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神聖なる織天使

 

「【絶望の炎デスペリア・イグニース】」


 黒炎が夜空に広がる。側から見れば恐ろしい光景だ。

 この【絶望の炎デスペリア・イグニース】は炎系魔法と闇系魔法の複合魔法である。かなりの威力で通常のドラゴンは一溜まりも無い筈なのだが、今対峙している龍には何て事無いのか、勢い良く突っ込んで来る。鱗に覆われいるので火は届かないのであろう。


「焼いてもダメ、刺してもダメなら何なら勝てるの……」


 どんな攻撃をしてもダメージをあまり感じていない敵に嫌気が差してくる。いい加減、大人しくして欲しいものだ。私は飛び回り、相手の攻撃を避けながら思案する。

 何度か攻撃しながら、有効打を探す。闇魔法はダメ、系統が同じの殊技もダメ。他の系統の魔法は鱗によって弾かれる。光魔法をチクチク撃ってみたが、ちょっとは効いていた。やはり光魔法か……


 やはり人ならざるモノには人では撃てぬ魔法をぶつけた方が良いのだろうか? あの魔法は人では撃てない魔法と言われているが、歴戦の偉人達は何名か撃っていた人が居たので撃てない訳ではないのだろう。ただ、魔力の問題だ。人間の持つ魔力では撃つ事は叶わないと言われている。歴戦の人は何人か集めたり、生贄を使ったりしたと教科書で読んだが、その方法は無理だ。

 ならば……


「今なら……」


 私はある事を思い付く。この国は龍への絶望と恐怖で染まっている。私の中に有る【黒い宝玉】を一時的に解放し、負の感情を集めてエネルギーとする。それを私の魔力に変換させて人では撃てぬ魔法を発動させようと言う魂胆だ。それならば、恐ろしい程の魔力が手に入るだろう。


 しかし、コレは諸刃の剣。


 黒い宝玉を解放させれば、私への負担は馬鹿に出来ないだろう。本来、黒い宝玉は女性が持てば肉体的ダメージが出る。私は闇の力で制御している為、影響は出ていないが、一時的に解放するという事はその制御を外す事を意味する。即ち、私の体にダメージが来る。どれほどのダメージが来るのか分からない。

 それに黒の宝具を持つ者達にもバレてしまう。


「仕方ないか……」


 小を殺し大を生かす。小は私で、大は生け贄にされた女性達と国の人々。

 結局私は正義のヒーローか……。私は自傷気味に笑う。似合わないなぁ


 光魔法で程よく龍の体力を削り、


「【重力(グラヴィ)】」


 私は【重力(グラヴィ)】を発動させ、龍を地面に落とす。そして一時的に黒い宝玉の制御を甘くする。途端に体に掛かる重圧に私は目を閉じ耐える。何とか持ってくれよ、私の体!


 そして空に向かい声を上げた


「空よ! 星よ! 数多に煌めく天の寄り人よ! 我が声に応え、願いを聞き届けよ!」


 この魔法は人だけで撃つ魔法では無いのだそうだ。空に居る目に見えぬ物達が手を貸してくれてやっと撃てる魔法だと学校で習った。なので、空に向かって【お願い】するのだ。

 学校で習った時は絶対に使わないのにも関わらず、この【お願い】を覚えさせられた。しかもテストにも出た。テストに出るから覚えよう。そんな感えで覚えた【お願い】が今、役に立とうとしている。学校の授業も捨てたものでは無いなぁっと思った。


 私は【お願い】の最中に負のエネルギーを宝玉に集める。これがかなりキツい。肉体は悲鳴を上げている。

 そのエネルギーを魔力に変換する。普通に闇系魔法ならば魔力に変換する事なく、そのままのエネルギーでいいのだが、今から使う魔法は闇系魔法ではなく光系魔法なので、一度魔力に変換しなければならない。

 それが余計に負担になるのだが……。仕方ない事だと割り切ろう


「光を見ぬ者を光で照らし給え。暗き深淵に眠る者を光で照らし救い給え」


 負のエネルギーだけでは足りない為、私の殊技でその辺の闇を黒い宝玉に溜め込み、更に魔力に変換。ついでに龍に纏わりついている闇も拝借しよう。

 ゲホッと咳き込むと同時に血も吐き出した。思ったより辛い……


「世に禍いを齎す(まが)つ者を鎮め給え。世に禍いを齎す(まが)つ者を清め給え」


 空が明るくなり始める。時刻的には夜中なので自然な現象ではない。私の放つ魔法の効果だろう。空から光が降り注ぎ、神秘的な光景となった。そして何処からともなく鐘の音が聞こえて来る。


「世に禍いを齎す(まが)つ者を砕破し給え」


 ここに来て漸く邪龍が重力(グラヴィ)から脱出。途端に5つの首が光始める。レーザーを撃つ気だ。


「今、此処に鉄槌を振り下ろせ!」


 私の魔法が速いか、龍のブレスが速いか……。


「【神聖なる織天使(セイクレッド・セラフ)】」


 空から眩い光が降り注ぎ、大地に衝撃が走る。瞬く間に光が広がり、眩しすぎて何も見えない。何が起きた?

 突如、私に衝撃が来た。龍のレーザーだ。身を守る術など無かった私はモロに食らったが直ぐに止んだ為、大事には至らなかった。

 その直後、轟音が辺りに響く。何も見えないので、何が起きているか全く分からない。誰か状況を教えてくれ!


