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私、教科書に載るってよ

 

「すみません、先を急ぐので……で……します」


 コルネリア様の声が聞こえて来た。誰かと何かを話して居る様だ。内容は良く聞こえて来ない。


「せめて佳月様が目を覚まされてからでも……」

「いえ、これ以上の滞在は不味いので……」

「そうですか。では仕方ありませんね。せめて御礼をと思いましたのに」


 意識が徐々に浮上したが、また瞼が開かない。眠いぃ……。でも起きないと。気持ちは起きようと頑張っているが、それに反して体はまだ寝ていたいと言って私の言うことを聞いてくれない。


「佳月が起きましたら、私の方から言っておきます」

「はい、よろしくお願いします」


 コルネリア様は私の直ぐ側で誰かと話して居る様だ。そしてまた意識が落ちた。


 次に意識が浮上したら、誰かが私を荷造りしている所だった。目を開けてないので分からないが、こうシーツでクルクル巻かれて竹輪みたいにされている気がする。この雑い感じ、師匠かな? 荷造りが終わったのだろう。そのまま持ち上げられた。お? この抱き方はお姫様抱っこかな? 顔にシーツが掛かってないので、御包みみたいになっている気がする。そして運ばれて行く。何処に行くのかなぁ。誰かの体温と、揺れる振動が心地よくて、意識がまた落ちてしまった。


 次に起きたら、まだ誰かに抱えられて居た。先程から時間は経ってないと思う。短い間に意識が落ちたり、浮上したりを繰り返しているみたいだ。


「ハイド、キャンピンまで佳月を運んでくれ」

「あぁ」


 お、師匠の声だ。とても近い場所にいるな。後、ちょっと離れた所にハイドの声。師匠の声が近いと言う事は、私を抱えて居るのは師匠だろう。

 師匠が今、至近距離で私を抱えて居る。今、目を開けたら至近距離で師匠のお顔を拝見できるぞ! 頑張れ私! 起きるんだ私! 今、起きないで、いつ起きるというんだ!

 私は頑張って目を開けた。おぉ! 師匠のお顔が近い! ぼんやりと師匠を見ていると、ハイドも映り込んで来た。お前は要らねーよ。

 師匠は私をハイドに渡した。ハイドの腕の中に来た私。チッ! もう少し師匠の腕の中を堪能してたかったのにな! もう良いや。まだ眠いから寝よーっと


「うん? 佳月?」

「起きたのか?」


 私が目を開けている事に気が付いた師匠とハイドが覗き込んで来たが、私はそのまま寝た。


 次に目が開くと、私は何かモグモグと食べて居た。目の前にはハイドが座っており、私にスプーンを差し出している。私は口を開けて、そのスプーンの中身を食べる。お? これはハイドに『あーん』されてる? マジで? アイツの性格上、『あーん』なんてしないだろう。もしや、私はまだ寝てるのかな? これは夢? なんて嫌な夢だろうな! いや、夢にしては凄いリアルだ。やはり現実か。

 私は差し出されたスプーンをまた口に含んだ。私、ほぼ無意識でスプーンを口に入れてる。まだ半分以上寝ているのに、一生懸命に食べて居る。てか私、起きる前から食べてなかった? 寝ながら食べてたの? 凄いな私。そんなにお腹が空いてたのかな?


「兄さん、楽しそうだね」


 アスターの声が聞こえて来たので、視線を向けるとアスターが居た。その隣にはジィジと兄様も居る。他の面々は居なかった。場所はキャンピンのリビングだろう。私はリビングのソファの角に埋まる様に座っているみたいだ。その横にハイドが陣取り『あーん』をしている様だ。


「昔のお前を思い出す。幼い頃、お前は直ぐに熱を出して、その度に俺はお前に粥を食べさせていたな」

「あー。兄さんの性格が、ひん曲がってなくて素直だった幼少期の話だね」

「何か言ったか?」

「いや、何も!」


 美しい兄弟のエピソードを聞いた! 聞いたか兄様! これが兄弟愛だぞ! 私に1度でもそんな事をしてくれた事が有ったか? 無かったよな! それ何処か嫌がらせの嵐だったな! 未だに根に持ってるからな!


