わたしって、ほんとバカ……
「で、話とは何だ妹よ」
兄様を部屋に呼び、お話をする。内容は勿論……
「一ツ葉の若君について」
兄様なら何か知ってるかもしれないと思い、問うてみたのだ
「……。一ツ葉の若君か。確かお前が小さい頃に居なくなったな。それがどうした?」
何だか変な感じだ。兄様とこうして話すなんて。家に居た頃には考えも沸かなかった。それに、いつの間にか兄様は私を見下す感じではなくなっていた。何時もなら鼻につく感じに言って来るのだが、今日は大人しい感じだ。何か心境の変化が有ったのだろうか?
まるで普通の兄弟の様で変な感じなのである。
「実はですね」
私はイネスに会った時に発見した【一ツ葉】の家紋について兄に話してみた。すると……
「なんだ、聞いてないのか?」
兄が何時もの様に下に見る様に言って来た。さっきまで普通の兄弟みたいで良い感じだったのに、いきなり何さ
「俺も最近知ったんだが、【一ツ葉 アキラ】は花弦のNo.2だ。何でも一族に愛想つかして家出した所を、とある人に拾われたんだとか」
なん……だと……。
という事は、一ツ葉の若君は誘拐や失踪では無く、自主的に行方をくらましたという事か! しかも花弦かよ!
「し、ししょー!」
詳しく聞く為、情報を持ってそうな師匠に聞く事に。私は得意げな表情で語り続ける兄を放置し、師匠の居るであろうリビングに突撃する。こんな事なら、最初から師匠に聞いとけば良かった!
リビングに突撃したが、師匠は居なかった。代わり酒を飲んでいるギースと、ソファで横になり寝ているハイドが居た。
「リンドヴァルなら居らんぞ、アスターの所じゃ」
「どうも!!」
ギースが師匠の行方を教えてくれたので、私はアスターの所に向かった。そしてアスターの自室 兼 医務室にノックもせず突撃。
「お前! 今、治療中だ! リンドヴァルは服着てないんだから、出て行け!」
私が慌てて室内に入ると、半裸の師匠と、片手に変な機材を持ったアスターが居た。
「失礼しました」
まだ治療中だったらしく、私はすごすごと部屋から退出した。師匠の半裸見ちゃったぜ! 良い体してますな!
師匠がダメだったので仕方なくリビングに居たギースに尋ねてみる事に。ハイドは寝ているので除外だ。
「と、いう事でギース! 聞きたい事があります! ゲホッ、ゲホッ」
勢いつけすぎて噎せた……。
「何じゃ、藪から棒に」
「【一ツ葉 アキラ】って知ってます?」
私は直球に聞いてみた。因みに【一ツ葉 アキラ】とは一ツ葉の若君の事である
「あぁ、花弦No.3か」
「あれ? さっき、兄様は花弦No.2って言ってた」
あれれ、おかし〜ぞ? 兄様と言ってる事が違うじゃないか
「アイツがどうしたんじゃ?」
「私の親戚なんですけど……結構前に行方不明になってまして」
「あぁ。アヤツ、お前さんの親戚だったのか!」
「はい」
ギースから色々聞き出せた。一ツ葉の若君【アキラ】は花弦のNo.2。ギースが城を出るまではNo.3だった。番号が2番になっているのは、現在の総力戦にて前任の花弦No.2が亡くなった為にアキラが繰り上がったと思われるそうだ。因みに前No.2は味方側だったらしいよ。
アキラの殊技は【光を操る】で私と対極に位置する殊技を持つ。そして剣の腕もかなり有り、魔法も得意だと言う。次の六花は彼だと言われて居たそうだ。
「私とどっちが強いと思います?」
もしかすると、この先、戦う可能性が有る。私と対極の殊技を使う彼に勝てるのか?
