優しい妹で良かったね
師匠はかなり酷い状態であった。体のあちこちには切り傷と打ち傷、火傷の跡や抉られた跡まで有った。それに指の爪も所々無い。相当酷い扱いだったらしい。絶対、かなり痛い。私への拷問が、どれだけ可愛い物だったか分かった。私も痛かったけど!
「師匠、大丈夫ですか? 回復魔法使いますか?」
「……回復魔法は要らない。お前も魔力が限界だろう?」
師匠にはお見通しらしい。確かに私の魔力は底を尽きかけて居るが、少しくらいなら問題ないのだが。
「自分に使え」
辛そうな師匠を置いて私が使うのは気が引ける。しかし師匠は引き下がらなかったので、使うのを断念した。
「ほれ、歩け! ここから合流の場所まで少しあるぞ」
「はーい」
私達は立ち上がりキャンピンと合流する場所まで向かう。かなり辛そうな師匠に肩を貸してあげる。ハイドは知らん。自力でどうにかしてくれ。
私が見捨てたハイドは兄が肩を貸していた。ハイドは初めコイツ誰だ? みたいな顔をしたが、何も聞かず肩を借りていた。兄様の事、誰も何も聞かないんだね
「モンスターじゃ!良し、戦える者は前に出よ!」
誰も居ねーよ。100歩譲って兄様くらいだよ。私も師匠もハイドもボロボロなんだよ。というか私は魔力が無い
「ギース……。俺は無理だ」
ハイドが珍しく根を上げる。
「俺もキツイ」
そして師匠も……。なので私も!
「すみません、ギース。体が痛くて、それどころじゃありません」
嘘は言って無い! 体痛いもん!
「なんじゃ……。仕方ないの」
「そこに兄様が居ります。一応【メディウム】なので、それなりには戦えるかと」
「佳月⁉︎ お前!」
メディウムでは話にならないという事で結局はギース1人で戦う事に。メディウムで話にならないとか、やっぱりこのメンバー凄いな。
その間、私達は簡易的な手当てをする事に。師匠の手当ては終わっていたので、次はハイドだ。ハイドの手当をして気付いたが、ハイドは師匠より状態が酷かった。なんか、後回しにしてゴメンな。申し訳なくなったので、回復魔法を使ってあげた。少しは楽になれば良いけども。
ハイドの手当てが終わると次は私の番だった。私の手当は師匠がしてくれる。
「イデデデデ! 痛いです、師匠! マジで痛い! 拷問された時より痛い! イタッ! うわぁああああっ!」
「手当てしてるだけだ。大人しくしろ」
「抉られた所、手当てしてるだけなのに、何でもう一度抉ったんですか⁉︎ 見てくださいよ! 止まりかけてた血が更に出てきたじゃないですか! イタッ! もう、ストップ! ストッププリーズ! ちょっと⁉︎ 久遠に噛まれた傷、薄皮張ってたのに、また血が出てきてるじゃないですか!」
「それは、俺じゃない」
師匠に私は手当されているのだが、いかんせん雑い。血を拭くのに力を入れて抑えてくれたり、何故か抉れてる所に指を突っ込んでみたり、手当てと呼べない手当てが続く。滅茶苦茶、痛い。
「五月蝿い。リンドヴァル代われ」
ハイドにバトンタッチ。コイツに手当てされるの、師匠より怖いんだが大丈夫なのか?
「思ったより上手い」
「当たり前だ。不器用なリンドヴァルと一緒にするな」
流石、医者を弟に持つハイドだ。手当ての仕方を弟から聞いていたのか、手早く完璧にして見せた。弟同様、手先は器用らしい。
「行くぞー!」
手当を終えた私達に声を掛けて来たギース。流石というべきか、私達が手当てをしている内にギースはモンスターを倒し終えていた様だ。
◆
暫く歩くと一際広い場所に出た。
「おぉ! 無事じゃったのか!」
「お帰りなさいませ!」
クレマチスのジィジの殊技【光化学迷彩】が解けて、キャンピンの姿が現れた。そして、ジィジとアスターが出て来た。この2人に合うのは、かなり久しぶりな感じがする。
感動の再開もそこそこに、私達は急いでキャンピンに乗り込み、この場を離れた。
初めにコルネリア様を医務室に連れて行き、アスターに診てもらっている。私達はその後だ。
順番待ちをしている間、私達はリビングで寛いでいる。因みに成り行きでキャンピンに乗った兄は気まずいのかソファの端っこで、借りて来た猫みたいに大人しくしている。面白い
「佳月、安息を打たれたが、大丈夫なのか?」
師匠が問うて来たので、兄様から視線を外し師匠に向き合った。
「あぁ、あれはですね……」
私は簡単にレクイエムを受けた時の説明する。すると師匠は納得してくれた。
「お前は魔法が得意だったな」
「はい! なので魔法はお任せあれです!」
師匠はいつもと同じ様に私の頭を撫でてくれた。師匠に頭を撫でてもらうのは嬉しいのだが少し複雑だ。最近、子供扱いが加速している気がする
「しかし、良く脱出できたのぉ。正直、無理だと思っておったから、リンドヴァルに逃げたと聞いた時は大層驚いたわい」
「俺もだ。お前が拷問に耐えられる筈は無いと踏んでいたのでな。宝玉は諦めた」
「誰も助けてくれる気無かったんだね」
分かって居たけど酷いな。下手こいたら見捨てる気満々じゃないか。気をつけないと……。
このパーティー、戦力は凄いが、チームワークは皆無だな。
「それより、アレはどうする」
アレとは兄様の事だ。呼ばれた兄様はビクっと肩を揺らし、怯えた表情をしていた。そんなに怖がらなくても
「巻き込んじゃってさぁ。どうすれば良い?」
「捨てて来い」
「戦力にはならなさそうじゃしな」
「捨て駒にもならないだろう」
皆んな酷い! 酷い言い草だ。流石の兄様も涙目だ
「ま、まぁまぁ。これでも一応は兄弟なんだよ。愛着? はあるんだよ。まぁ切り捨てろと言われれば簡単に切り捨てるけど」
「酷い妹だな!」
兄様抜きであーだこーだ言い合いしていたが、結局決まらず仕舞いだったのでコルネリア様の指示を仰ぐ事に。
話終えた辺りでアスターがリビングにやって来た。コルネリア様の健診が済み、他の者達を呼びに来たのだろう。因みにコルネリア様は自室に戻られて休まれている。
「次は誰を診る?」
アスターが問う。その問いに答えるべく、私はリビングをグルリと一周見渡す。ギースはタイツが多少破けているものの無傷、師匠とハイドは大怪我、私も大怪我。でも1番酷いのはハイドだから、ハイドから順に師匠で私で良いだろう
「私が1番マシだから後で良いよ。後、兄様にも聞きたい事が有るし」
師匠は私を先にと渋ったが、兄様と先に話すと言うと引いてくれた。順番は私が言った通りになった。ハイドが1番で師匠が2番目、最後が私だ。
ハイドは、妹のグロキシニアに、こっ酷く拷問を食らったらしい。表面は大丈夫でも内側は相当きてるとか。途中で吐血までしていた様だ。妹コエー。
良かったな、兄様! こんなに優しい妹で!