「ゲホゲホ、ゴホッ」


 咳が出た。口元を手で押さえて咳をしたので、手に血がベッタリ付いた。その血は口から出たモノだけと思ったが、どうやら口からだけではない様子。鼻と目からも出血中の様で、顔の穴という穴から血が出ていた。恐ろしい……。


 私が血と格闘していると、いつの間にか光は消えていた。なので辺りを見回すと……。


「うわぁ……」


 有った筈の森は全て消え失せ、剥き出しになった地面は抉れ、大森林は何処へやら、荒れ果てた大地と化していた。コレはマズイだろう。色んな意味で。

 その地面の一角に1つの龍の首が有った。他の首や胴体はない様だ。これは死んでいると見ていいだろう。

 どうやら私の勝ちらしい。やったね!


 私は最後の力を振り絞り、地面に降り立つ。そして、そのまま地面に倒れ込んだ。


「やったぜー」


 私は空を眺めながら、弱々しい声音で喜んだ。そしてそのまま目を閉じて、意識を手放そうと思ったが……王女が心配になったので、目を開けた。


「【神聖なる織天使(セイクレッド・セラフ)】に巻き込まれてなければ良いけど」


 あの魔法がどれ程の規模で、どれ程の威力かイマイチ分かっていない。撃った私の周りは光で何も見えない状態だったしなぁ。

 もしかしたら巻き込まれているかもしれない。だとすれば間違いなく消滅しているだろう。龍と戦った意味ないな。

 王女達の無事を確認しに行きたいが手足の感覚は消えて、体に力が入らなかった。これでは探しに行けないなぁ


 ぼんやりと空を眺めていると1羽の大きな鳥が、空を飛んで居た。鳥を見ていると、なんだか焼き鳥が食べたくなってきた。力を使い果たして疲れ果てており、お腹も空いているので、食べたくなったと思われる。

 その鳥は私の真上で旋回すると、私の側に降り立った。


「大丈夫ですか!」


 その鳥から王女が降りてきた。その鳥、移動用の鳥だったんだ。食べたいとか言って、ごめんなさい。


「王女様? 無事だったんですね」


神聖なる織天使(セイクレッド・セラフ)】の範囲外だった様で、彼女は無事だった。良かったよ……巻き込んだかと思っていたのだ。


「はい、おかけ様で! 他の女性達も無事ですよ!」


 どうやら他の女性達も無事らしい。

 私はホッと息を吐き、目を瞑る。無事も確認出来た事だし、眠っても良いだろう。

 目を瞑り、体の力を抜くと、何故か体がフワッと持ち上がった。うん? 疑問に思い目を開けると、目の前に王女様の(かんばせ)が広がった。何故、こんなに近くに王女の顔が有るんだろうか?


「あれ?」


 漸く状況を把握した。私、王女様にお姫様抱っこされてるわ。

 お姫様抱っこをした事は有るが、された事は無かったなぁ。本物のお姫様にお姫様抱っこされたんだけど……。そういえば、初めてお姫様抱っこした時も本物のお姫様だった気が……。


 私は現実逃避を始める。兄様が1匹、兄様が2匹……etc


「凄いです! 龍を退治するなんて!」

「え?」


 彼女は私を胴上げでもしそうな勢いで、お姫様抱っこをしたまま振り回す。辞めて!! 今、辛いの! 振り回さないで!


「長年の苦痛から解き放たれました! コレで、もう生け贄は要りませんね!」


 テンションが上がりまくっているのか、振り回すのを辞めない王女。そろそろグロッキーになって来たので、マジで辞めてほしい。


「コレは国を挙げて祝わねば! 貴女をこの国の救世主として!」


 救世主なんて嫌だ! そんなつもりでは無かったんだ!

 後、そろそろマジで下ろしてほしい。色々と出そう。マジで


「佳月!!」


 遠くからコルネリア様の声が聞こえて来た。え? 幻聴かな? こんな所にコルネリア様が来る訳がない。振り回され過ぎて幻聴が聞こえて来たのかもしれない。


「ルアンナ!! その方を下ろしなさい! あまり動かすものではありません!」


 別の女性の声も聞こえて来た。その後、なんだか色々な人の声が聞こえて来て、わちゃわちゃしていた。私の意識はもう落ちかかっていたので、誰がどういう状態だったのか分からなかった。


「佳月……」

「師匠?」


 唯一分かったのは、いつの間にか私を抱き上げていた師匠だけ。あれ? 私、師匠にお姫様抱っこされてない? 師匠のお顔がとても近い。ドキドキしちゃう。


 この辺りで私の意識は暗転した。


どうでも良い【人物設定3】


リンドヴァル=ロベリア=カーディナリス

誕生日 10月30

髪:白銀

肌:褐色

殊技:殊技殺し

階級:ドクトゥス

備考:18歳で六花入りした天才。師は六花最強のベロニカ。久遠とは幼馴染関係にあり、共に切磋琢磨したライバルでもある。名家の出で将来を期待されて来た。魔法が苦手で使える魔法は片手で数えられる程度。

16の時に城勤だった父をイネスに殺され、復讐の為に強くなる事を決意。そして勢いで18歳の時に六花の1人を倒して、その座を奪い取った。

成り行きで取る事になった弟子の事は割と可愛いがっている

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