「ほう、昔は仲が良かったんか」


 ジィジが茶を飲みながら、繁々と2人を見ている。兄様も同様だった。


「何を言う。今も仲は良いだろう」

「え⁉︎」

「なんだ?」

「いや、何にも!」


 ハイドの答えにアスターは嫌そうだった。かわいそぉ


「グロキシニアよりマシだろう?」

「まぁ、姉さんよりわ。昔から姉さんは恐ろしかったしね」

「アイツは昔からイカれてたからな」


 ベルナール兄弟は昔は長男ハイドと次男アスターは仲は良いみたいだが、長女グロキシニアはちょっと複雑な感じだった様だ。成長するにつれてアスターは2人とも苦手になった様である。

 幼少期の話を続ける2人。ハイドは話すのに夢中になり、手が止まってしまった。私はご飯が貰えなくなったので不満である。なのでハイドからお茶碗とスプーンを奪い取った。


「なんだ、起きてるのか」


 ハイドが覗き込んで来たが、私は無心で手を動かして食べる。これ美味しいな。多分、雑炊みたいなヤツだと思う。味はしっかり付いて居るが、優しい味で胃に優しい感じだ。私は一心不乱に食べ進める。うまうま。


「寝起きで、良く食べるな」


 ハイドは呆れていた。兄様も呆れた表情をしている。


「体が食べ物を燃料に魔力を生成しようとしてるんだろうね。兄さんやリンドヴァルが魔力を注入してたけど、それは体に回しちゃって魔力がまた無い状態なんだと思うよ。だから食べてエネルギーにして魔力を作ろうとしてる」


 へぇー、そうなんだ。魔力が無くて、作る為に一生懸命食べてるのか。だから常にお腹が空いてるのかな


「なんだ魔力が無いのか? かなりやったぞ? アレで足りないのか? 随分と大食らいだな」

「だから全部、体に回したんだって。肉体がボロボロだから、回復に使ったんだと思う」


 アスターが何か言って居るが、認識できなくなって来た。また睡魔が来たのだ。どうして、起きてられないの⁉︎ なんで自分の体なのに言う事を聞いてくれないんだ! 私はスプーンを持ち上げる力も無くなり、お茶碗も手から離れそうになる。それに気付いたらしいハイドは私からお茶碗とスプーンを取り上げた。


「まだ寝るのか」


 呆れた声のハイドだが、またスプーンを差し出されて『あーん』し始めた。私は口を開けて食べた。


「限りあるエネルギーを肉体の回復に当てたくて、他に回さない様にしてるのかもね。起きてるだけで魔力エネルギーって多少だけど消費されるし、寝かせて魔力エネルギーを肉体の回復に回そうとしてるんだよ」


 へぇー、人体って不思議ー


 ◆


 そこから無心で食べていると、いつの間にかコルネリア様達が帰って来ていた。ハイドに食べさせてもらっている状況を見たコルネリア様が大層驚いて居た。


「佳月は起きているのか?」


 ぼんやりしている私を見たコルネリア様は、私が起きているのか疑問に思ったそうだ。ちゃんと起きてますよ!


「半々ですね。半分起きてるし、半分寝てます」

「成程」


 失礼な! 起きてるよ! 全起きだよ! 抗議しよう!


「うぐ⁉︎」


 急いで口の中の物を飲み込んで抗議しようとしたら、急ぎ過ぎたのか口の中を噛んでしまった。痛い!! 


「うきゅぁううう」

「何をしてるんだ」

「うるさい! 口の中、噛んじゃったよ!」


 痛みにより完全に覚醒した。目が一瞬で冴えたわ!