「何事もなければお前さんが勝つ……が、それは殊技を抜いた魔法と剣の腕の話しじゃな。殊技が加われば分からん。殊技での戦いは相性じゃからなぁ。お前さんと真逆の殊技でどうやるか……検討もつかん」
「マジかー」
戦いたくないなぁ。まぁ、そのうち否が応でも戦う事になるだろう。心積りだけはしておこう。
「所でハイドは生きてるの?」
ソファに横になり、ピクリとも動かないハイドの側により、聞いてみたが本人から返事がなかった。唯の屍の様だ。私はちょっと心配になり、胸に耳を当てて心音を確かめた。
「ちゃんと音してるわ」
生きていた様だ。それにしても、心配になるグッタリ具合なのだが……ハイドがコレ程の状態になるとは、グロキシニア恐るべし!
「お前に構ってやれる余力はない。遊びたいなら、他所に行け」
ハイドが私の頭を押して引き剥がして来た。あれ、嫌味を言える元気はあるのか! なら思ったより元気じゃん。心配させるなよ!
「はいよー」
私は返事をしてハイドから離れて空いているソファに座る。そしてホッと一息。
「疲れたわー」
もう寝たい。早く手当の順番回ってこないかなぁ。
「お前さん、デストロイヤーを打たれて疲れたで済むんか。どんな体しとるんだ」
「へ? 何その強そうな名前」
「お前さんデストロイヤー知らんのか」
デストロイヤーとは! 私とハイドが打たれた、体を壊す薬剤の事らしい。それを打たれてハイドは今、グッタリしているのだ。なのに私はピンピンとまでは行かないが、多少のダメージで済んで居る。それをギースは呆れているらしかった。
「聞けばハイドより先に打たれておったんじゃろ? なのになんで、後に打たれたハイドがこの状態でお前さんは元気なんじゃ?」
「私、すごいな」
あのハイドが動けない状態になる程の薬なのに、私は全然動けて居る。私、凄すぎないか? いや、どんな体の構造してるんだろうな?
「お前、それ一族の体質だろ? お前が凄い訳じゃないぞ」
「あれ? 兄様」
しれっとリビングに居た兄様に呆れられた。私が凄い訳じゃなかったらしいわ。それより気になる事を言って居るな。一族の体質とは何だ?
「一族の体質?」
「お前知らないのか?」
兄様は私を凄いバカにした様な態度で、上から話して来た。凄いイラッとしたが私は耐えた。偉いぞ私!
「俺達の一族は血中に入った異物を『遅延』させられる体質なんだよ」
兄様の説明によると、私達の一族は血中に入った異物の効果を魔力を使って遅れさせられる体質なのだそうだ。まぁ、行き着く先は同じらしいが。
例えば即死の猛毒を喰らうとする。常人ならその毒が体内に入って直ぐに死ぬが、私達の一族は毒の効果を遅らせさせられるので、死ぬまでに時間が出来る。まぁ、その間、毒で苦しみ続けるらしいけど。苦痛なんかもゆっくり来るそうだ。
あくまで『遅延』なので結局最後には死ぬので、そう良い体質でもないらしい。
「まぁ、それまでに処置したら助かるけど」
「へぇー」
毒とかだと、死ぬまでに処置したら助かる場合もあるそうだ。
「お前がデストロイヤーを打たれて、まだ元気なのは遅れて効果が来てるからだ。行き着く先はハイド様と同じだよ」
「マジか」
じゃあ、私もハイドと同じ状態になるのか。
でも、この体質で良かった。でなければ、牢屋に居た段階でハイドと同じ状態になり、敵船から脱出は困難だっただろうしな。遅れて着てくれて良かった!
「まぁ、普通に風邪薬とかにも効いてしまう体質だから、不便なんだけどな」
「薬にも効くの⁉︎」
それは困るな。風邪引いた時に、薬がゆっくり効いたら意味ないじゃん!
「ON/OFF切り替えられる様になってるんだよ」
「そうなの⁉︎」
なら安心だな!
