それは恐ろしき龍
真っ黒な龍が目の前に居る。それは恐ろしい見た目をして居たが、何故か恐怖は感じない。
その龍は何もせずジッと私を見ていた。ただ、ジッと……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ハッ⁉︎」
目を開けると豪華な天蓋が見えた。視線を横に向けると雅やかな部屋が見える。
体を起こそうと力を入れると、体中に痛みが走る。そして出て来る酷い咳
「ゲホッゲホ……うぇー」
咳、つらぃ……。
少し無理をし過ぎたのか、全身に痛みを感じる。それに加え、体中の関節がギシギシ鳴る感覚。もう、無理をするのは辞めようと心に誓った。
起きあがろうと頑張るが、体に上手く力が入らず起きるのを断念した。仕方ないので、寝転んだまま辺りを見る。豪華な調度品、清潔な室内、そして私が寝ているキングサイズのベッド、ここは何処だ?
確か私は龍を倒した後、師匠の腕の中で眠りについた。あ、永眠とかじゃないよ? ただ、疲れていたので自然と意識がストーンっと落ちたかんじ。そして目が覚めると知らない場所だった。
ところで何故、師匠があそこに居たのだろうか? 凄い疑問だ。もしや加勢しに駆けつけてくれたのかな? だが、残念! 既に倒してましたよ! 遅いよ師匠!
そして他のみんなは何処に行るのだろうか? 端末を開き連絡が無いかの確認をするとハイドからメールが来ていた。なので内容を確認する。
《暫く留守にする。暇なら邪龍と遊んでおけ》
……。遊んで来たよ! 但し生死を賭けた遊びだがな!
ハイドのメールにイラッとした。というか、何故ハイドからのメールなのか。私は師匠に連絡入れたのに……。まぁ、師匠は機械音痴なので代わりにハイドに頼んだのかもしれないが……。いい加減、メールの打ち方くらい覚えれば良いのに。
私は影に向かって端末をシュート! 華麗な回転を描き端末は影の中に入っていった。
「いいや、寝ちゃえ!」
まだ眠かったので寝た。用があるなら誰か起こしに来るだろう。
◆
「ゲホゲホゲホ! ゴホ!」
誰かが咽せて居る。いや、違う。これ私が咽せているんだ。
私は自身の咳で意識が浮上した。しかし目が開かない。まだ眠くて目が開けられないのだ。咳はずっと続いていて苦しいのに、なかなか目が開かなかった。
咳をしている為、苦しくて体をくの字に曲げる。すると強い力で体を引き戻され元の状態に戻された。そしてそのまま抑えつけられた。何事だ⁉︎ 暴れようとしたが、強く抑え込まれて動けなかった。
口元に何か当てられて、それを暫く吸うと咳が治まった。咳が治れば体を抑えつけて居た手が離れ、体が自由になる。
「兄さん、ありがとう」
「あぁ」
アスターとハイドの声がした。先程のはアスターとハイドがした様だ。恐らく私を抑えつけて居たのがハイドで、口元に何か当ててたのがアスターだろう。
「うーん」
目を開けて確かめる為、一生懸命目を開けようと努力した。体をモゾモゾと動かして起きようと頑張って居るがなかなか開かない。成程、目覚まし時計をセットしているのに起きられない人はこんな気持ちなのかもしれない。起きなきゃと思うのに、目が開かない。こんな感じなのだろうなぁ。
私がしみじみ思っていると、漸く目が開いた。時計を見ると1時間程しか経っていなかった。よく寝たと思ったのだが、あまり寝ていなかったらしい。いや、ベッドサイドに備わっている日付付き時計の日付が次の日になって居たので1日と1時間寝ていた事になる。良く寝るな、私!
横を向くとアスターが居た。その奥にはハイドが優雅にティータイムをしている姿が確認できた。やはり、この2人だったな。しかし何、人の寝ている側で優雅にティータイムしてるんだ。
一生懸命、体を起こそうとしたが無理だったので断念。仕方なく、寝たままの状態で側に居るアスターに話しかける。
「ヤッホー! 私も、ゲホッ! ティータイムに混ぜ……。ゲホッゲホ。やっぱり、普通の水にするわ。お水プリーズ」
私は側に居るアスターにお水を要求した。しかしアスターはお水をくれない。抗議の視線を寄越すとアスターが私を有り得ないモノを見る目で見て居た事に気がついた。
「メガ萌? 何その目。ていうか、顔。変な顔してるよ」
私が言うと
「随分、早い回復だな」
未だ放心中のアスターに代わりハイドが声を掛けて来た。
「後、2日は寝てると思っていたが」
「そんなに寝れないよ」
人間は、そんなに睡眠を取れる生き物じゃないよ
「3日寝ていたわりに元気だな」
「え? 3日?」
ハイドによれば私は3日寝ていたらしい。通りで体の節々がバキバキと音を立てると思った。3日か……。
「え? 何でそんなに寝てるの?」
「神聖なる織天使を撃って、これだけ元気なら大したものだな」
「あぁ、アレか……」
あの魔法の所為で寝てたのか。ハイド曰く、生命の源である魔力が回復せず意識が戻らなかったらしい。本来ならば、後2日は意識が戻らず眠り続けている筈だったらしいのだが、私は何故か起きた。何でだろうね。
