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パーティーメンバー交代

 

 髪を誰かが触っている。誰だろうか? 私はぼんやりする意識の中、考える。


「なら、安息(レクイエム)の心配はないんだな」


 側で師匠の声がした。なら、髪を触って居るのは師匠だろう。師匠は髪を触るのが好きだからなぁ。師匠は私の頭を撫でると、ついでとばかりに髪を触って来るのだ。

 そういえば、ラミルは師匠が髪の長い女性が好きと言っていたなぁ。もしかすると師匠は私の長い髪を気に入っているのかもしれない。師匠が私の髪を触る理由が漸く分かった気がするわ


「うん、それは大丈夫だよ」


 その近くでアスターの声もした。そうか、ここは医務室かな


「でもデストロイヤーの影響で、体はボロボロだから暫くは絶対安全だよ」

「あぁ」


 デストロイヤー……あぁ、あの薬か。そういえば、体質で効果を遅延させていたのに、体質をOFFにしちゃって薬が回ってしまったんだっけな。


安息(レクイエム)の影響が無いのなら、それで良い」


 師匠が安心した様に言った。とっても優しい声音だ。珍しいな。


「リンドヴァルは、レクイエムの心配をずっとしていたからね。大丈夫だよ。心配要らない」

「あぁ」


 師匠はもう一度、私の頭に手を置く。そして、何かが額に当たりリップ音が鳴り何かは離れた。うん? リップ音? もしや師匠、私の額にキスでもしました?


「可愛がってるなー」

「まぁな」


 私は漸く意識が覚醒した。目を開けて横を見る。


「師匠?」


 師匠が私の眠るベッドに座って居た。やっぱり、先程までのは師匠だった様だ。


「起きたのか」

「うん」


 まだ意識がぼんやりしている私はボーッと師匠を眺める。カッコいいな


「……俺はコルネリア様の所に行く。何か有ったら知らせろ」

「分かったよ」


 師匠はそう言うと、私の髪を触るのを止めて頭をポンポンと叩いた後、私の額にキスをして、医務室から出て行った。


「おう?」


 なんか、またキスされた。さっきのキスで私の意識が完璧に覚醒した。何だ、さっきの? 本当に師匠か? まさか、まだ夢でも観てるのかな?


「起きたの?」

「うん」

「小言、言っても良い?」

「やだ」


 あれでしょ? 体質OFFにした事を言う気でしょ。

 結局、嫌だって言ったのにアスターからは文句を言われまくった。



 ◆


「あの器具、めっちゃ痛かったんだよね」

「大変だったんだなぁ」

「人ごとだな」


 アスターの文句の後に、お喋りをした。あの拷問が酷かったとか、あの器具ヤバイとか、拷問に纏わる話だったが。


 因みに兄様は今後の身の振り方を決める為、リビングでハイドとギースとお話中らしい。強者2人に囲まれた兄様は、とても狼狽えて怯えていたそうだ。頑張れ兄様。強く生きろ!


「まぁ、元気そうで何よりだよ。一応、安息(レクイエム)も打たれてるし……あれ、マジで危険な薬だから」

「だろうね」


 聞いただけでヤバいって分かるもん。


「リンドヴァルが安息(レクイエム)の事、ずっと気にしてたよ。自分の処置をしている時も、『佳月が安息(レクイエム)を打たれた。早く診てやってくれ。俺は後で良いから』って言ってた」

「師匠……」


 ちょっと泣きそうになった。師匠、心配してくれてたんだなぁ。このパーティーは基本、人の心配とかしない冷たい人しか居ないので、師匠が私を心配していたと聞き感動したのだ。


「そろそろ、自室に戻ろうかな」


 結構話し込んでしまった。そろそろ自室に戻って休もう。デストロイヤーの影響で体が辛く、そろそろ限界なのだ。

 ここで休んでも良いが、ここはアスターの自室でも有るので、そろそろ出て行かないと彼にも迷惑がかかるだろう。


「あ、ちょっと待って! 久遠様の咬み傷の手当もしとく」

「あ、忘れてた」


 あの傷、まだ治ってないんだよなぁ……。


 太ももに付いた咬み傷からは真新しい血が流れていた。前は薄皮が張っていたのに、また血が出始めてしまった。いつになったら治るのやら。


「宝玉はバレなかったのか?」


 アスターは太ももに包帯を巻きながら問うてきた。


「多分ね。奴ら私の服を脱がさなかったから、気付かなかったと思う」


 これが久遠ならばバレていただろう。アイツは服を脱がすのが好きだから基本は服を脱がしてから拷問にかける。なので久遠にやられてたらバレてた。


「確かにな」


 共感してくれたアスター。その後は無人島で私とハイドが行方不明になった後どうなったか話してくれた。なので私も白い宝具を見つけた事やハイドと一緒で不服だった事を話した。


 話終えてスッキリした気分で部屋を出て、自室に滑り込む。そして就寝……。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 兄様がパーティー入りした。パチパチパチパチ!