「ていうか、そんな大事な事、教えておいてくれないと困る!」
両親も誰も教えてくれなかった! こんな大事な事、教えてくれないと困る!
「何言ってるんだ。母様が説明している時にお前も居たぞ」
「嘘⁉︎」
「嘘じゃない。あ、でもお前、ドラマに夢中だったから聞き流してたかもな」
「何やってんの私!」
何、ドラマに夢中になって聞き流してるんだよ、私! こんな大事な事を聞き流すなよ! てか、母様そんな大事な事、ドラマかけてる横で話さないでよ!
「そういえば、アキラもそんな体質だったな」
寝て居たハイドが、話に入って来た。寝とけよ。
「そうじゃな。あれはお前さん達の一族の体質じゃったのかー」
ギースも知ってたんだな。まぁ、アキラも一族の人間だし、その体質でも可笑しくはないわな
「所で、これどうやってOFFにするの?」
兄様に聞いてみた。凄い見下されたような顔をされたので、イラッとしたが耐えた。私は大人だからな。
それから兄様に上からモノを言う感じに教わった。かなりイラついた。
漸く分かって来た頃、
「佳月……。俺は終わった。話があったのだろう? 聞こう」
「もう良いです。解決しました」
治療を終えた師匠がやって来た。後ろにはアスターも居る。漸く順番が回って来たらしいな! 早く終わらせて寝よう!
「何の話をしてたんだ?」
アスターが興味ありげに聞いて来たので、私とアキラが親戚だと話した。
「あー、成程な。だからお前が風邪を引いた時に薬が効かずらかったのか」
「風邪? あぁ、あの随分長引いた風邪か」
結構昔に寄った廃遊園地で雨の中、動き続けた所為で翌日には熱をだして、暫く寝込んだ時の事を言っているらしい。あの時、アスターが何度か私に薬を打って居たが、効き目が鈍く中々熱が下がらなかったんだっけな。成程、今に思えば一族の体質の所為だったらしい。
「成程。あの苦しんだ日々は、この体質の所為だったんだね。あ、こうやって外すのか!」
私は体質をOFFにしてみた。出来る様にしておかないと、いざって時に困るしな。また前の様に熱が長引くのはゴメンだ。
「え、お前、今外した?」
兄様が真顔で聞いて来たので
「うん、外しましたよー。案外、簡単なんですね」
これを言うとリビングが静まり返った。え、何ごと?
「お前はバカか?」
先程まで寝て居たハイドが起き上がり、ドン引きの表情で私を見ていた。ハイドのそんな表情、初めてみたよ。周りのみんなも同じ様な表情をしていた。師匠だけは額に手を当てて天を仰いでいた。え、何事?
「は? ゲホ、ゲホ! ゴボォ!」
ハイドの暴言に言い返そうと思った瞬間!! 私は勢いよく咳き込み、その場に倒れこんだ! そして藻搔いて苦しんだ。
「当たり前だろ! お前、今、デストロイヤー食らってるんだぞ⁉︎ それを体質で遅らせてたんだ! OFFにしたら、遅らせた分が一気に来るに決まってるだろ⁉︎」
目をひん剥いて怒鳴るアスター。成程、体質をOFFにした所為で、デストロイヤーが体に回ってしまったらしい。
そうだった。私、今デストロイヤーを打たれてたんだった! そして、それを体質で遅らせてたんだった! 今OFFにしたら、そりゃあ、こうなるわな。なんで思いつかなかったんだ自分。
「今、処置したら、まだそこまで酷い状態にならなかったのに! まだ手の施しようがあったのに! バッカじゃないの⁉︎」
物凄く罵って来るアスター。君がそんなに騒いでるの初めてみたよ。しかし自分でもバカな事をしたなと思う。なんで気付かなかったんだろうね……
そして暫く苦しんだ後、私の意識は暗転しました。