「あの魔法は人間では厳しいのに、良く撃ったよね」
衝撃から復活したアスターに言われた。
「というか、どうして私が神聖なる織天使を使った事、知ってるの?」
私の問いに兄弟2人は呆れた顔をした。腹の立つ事に呆れた顔はそっくりだ
彼ら曰く、私が生け贄に捧げられた時に、私を除いたメンバー全員で白の保持者に逢いに行っていたらしい(この辺りでハイドは私にメールを送って居た)。
そこで白の保持者、第1王女と話したが、同盟を組んで欲しいならば妹を助けてくれと言われたらしい。それが生け贄にされた第3王女【ルアンナ】様だった。
既にかなりの時間が経っていた為、行った所でもう遅いと思い、諦めようとしたその時! 師匠が私からのメールに気付き、私が森に居る事を理解。皆んなは私が王女を助けてくれるのに賭けたらしい。
その事を王女に言うと王女が遠見の魔法を使い、私と邪龍の戦いを見せてくれたそうだ。そして私が神聖なる織天使を使い勝利した為、第3王女を救ったとして同盟を組む事に成功したらしい。
やはり、あの時、戦って正解だった様だ。
しかし、王女の遠見の魔法で私が邪龍と戦っている所をバッチリと見ていた様なので、私が黒い宝玉持ちだと王女様達にバレたらしい。ちょっと困った事になったのだとか。
「まぁ、お前のお陰で王女と同盟結べたから良かったけど……」
「ドヤァ!」
まぁ、結果オーライと言う事で。
「でも肉体は限りなく限界でさ、ボロボロだから暫く絶対安静ね」
「えぇ……デストロイヤー打たれた訳でもないのに」
「アレより酷いから! お前、黒い宝玉も使って、神聖なる織天使も撃ったんだぞ⁉︎ デストロイヤーの比じゃない! いいから安静にしてろ!」
怒られた。解せない。
「ギースとリンドヴァルと話して、お前は暫く戦力から外す事にした。暫くは大人しくしているんだな」
「えぇ……見張りは?」
「俺とリンドヴァル、そしてギースとお前の兄でやる」
「兄様が⁉︎ 見張りとか出来るの⁉︎」
兄様、いつの間に見張りができる様になったんだ⁉︎ 純菜でさへ、かなり掛かったんだぞ!
「ギースと共にだ。見張りのやり方を教えるらしい。それと寝ている時に攻撃される前に、起きられる訓練もするそうだ」
「あー、師匠にやられたアレね」
今は懐かしい、寝ている時に攻撃してくるアレね。攻撃が当たる前に起きる訓練だね。アレを兄様は教わるらしい。頑張れー
「まぁ、仕方ないね。暫くは休むよ」
「あぁ」
自分の体の事は自分が1番分かっている。現状、私は戦うのは困難だ。大人しくしているに限る。
それにしてもお腹空いたな。焼き鳥食べたいんだけど。頑張ったんだし、何か食べ物を貰えないかな? あと、喉も乾いているから飲み物もほしい。
「お腹空いたよー、喉乾いたよー、なんかちょうだい!」
私はそう言うと再び2人は呆れた顔をした。何でだよ。
「黒の宝玉を使ったにしては元気だな。体はボロボロだが、精神は元気という事か? 血反吐を吐き出し、死ぬ程辛い状態だっただろうに……。お前には呆れを通り越して感心させられる」
ハイドに貶されているのか、褒め言葉なのか分からないお言葉をもらった。
「食欲は有るんだな。なら、そこまで心配は要らないかな」
アスターは溜息を吐いた。何故? まぁ、良いや。焼き鳥を要求しよう
「アスター! 焼き鳥食べたい!」
「焼き鳥⁉︎ ダメだから! 先ずは消化に良い食べ物から!」
「えぇえええ!」
焼き鳥は脚下された。何でだよ!
「焼き鳥が良いです。王女の鳥を見た時から焼き鳥が食べたくて仕方ないんだよ」
「お前、なんてモノを見て食べたくなってるんだよ」
アスターは呆れた顔をしながら、立ち上がり何処かに行った。何か取りに行ってくれたのかもしれない。
ベッドサイドにお水が有るのが確認できた。喉も乾いているし、水が飲みたい。今、側にはハイドしか居ないので、嫌だがハイドに頼むか!
「ハイドー、お水取って!」
私は布団をパシパシと叩きながらハイドに頼んだが……急に耐え難い程の眠気が来て体から力が抜け、手がベッドに沈んだ。
「やれやれ……」
そう言い、側に寄って来たハイドはベッドサイドの水を手に取った。そこまでは確認出来た。しかし意識が落ちてしまい水は飲めずじまいだった。
あー、おやすみ〜
どうでも良い【人物設定4】
アスター=ベルナール
髪色:青
誕生日 11/28
階級:メディウム
年齢:24歳
殊技:無し
備考:幼少の頃から優秀な兄と姉と比べられて育った為、兄と姉が苦手。
見返してやろうとと思い鍛錬を積んだが、筋肉が付きにくい体質らしく幾ら鍛えても強くなれなかった。武では無理だと早々に切り上げ、学問に切り替えた。必死で勉強して戦えない者では珍しくメディウムを取り医者となったが、家族からは相手にされず、拗ねて人生に投げやりになっていた所をソフィアに拾われた。
ソフィアを敬愛しており、出来る事なら助けたいと思って居る様だが自分では何も出来ないと判断してコルネリアに着いて旅に同行中