「いつもの様に私抜きで進んでた会議」


 いつの間にか兄様がメンバー入りしていた件について。寝て起きたら、決まって居た。いつも私の居ない所で大事な事が起きるな。タイミング悪いのかな? 日頃の行い?


「まぁ、お前は嫌だろうが仕方がない。彼は行く当てが無いのだ。純菜の代わりだと思ってだな」


 純菜の代わりって……。純菜の階級は【アナズィトン】。兄様の階級は【メディウム】。

 このパーティーでは純菜の階級【アナズィトン】は弱いと認定されていたのに、更に下の者を入れるのか? まぁ、連れて来たの私なんだけど


「勿論、戦力には加算せんぞ」

「役に立たなさそうだからな」


 ギースとハイドが言う。酷い言い草である。その隣で師匠が頷いていた。私の横に居た兄様は若干涙目である


「し、しかし! 私も何か役に立つ筈! 見てて下さいコルネリア様! 必ずや悪しき王を討ち果たし、勝利を!」


 コルネリア様に媚びる兄。因みに兄様には王様の計画を話した (私が居ない時に誰かが話したらしい)。初めは信じて居なかった様だが、話すにつれて思う所があったのか、信じコチラの計画に加担する気になったらしい。

 これにより、パーティーメンバーの交代。純菜というヒロインが1人抜け、兄様というヒロインが1人入って来た。華が減った……

 兄様は空いた純菜の部屋を使う事となった。そして今のままでは使い物にならないのでギースが直々に鍛えるのだとか。

 そして暫くは私とハイドが絶対安静なので見張りが師匠とギースになった。


 ◆


 私達は無事に六花から逃げおせ、人気の無い無人島にて暫しの休憩を取る事に。


「次に向かう場所は決まってるので?」

「あぁ、後で聞いてみると良い」


 兄様をギースがスパルタ教育で鍛えている姿と、海で遊ぶ非戦闘員3名を、見守りながら私は横に居る師匠に問うてみる。師匠は珍しくラフな格好をしている。かくいう私も水着の上にTシャツ1枚という珍しい格好をしている。今日は何だが水着を着たい気分だったのだ。まぁ、黒の紋様が見えたら不味いのでTシャツを着てるけども


「どこぞの国の王族が保持している様だ」

「白い宝具って、色んな国の王族が持ってるんですね」


 兄様は悲鳴を上げながら、ギースに扱かれている。正直、師匠より厳しいだろう。ギースに指南してもらわなくて良かった……


「純菜を恨んでいるか?」


 師匠が問うて来た。いきなり、どうした?


「純菜はソフィア様の状態を知り、居ても立っても居られなかったのだろう。『自分が不甲斐ないばかりに、ソフィア様をあんな風にしてしてしまった』っと。もし、俺が純菜の立場ならば同じ事をするやもしれん」


 師匠にしては珍しく純菜を擁護している。本当にどうしたんだろう。変なモノ食べた?


「純菜の裏切りは仕方がない。起こるべくして起こった事だ。初めに俺達が奪還できていれば起こらなかったかもしれない。まぁ、仮定の話をしてもどうしようも無いがな」


 師匠が何を言いたいのか分からない。取り敢えず、純菜を擁護している事だけは分かったし、初めて砦に侵入した時に私達が助け出せていればっと仮定の話をされているのも分かった。でも、師匠が今まで、この様な事を言った事が無い為、師匠の意図が分からないのだ


「師匠……。急にどうしたんですか? いつもの師匠ならば、どんな理由であれ、裏切りは裏切り。即、切り捨てると思うんですけど」


 珍しくハイドが海で遊んでいる。背中の刺青が丸見えだ。アイツ、絶対安静なのに遊んで大丈夫なのだろうか?


「……。要は悩んで居るならば早く話した方が良いと言う事だ」

「……」


 悩み聞こうか? って事かな? 遠回しな上に分かり難いわ!


「何も悩んでませんよ」


 私がそう言うと腑に落ちない顔をされた。何故?