 呆れた顔をするハイドにイラッとしたので、ハイドからお茶碗とスプーンを奪い取り、自身で食べ始めた。



「あぁ、起きたのか佳月」


 コルネリア様が側にちょこんと座って来た。可愛い。


「起きました」


 私は食べるのを辞めて、コルネリア様の方に向いた。何かお話があるのかもな


「まず、最初に佳月、良くやってくれた」

「ありがとうございます」


 褒められたわ。やったね!


「お陰で同盟も結べたし、何より恩も売れた。これで、ここの国とはやり易くなった」

「はい」


 それは良かった。頑張った甲斐があるってものだ!


「そして、この国の国王や王妃が直々に御礼を言って居た」

「マジですか」


 王自ら御礼を言うとは……


「だが、無茶し過ぎだ。流石に肝が冷えたぞ」

「すみません」


 次は怒られた。まぁ、自分でも無茶したなって思うし、お叱りはごもっともなので甘んじて受けよう。

 そして暫く、コルネリア様と話した後、コルネリア様は諸々の手続きやら何やらで疲れているらしく自室に戻られた。リビングに残った面々で雑談をする。


「所で、私、どれだけ寝てた?」


 一回、覚醒したのは覚えて居るがそこから、また結構寝て居た気がする。私はアスターに問うてみた。


「あれから3日寝てたよ。トータルで6日だね」

「よう寝たな私」


 そんなに寝てたんだな。

 そこからリビングに居る面々に、事の経緯を聞いた。


 私が龍を倒して意識を無くした後、私はお城に運ばれたらしい。そしてお城お抱えの医者に診てもらい、暫く安静を言い渡された。

 コルネリア様達は追っ手の都合で出来れば早く出発したかった。私が一時的にだが宝玉を解放してしまった為、それの所為で六花や自国の王様に宝玉の持ち主が特定される事を恐れて早く出発しようとしていたのだ。ここに長く滞在すれば、宝玉の気配を追って六花が来るかもしれない。捕まる訳にはいかないし、龍を倒した人物=宝玉の持ち主だとバレる恐れもある。早めに退散した方が良い。だが私が想像以上に危ない状態だったのでココに滞在を決めたそうだ。


「そういえば外はお祭り騒ぎになっているぞ?」


 その間、街はお祭り騒ぎ。今まで恐れていた龍が居なくなり解放された喜びに溢れて、はっちゃけているらしい。街のあちこちで悪しき龍を打ち倒した私を救世主扱いし、讃えている模様。銅像を建てようとか、教科書に載せようとかの話にもなっているようだ。


「やめてぇえええ!!」


 私は頭を抱えて絶叫。そんなの只の羞恥プレイだ! 自分の銅像を建てられるとか有り得ない! 教科書に載るほど凄い事してない! 本当にやめてくれ!


「それと、【神聖なる織天使(セイクレット・セラフ)】を撃った事で、この魔法を撃てた人物として歴史に名を残す事になった」

「マジで辞めて⁉︎」


 嘘だろう⁉︎ 名前が残るのか⁉︎ それも嫌だ! 私は頭を抱えてソファの上で、のたうち回った。


「こら! そんな格好で、のたうち回るんじゃない! 下着が見えるぞ」

「そんな格好?」


 アスターが怒鳴るので、転がるのをやめて起き上がり、自身の出で立ちを見てみた。


「わぁお」


 なんと私は胸元が大きく開いたネグリジェを着ていた。スカートは短めで露出度がかなり高い。確かにこんな格好で暴れれば下着が丸見えになるわなぁ。


「さて、そろそろ出発せんと不味いじゃろ。儂は運転席へ行くぞ」


 出発の為、ジィジは運転席へ向かった。


「次は【ウエストン】だ」


 次の国はウエストン。そこに居る王族が白い宝具を持っている。本当、どこの国も王族が宝具を持ってるなぁ

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