生贄に選ばれました
そしてキャンピンは進むよ、どこまでも!
今日も今日とて走るキャンピン。純菜の離脱や、不穏因子の兄様のパーティー加入など、色々有ったが目的の為、立ち止まる訳にはいかず進み続ける我等。
正直、コルネリア様にはもう少し休憩が必要なのではないかっと思ったのだが、責任ある立場がそれを許さない。一刻も早く白を集めなければならないのだ。
純菜が抜けた穴は大きく、とても大変だ。数少ない女性枠が居なくなったので、コルネリア様の護衛とお世話を一手に引き受けなければならなくなった。
見張りは絶対安静二人組を抜いた師匠とギースが主に行っていたが私達が回復すると、【ギース&ハイド】ペア、【師匠&私】ペアに別れてする事に。兄様は他3名により戦力外通告がなされた為、見張りから外された。かわいそぉ
偶に絶対安静を破ってハイドと本気の喧嘩してみたりした日には……師匠が黙って首根っこを掴みに来た。
やはり気になるのは【一ツ葉】の若君の事。初めて彼の話を聞いた時に驚きのあまり、何故「イネスの所に家紋が有ったのか」っという疑問が抜け落ちていた。気になるのだが、調べる方法を私は持たない為、やきもきする毎日。
そして、あのハイドと荷物よろしく重ねられた事件からというもの、ハイドがセクハラをしてくる様になった。私はその度にアリクイの威嚇ポーズを取り、ハイドから距離を取っていた。ハイドは楽しそうに笑うのだ。何わろてんねん!
辛抱ならず、色々な人に相談したが無駄だった。
「師匠! ハイドのセクハラどうにかしてください!」
「……」
「師匠! まさかの無視!」
師匠に泣きついたが無視され、
「ギース! ハイドどうにかしてください!」
「大丈夫じゃ、じゃれとるだけじゃ」
「ギース! そんな訳ないじゃないですか!」
ギースに泣きついてもダメだし、
「ジィジ! ハイドが!」
「その内、飽きるじゃろ」
「おい!」
ジィジにも相手にされず、
「兄様! ハイドが!」
「大人しくしてたら、直ぐに済むって」
「兄様、今ので世の女性を全て敵に回しましたよ」
兄様は無責任だし、
「メガ萌!」
「無理、諦めて」
「頼りにならない!」
メガ萌は頼りにならなかった。これ、一体どこに苦情を入れれば良いのだろうか? コルネリア様に言えば収まりそうだが、コルネリア様はまだ幼いのでセクハラの事とか言えないし。
誰も助けてくれない。セクハラ被害を放置とか酷い職場環境だな。これが社会の闇なんだな。こうやって女性は泣き寝入りするしかないんだ。そりゃ、純菜だって出ていくよ。
「は⁉︎ 純菜が居なくなってから私に来たって事は、もしかして私って純菜の代わり?」
嫌な事を思いついてしまった。なんて、男だ! もう滅する他ない!
私は医務室に駆け込み、アスターに自分の推理を愚痴った。
「違うよ。純菜の代わりなんじゃなくて、純菜がお前の代わりだったんだよ」
「え?」
それも酷くない? このパーティー大丈夫か? 滅する?
「お前がお子様だから、兄さんもリンドヴァルも手を出さなかったんだ。だから、その辺に居た純菜に行ってたんだ」
「わーお」
やっぱり、このパーティーはヤバいって改めて認識したな。後、私、お子様でよかったよ。純菜ゴメンな!
「その辺に居た純菜……って誰でも良かった感じ?」
「うん」
「うわぁ……」
ドン引きした。アイツ、やっぱり女の敵だよ。もう滅した方が良いって! 世の中の為に!
「でも兄さんが『そろそろ良いだろう』って言ってたから、その所為かも。だから、最近、兄さんが構ってるんだと思う」
「良くないよ!」
何だよ。何が『そろそろ良い』だよ! 何も良くないよ!
「純菜がお前に同情してたよ。お前は将来大変だろうなって」
「純菜が? 何で?」
同情されてたの?
「純菜はその辺に居たからだけど、お前は兄さんのお気に入りだから、将来的にドギツイ事をされると思うって。兄さんって玩具認定した人にはエグい事するから」
「アイツ、滅そうぜ」
何で仲間内に警戒しなくちゃいけない奴が居るんだよ! お気に入りって何だよ! あと、玩具も何⁉︎
「純菜はさ、お前に嫉妬してたんだよ」
「え? 何で? 私がハイドのお気に入りだから?」
え、純菜、もしかして……恋愛的な感情をハイドに? おぉ! ラブな気配がするぞ!
「その件に関しては絶対にない。それに関しては同情しかなかったみたい」
「それはそれで辛い」
「お前は強くてさ、頼りにされてただろ? 同じ女なのに、どうしてココまで違うんだって嘆いてたよ。純菜はお前に嫉妬してたんだよ」
「それもそれで辛いな」
仲間に嫉妬されてたのか……。てか、本当に心の纏まりないな、このパーティー。みんな、心が明後日の方向を向きまくってるよ。誰1人として揃ってないよ。みんな同じ方向を見ようよ!