「純菜の事、何かあるんじゃないか?」

「何も無いですよ」


 私がそう言うと師匠は無言で頭を撫でてきた。最近、子供扱いが加速している気がする。そして、その後に髪を触って来る。やっぱり、この人、髪が好きなんだな。


「ギャー⁉︎」


 兄様の絶叫をbgmに私の髪を触り続ける師匠。



 ◆


 師匠に問われた、その夕方。純菜の部屋を兄用に変える為、コルネリア様は純菜の私物の整理している。私がすると言ったのだが、コルネリア様は自分でしたいと言い、その役割を任さなかった。コルネリア様なりに純菜の事の気持ちの整理を付けたいのだろう。

 しかし片付けの全てをお姫さまに任せる訳にはいかないので、重要そうな物は私がリビングに運び、他の大丈夫そうな物は私が片した。


 ある程度、片し終え、一息付く為にリビングに戻る。リビングに戻るとコルネリア様が純菜の私物を段ボールに詰めている所だった。手伝おうか迷ったが、これは彼女が気持ちの整理を付ける為に自分でしたいと言った事だ。私が手伝うのは違うだろう。

 私はコルネリア様に一言告げてソファに座った。ソファに座ると、アスターが側に来た。そろそろ薬の時間かな


「あ、戻って来てる。そろそろ薬を打ちたいから、そこに寝転んで」

「はーい」


 やはり薬の時間だったらしい。私とハイドのデストロイヤーを打たれた組は1日に1度、この薬を打たねばならない。この薬を打たれると、暫く動けないので注意が必要だ。

 ハイドは既に打ってもらったのか、リビングのソファで寝て居た。ならば、私も早急に打ってもらうとしよう。


 打ってもらい、暫くするとパーティーメンバー全員がリビングに集まって来た。リビングに全員集まると、私とハイドがソファで寝ている為、ソファが足りなくなる。困ったギースが


「仕方ない、ハイドと佳月を重ねるか」


 と言い出した。重ねるって、そんな荷物じゃないんだから……。流石、厳つそうにみえて、実は優しい様にみえて、実際は冷酷なギース。仲間を荷物扱いするとは


「佳月の上にハイドを重ねたら佳月が潰れるから、ハイドの上に佳月を重ねろ」


 まさかの師匠が指示を出した。師匠までもが私達を荷物扱いとは……やはり、このパーティー酷いな


 ギースに持ち上げられ、私はハイドの上に置かれた。お陰でハイドの上で寛がなければならなくなった。ハイドは硬いから寝心地悪いんだけど。

 ハイドの上に乗せられているのだから、かなり密着している。ハイドとこれだけ密着するとか嫌なんだが……しかし、よくよく考えると私の体重でハイドを潰せているし、ハイドへの嫌がらせにはもってこいだ。そう考えると、現状が楽しくなった。

 私はハイドの胸板に頭を預け、コルネリア様を眺める。ハイドはそんな私の体をベタベタと触り始めた。おい、セクハラだぞー。止めたいが、体が上手く動かずされるがままだ。仕方ないので放置した。飽きたら止めるだろう。


 私はコルネリア様から視線を外し、先程見つけた純菜とソフィア様のツーショット写真を眺める。これは私が持つ様にとコルネリア様に言われたので私が持って居るのだ。

 それを見て私は後悔を覚える。私は自分の事で手一杯で純菜に構う時間が、あまり無かった。共に旅した仲間の筈なのに戦う姿すら見た事はなかったし、また一緒に出掛けた事などもなかった。


 もう少し、突っ込んで聞いていれば……


 純菜の様子が可笑しかった時に悩みを聞いてやれば良かった。どんなに煙たがれ様と、しっかり向き合っていれば良かったのだ。後悔が湧いてくる。

 しかし、後悔した所で時は戻らない。ならば、次に会った時に私に何が出来るか考えなければ。


 私は純菜の写真をそっと影に仕舞った。今度会った時に返せる様にだ。


「ごめんなさい」


 私は此処には帰ってこない仲間に謝った。その言葉は助けられなかった事に対してか、向き合わなかった事に対してか、何に対して言ったのか、私にも分からなかった……。

 これが師匠の言う私の悩みだったのか? 師匠は私が自身を責める事を分かっていて私にあのような話をしたのか?


 そんな私をハイドが見ていた。気づいた私はハイドの胸板に頭突きをした。そして、そのまま眠てやった。ハイドの上でな! ざまぁみろ、ハイド!

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