脱出成功!
端末が震えたので端末を確認。ギースからメールが来ていた。珍しい
内容は「甲板にて待つ」だった。甲板って何処にあるの?
ギースはもしかして助けに来てくれたのだろうか? いや、ギースは良いおじいちゃんに見えるが根は冷酷で他者を簡単に切り捨てられる冷たい男だ。私を助けに来たのでは無くコルネリア様を助けに来たのだろう。私は目的ではない筈
そう考えると、自力で脱出して正解だったな。あのパーティーの戦闘員は殆どがドライなので、助けは期待しても無駄だった筈だ。悲しいパーティーだな
「ゲホッ」
肺から何か込み上げて来る感覚。早くギースと合流した方が良い。私が使い物にならなくなる前にコルネリア様だけでも託さねば。
うん? 私? 私はいざとなったら兄を盾に逃げるから大丈夫
◆
私達が潜んで居た場所から甲板は直ぐ近くだったので直ぐに着いた。着くと既にギースが居た。辺りに兵が転がっているのでギースが倒してくれて居たのだろう。ギースの近くには師匠とハイドも居た。2人とも座り込みグッタリとしている。
「ギース……助かりました。私、心身共に疲弊しており、いつ倒れるかという所でした」
「うむ、御苦労であった。お前が牢から脱出したと聞いてな。流石というべきか」
「いえ、そんな事は……。師匠達を置いて来てしまいましたし……。それよりギース? 何ですか、その格好は?」
目の前に居るギースは驚きの格好をしていた。彼の格好は全身黒のタイツだったのだ。そりゃ、驚きである。
「何って……。お前さんが、前に『鎧は隠密には不向きですね』っと言っておったから、隠密に向いている服装をしたまでじゃ」
「……。いや、隠密に向いてるって……。全身タイツがですか?」
バッキバキの腹筋、体のラインが丸見えの全身黒タイツ。側から見たら変態以外、何者でもない。これを綺麗なお姉ちゃんが着てたら鼻血ものだが、年老いたお爺が着ていたら犯罪感半端ない
「どこかの漫画で描いてあった」
「際ですか」
もう何も言わないでおこう。
「う〜ん……。ここは?」
「あ、兄様、おはよう。良い夢見れた?」
兄様覚醒。
「お前、いつまで俺を連れて行くんだ。そろそろ解放しろ」
兄様は自分の置かれている状況を認識するや否や私に解放を要求して来た。図々しい兄だなぁ
「別に良いけど……。兄様は裏切り者扱いだから、戻れば捕まって拷問か殺処分か牢屋行きかじゃないです?」
「……」
そう、兄様は裏切り者扱いだ。ならば私の言った通り情状酌量の余地無く牢屋行きか殺処分かだろう。
「お前の所為で誤解された!」
「そうですね。だから、ここまで連れて逃げてあげたんですよ。私も悪かったと思ったから」
「おい、そろそろ先に進むぞ? ここで立ち止まれないだろ?」
私達、兄弟が言い合いをしていると、震えが収まり元気になったコルネリア様が先を促して来た。すみません……。
ギースにこれからどうするのか問うと『小舟で逃げる』と言った。どうやらギースはこの小舟で船に接近し侵入したらしい。その小舟は甲板の上に乗っていた。ギースはその小舟を海に落とすと、そこに乗り込む様に指示する。
「近くの島で合流予定じゃ! はよ、行くぞ!」
ギースは師匠とハイドを軽々と担ぎ上げ、船を飛び降り、小船に乗り込む。そんな勢いよく乗り込んで、小舟は壊れないのだろうか? 疑問だ。
「佳月!」
「分かってます! 兄様先に行って!」
「うわぁああ⁉︎」
「コルネリア様、失礼します!」
ギースに急かされ、私は兄様を蹴落としてコルネリア様を抱き上げる。遠くから声が聞こえてくる。この声はカミルかラミルだ。もしカミルに見つかれば殊技殺しにより脱出を妨げられる!早く行かねば!
抱えているコルネリア様に衝撃がない様に、怖がらせない様に、慎重に降りなければならない。なので殊技で羽を作り、飛んで降りた。
小船に乗り込むと、コルネリア様を慎重に下ろして、椅子に座らせる。
「行くぞ!」
「はーい」
みんなが乗り込んだのを確認すると、ギースは船を動かし始めた。しかしこのまま航行したら、敵船に小舟が捕捉されるかもしれない。今は日中なので辺りが明るく、直ぐに捕捉されそうだ。それにレーダーとか使われたら、それも厄介。
見つかって砲撃とかされたら堪らないからな……。日中だし、光の屈折を利用した姿眩ましでも使用しようかな。アレならレーダーも遮断出来るし。でも、アレ、私の闇と対極の、光魔法だから疲れるんだよねー。でも、仕方ない。安全に航行する為だ。
私は光魔法を使い敵船から見えない様にする。
「おぉ! 流石、佳月じゃな! これなら見つからんかもしれん」
「これ、魔力消費が激しいんで、ナルハヤでお願いします!」
この魔法を継続していると、他に割く余裕がない。師匠の手当とかしたいのだが、今は無理だ。すまん、師匠! 後でします!
あと、コレ思ったよりシンドイな! ギース速く!
◆
それから数時間後、小舟はとある島に着いた。私は漸く魔法を解いた、ここまで一応、光の屈折魔法を展開し続けて来た為、魔力が空に近い。途中でこの魔法を停止しても良かったのだが、ヘリとかドローンとか偶に飛んで居たので、念の為に張ったままにしていたのだ。お陰で魔力をめちゃくちゃ使ったよ……。
「まぁ、脱出成功じゃな」
「そうですね」
船を降りて、辺りを見回すギース。私も船から降りて、コルネリア様に手を貸して船から下ろした。
「待っておれ、今ジジイに連絡してくる」
「貴方もジジイですよ」
ギースは端末を弄り始めた。その間に船の中でグッタリしている師匠の元に寄り、軽く手当する。師匠は目を瞑りされるがままになっていた。これ生きてるのか? 心配になり耳を心臓に当てて生死の確認を取ると師匠に額を叩かれた。生きてる、勝手に殺すなっという事らしい。
私が逃げた時より師匠の傷が酷い事になっている。私が逃げた後にまた拷問を食らったのだろう。ラミル辺りかな? あの人、師匠に執着してはるから……
ハイドは師匠ほど酷くなかったが師匠のとばっちりを受けたのか先程より酷い。しかし、師匠の方が何倍も酷い為、取り敢えずハイドは放置に決め師匠の手当をする。
師匠の手当をしていると連絡を取り終えたのかギースが戻って来た。
「珍しいですね。ギースが師匠達を助けるなんて」
私は師匠の手当をしながらギースに言う。それもそのはず。ギースや師匠、ハイドは味方を見捨てる事に躊躇などしない。今回、ギースがこの2人を見捨てず助けるとは天変地異の前触れか?
「黒が相手の手に全部揃った状態じゃったからな。どれか1つでも取り返さねばと思ったのよ」
つまり、私か誰かは切り捨てるつもりだったと? 相変わらず酷いな、この人。
「すまない、ギース。僕が不甲斐ないばかりに……」
「いえ、貴女様は悪く有りません。私達が何も出来なかったばかりに随分と怖い思いをされた事でしょう」
兄様は空気を読んで静かにしていた。もう居ないんじゃないかってくらい静かだが一応兄様も居る。まるで借りて来た猫みたいだ。いつもこんなに静かなら良いのに
「ゲホゲホ」
またも手に血が付いた。限界が近いな……




