っかかったギースは手脚を食い千切られ血だらけになっていたが、彼の殊技【超回復】のお陰で全快して何事もなかったかの様に進んでいる。これを繰り返している。
流石の私も止めたのだが、聞かず先に進むギース。この人も聞く耳持たない人らしい。このパーティー聞く耳もたない人、多くない?
ずんずん進むギースの後ろを追う私。ふと横に視線をズラすと岩の間に赤い顔が見えた。雪の積もった岩に擬態している様だが赤い顔でバレバレだ。後で追って来られても面倒なので私は殊技で串刺しにしておいた。そこでふっと気がつく。私の殊技、ちょっと変わった? なぜか今までより使いやすく感じる。そう、昼間なのに夜に使う様な使いやすさ。変わっていない筈なのだが、変な感じがした。
しかし考えるのは後にした。何故なら前方でギースが食い千切られたからだ。やれやれ……
◆
「どこまで行くのですか?」
「山頂まで」
頑固なお爺さんだ。着ていた防寒具は食い千切られた際に殆ど破れており素肌が丸見えの為、普通に寒いと思うのだが意地になっているのか帰ろうとしない。
「はぁ……」
私もビヤタムズに気を付けながら先に進む。私も何度か危ない事があったが、殊技で何とか凌いでいる。
「ハイドの奴、大丈夫かの? 彼奴はシャイじゃから心配じゃ」
「シャイって……」
そんな訳ないだろう! ハイドがシャイなら世の中の人は全員シャイだよ!
「今はあんな捻くれた性格じゃが昔はシャイじゃったんじゃ」
ギースは昔話をしてくれた。
ハイドは名家の子であり期待された子供だったらしい。同じ名家出身の師匠と幼い頃から競い合っていたとか……。
ハイドが名家出身にも驚きだが、師匠も名家出身には驚いた。でもちょっと納得。この2人、仕草が大分綺麗だからね。良い所の家なんだろうなぁとは思っていた。この2人は小さい頃からの知り合いらしい。そういえば久遠は師匠の幼馴染なんだよね? 幼い頃から師匠とハイドは知り合いなら、久遠とも知り合いなのかな?
そんなハイドだが顔が綺麗すぎて小さい頃は虐められていたらしい。泣いてばかりの子供だったとか。
そんな子供を不憫に思ったギースが強くなれる様に面倒を見てきたらしい。すると10代後半には花弦上位を取れるくらいになった。そして20歳の誕生日に当時六花だったギースから黒の宝具を譲歩されたらしい。
そんな経緯でギースは今や花弦なのだとか。
「ハイドが泣いてばかりの子供だったって……想像付きませんね」
「そうかの? 儂には今も昔も変わら……あっ⁉︎」
グシャっと音がしてギースの足が消えた。否、食われた。
「ギース⁉︎」
話なんかして注意を怠っているからだ!
「で、だなぁ」
「良いですよ! もう、登るのに集中して下さい!」
なお続けようとするギースに私は絶叫した。
どうでも良い『人物設定5』
【花蘇芳 純菜】
髪色:黒に見える紫
誕生日 3/16
殊技:遠くまで見通せる遠し眼
花弦No.21
年齢:24歳
階級:アナズィトン
備考:名家の出。優秀な兄の所為で家族から期待されずに育ったが、やさぐれず良い子に育った。優秀な兄を敬愛している。
20歳あたりでソフィアに拾われ、ソフィアの為に強くなる事を決意し花弦まで登り詰めた。
パーティー内では唯一のアナズィトンであり、戦えるメンバーの中で最弱と言われており、本人も気にしていた。同じ女でありながら強者の枠に嵌っている佳月に憧れると同時に、嫉妬に近い感情も持って居た。
六花の双子が黒保持者3人に接触した際、敵である花弦よりソフィアの情報を聞き、交渉を持ち掛けられた。ソフィアの側に戻す代わりに仲間を売れっと……




