白き花
歩いても歩いても同じ様な光景が続く。正直うんざりして来た。
「はぁ……」
流石の私も体力が限界に近づいて来た。しかしハイドが余裕そうなので負けてなるものかっと意地でも歩いた。
「情けない」
私が疲れている事に気がついたのかハイドに鼻で笑われた。イラッとした。このまま置いて帰ってやろうかな? ……なんて考え思い始めた頃、かなり拓けた場所に出た。
なんと、そこには私達メンバーが探し求めている物が有った。それは白い宝具!
「嘘っ⁉︎」
本当に有った! 疑心暗鬼でハイドと探索していたが、まさか本当に有ったとは驚きだ。確かに此処に有れば、誰にも見つからないだろう。今まで見つからなかった理由がよく分かる。
私は白い宝具の元に近寄る。それは何か見た事も無い文字で書かれた入れ物に入っていた。何の文字だろうか?
「古代の文字だろうな」
ハイドが文字を見て言った。古代文字は選択科目だったので習ってない。
「古代文字なんて専攻とってなかったよ」
取っておけば良かっなぁ……。古代文字なんて将来絶対使い道ないだろうと思って取らなかったのだ。まさか使う時が来ようとは……人生何が有るかも分からないなぁ。
「『白き花』っか……」
「お前、読めるのかよ」
ハイド曰く古代文字でシエルと書かれているらしい。読めるなら始めから読んでくれよ。端末出して来て辞書を引こうとしたのが無駄だったじゃないか。
私はジト目でハイドを見たがハイドは無視。私を放っておいて白の宝具をどうするか思案している。
「お前に押し付けても良いが……」
私に白を押し付けようか悩んでるいるらしいハイド。
「別に良いけど私、黒い方持ってるんだけど2つも持って問題ないの?」
「分からん。前例が無いからな」
そりゃ無いだろう。黒は男しか持てず、白は女しか持てない。人の性別は男か女だけ。そのどちらかに分けられるので2つ持つなんて出来無いだろう。
「試してみるか?」
「遠慮しとく」
大惨事になったらどうする!
「この箱のまま持って行けば?」
「それが良いか」
結局、宝具は箱に入れて私の影に仕舞った。これにて任務完了だ。
『クックック……。此処に人間が来るなんて久しぶりだぁ』
「「……⁉︎」」
後ろからネットリとした女の様な声が聞こえて来た。思わず振り返って後悔する。そこに居たのは先程見た黒くて大きくて気持ち悪い6足歩行の生き物であった。怪物からは異臭がしている。そして、顔に当たる部分にはお面の様な物が付いており、それが更に不気味さを一層させる。
『美味しそうだぁ……。美味しそうだぁ』
涎を垂らし始める怪物。これはヤバイと思い逃げる体勢を取る。逃げる体勢を取ったのは戦いたくないくらいに気持ち悪いから反射だ。
『そうだぁ。食べちゃう前にお話しようよー。そうだぁ、人間って階級っていうのがあるんでしょう? 今まで此処まで来た人間はいつも、自身の階級を自慢してたよ? 「メディウムである私が負ける筈が無いだろう?」とか「プローウォカートルである我には勝てないから引け」だとか言ってたよぉ。君の階級は?』
階級制度を知っているとは……。随分賢い怪物だな。取り敢えず素直に言って見る事に
「ウィークトゥスだよ」
私がそう言うと目の前の怪物は動きを止めた。そして直ぐに大声で笑い始める。
『アハハ! フハハッ! ウィークトゥスって! 1番弱いじゃん! アハハ!』
正直、怪物にまでバカにされるとは思わなかった。流石に人間に言われるのは慣れて来て居たのだが……この怪物に言われるとかなり腹が立つ。
「ふっ。人外にまでバカにされるとはな」
ハイドに鼻で笑われた。こっちにもカチンと来た。
転げまわる怪物を見て殺意が湧いてくると同時に、ハイドにも殺意が湧く。内側から黒いオーラが出てくるのが分かった。それを見た怪物が動きを止めて首を傾げ出した
『ウィークトゥス? 何故、黒い花を持ってる?』
「……⁉︎」
この怪物は黒い宝玉を知っているのか?
「宝玉を知ってるのか?」
疑問をハイドが聞いた。
『それは、我らが主人の体の一部。心臓の部分』
っと気持ち悪い怪物は教えてくれた。以外に親切だな。しかし今、主人とか言わなかったか? もしかして邪神の手下とか?
「邪神の手下?」
『うーん。手下というより、子供かな? 我らはかの神から生まれた存在。それを持つという事は我らの同胞だね? 美味しそうだけど、食べるのは辞めてあげよう。ねぇ、皆んな』
怪物が言うと同時に、ワラワラと同じ様な姿をした怪物が出てきた。コレはマズイ。マジでマズイ。
集まって来た怪物は聞いても居ない事をペラペラと話し始めた。
何でも、此処は古代から有る遺跡の1つらしい。昔、邪神を封じられた際に、白い方を二度と復活させない為に怪物達が建てた遺跡なのだとか。他にも全てで6つの遺跡が世界に有ったらしいのだが、此処以外は全て人間に突破されて白い宝具や宝玉を盗まれてしまったらしい。
『守ってるんだよ。あのお方の復活に白は要らないからね』
『かの白から生まれし、か弱き人の子よ……。白い花は置いておけ。そうすれば我らは其方を害しはしない。何せ我らが同胞なのだから』
同胞扱いされた。かなり侵害だ。私の見た目はそんなに気持ち悪くないと思うぞ?
更に話を聞くと、邪神の名前も聞けた。邪神の名は【ウィケッド】、白い方は【シエル】らしい。さっきの古代文字で書かれた【シエル】は名前だった様だ。
人間はシエルによって生み出され、モンスターはウィケッドによって生み出された存在なのだとか。
『そう、遠くない未来に我らが主は復活する。そして地上を我らの国に!』
なんだか盛り上がり出した怪物s。どうしようか? 逃げるなら今か?
『さぁ、白を戻せ!』
「断る!」
ハイドが断った途端、怪物が一斉に襲い掛かってきた。めちゃくちゃ気持ち悪い!
「……っ!」
1匹1匹の力はそこまで強くは無かったが数が多い為、苦戦を強いられる。倒しても倒しても怪物は減る様子を見せず無尽蔵に湧いてくる。私だけでなくハイドにも疲労の色が見えてきた。このままでは押されて負けてしまう。ここは逃げた方が良い。
迫り来る気持ち悪い怪物達から逃げる為、長距離の影移動を行う事に。ハイドを掴み影に飛び込む。
目的地は定めてない。なので何処に出るか分からないが、ここよりかは安全な場所に出られるだろう。