こんな感じでアスターとのお話は終わった。
医務室から出るとハイドと遭遇。ハイドにアリクイの威嚇ポーズを取りながら後退すると、ハイドは肩を震わせて笑って居た。そこで気付いた。『私、ハイドに遊ばれてるな』って。だって面白そうにするんだもん。絶対に遊んでる。断言できる! 私が刃向かってきたり、斬りかかってきたり、威嚇ポーズを取ったりするのを楽しんでる。
私はハイドのセクハラを深刻に考えるのを止めた。アイツ、遊んでるだけだったわ。考えるだけ無駄だったわ。
◆
そんな毎日を過ごす事、数日が経過。私達は白の宝具が有るとされる国【エスタス】に到着。そのまま一息に王都まで向かう。
エスタスの王都は、王都なのに何故か活気がない。皆、家に閉じこもり、窓もドアも硬く閉ざしている。開いている店も無く、街全体が静まりかえっている。本当に王都なのか怪しい
「何か有ったのか?」
「分かりません。一度、聞いて回ってみますか?」
コルネリア様も怪訝そうにしている。
「そうだな。聞き込みでもしてくるか」
という事で、私と兄様が聞き込み調査に。他のメンバーはキャンピンにて作戦会議という名のお留守番。面倒ごとを押し付けられた……。
そして、何故、私と兄様なのか。
「じゃ、私は向こうに行って来ますね。兄様はあっちに」
「何故、俺がお前に指図されないといけないんだ! 俺は思ったまま動く」
兄様は私に吐き捨てる様に行って、何処かに行ってしまった。久しぶりに見た兄様の私を見下す目。若干の懐かしさを感じる
最近、普通の兄弟らしくなれたと思っていたのだが、私の勘違いだったらしい。兄様は兄様だった
気を取り直して、私は街の調査に向かう。暫く歩いて居ると人混みを発見。私はそこに向かう事に
「あの〜、すみません。話を……」
「この子で良い! よし、これで丁度100人だ」
兵隊に声を掛けると、何故か引きずられてトラックのコンテナの中に積み込まれた。何事?
トラックのコンテナの中には、うら若き乙女が何人も居た。人混みの中、堂々と人攫いでもして居るのか? それなら随分と肝の座った誘拐犯である
「よし! 時間が無い。出発しろ」
兵の人が声を上げると、トラックは発車した。
「イヤー!! 私の娘を返して!」
「私にはあの子だけなの!」
「俺の娘を連れて行くな!」
後ろから色々な人の悲痛な叫び声が聞こえて来る。マジで人攫いなのか?
コンテナ内に居る娘達は皆、俯き啜り泣いていた。
「皆んな、悲観しないで。私達は選ばれたのよ」
1人、身なりの良いお姫様みたいな人物が、ここに居る娘達を元気付けようと声を掛けていた。それを聞いた娘達は皆一様に首を横に振り、「死にたくない」と繰り返し言っていた。
空気読めない系女子の私は思い切って、身なりの良いお姫様みたいな人物に声を掛けてみた。
「すみません、コレは何事ですか? 今日、というか、さっきこの街に来たばかりで、状況を理解してないんですけど……」
勇気を出して、一生懸命に女の子達を励ましているお姫様 (仮)に問うてみた。すると、かなり驚いた顔でコチラを見るお姫様 (仮)
「貴方、越して来たの?」
「いいえ、ただの旅人です」
「まぁ⁉︎」
お姫様 (仮)は驚いた声を上げ、目を見開き、指をコチラに向けて来た。コラ、指を人に差したらダメって教わらなかったのかい?
「なんて事⁉︎ 直ぐに戻らないと……。でも、もう時間がないし」
「取り敢えず、お話聞いても良いです?」
「そうね」
お姫様 (仮)は丁寧に教えてくれた。
このコンテナに積まれた女の子達は、この国を騒がす龍への生け贄らしい。10年に1度、100人の生け贄を捧げて、悪しき龍の怒りから逃れて来たのだと言う。今が丁度、10年目なので、コレより邪龍に供物として生け贄を捧げに行く所なのだ。
その悪しき龍は頭を3つ持ち、巨大な体躯、恐ろしく鋭利な牙を持つ、最強の龍なのだとか。その龍はとても強く何度も討伐しようとしたらしいが、ドクトゥスの階級の者達が束になってかかっても勝てない相手だと言う
「申し遅れました。私はこの国の王女【ルアンナ】と申します」
「ご丁寧にどうも……。私は【三ツ葉 佳月】です」
王女様だった! お姫様 (仮)じゃなくて、本物のお姫様だった! 私、何気に王族との遭遇率高いなぁ
この王女様は第三王女らしく、生け贄筆頭らしい。王女なのに生け贄にされるんだね
「申し訳ありません。コチラの手違いで、貴方を巻き込んでしまって……。でも、もう引き返せないのです」
という事で、関係ない私も生け贄に任命された訳である。まぁ、喰われてやる気は無いので逃げても良いのだが……。まぁ、成り行きに任せるとしよう。
こうして、生け贄 (仮)として私は森にコンテナで運ばれるのであった
あ、師匠に「生け贄に選ばれました」って連絡しとこっと!




