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ハイドと一緒!

 

 口移しを何度か繰り返した後、足についた糸を切ってやる。すると勝手に泳いで水面に浮上し始めたので、そのまま放置して私は目の前の巨大蜘蛛をどうするか考える。獲物が1匹逃げたというのに動じた様子はない。余裕があるのだろうか?


 一度、私も浮上してみて相手の出方を伺ってみようか。


 私も水面に向けて泳ぎ始めると蜘蛛が動いた。底を蹴り凄い勢いで私に向けて飛んで来る。しかし水中では影が多く私の方が有利だ。難なく倒せるだろう。

 私は飛んで来た蜘蛛に殊技を使おうとしたが……それより先に蜘蛛が一時停止したので止めた。一瞬止まったという事はハイドの殊技だろう。その一瞬を無下には出来ないので、その隙に殊技で蜘蛛を攻撃し絶命させた。結局、殊技は使った。


 上を見上げるとハイドが私を見下ろしていた。


「ぷはっ」


 ハイドを追い水面にまで浮上すると、あら不思議、そこは神秘的な洞窟内でした。さっきまで森だったのにいつの間に、こんな洞窟に来ていたんだ?

 洞窟内は所々に有る鉱石が発光している所為か明るくなっており、暗視の魔法を使わずとも問題なさそうであった。


「いつまで浸かっている」


 ハイドの声が聞こえて来たので、声の聞こえた方向に向くと岸に上がり座り込むハイドの姿が確認出来た。濡れた髪をかきあげて座り込む姿はムカつくほど絵になる。ケッ!


「生きてたんだね」

「お陰様でな」


 肩を竦めて言うハイドにイラッとしたが耐えた。ハイドが死にかけたのは川に引きずり込んだ私の所為でもあるからだ。しかし、元はと言えば川に蹴落としてくれたハイドの所為なので謝ったりはしない。むしろ謝ってくれ


「よいしょ」


 岸に上がり辺りを見回す。道らしき所が1つだけあるが他には何もない光っているだけの空間らしい。


「道は1つだぞ? 進むか?」


 ハイドが分かりきった事を聞いてくる。答えは……


「NO!」


 である。私はハイドと違って水中でも問題なく行動出来る。ならば、引きずり込まれた道を泳いで帰れば元の場所に戻れる筈だ。その際、ハイドは置いて行くつもりだ。

 それともう一つ、私には殊技がある。これを使えば影を移動して元の場所に戻れる。これも使うならばハイドは置いて行く。なので別に洞窟内を進む必要は皆無なのだ! 1人で彷徨っていろ!

 そんな私の心境が手に取るよう分かるのかハイドは目を細めのた後、


「白が有るかもしれないぞ?」


 っと言って来た。これには反論出来ない。ぐぬぬぬ……

 地上を探してもないのだから地上ではない場所に隠しているのかもしれない。ならば、洞窟内とか海底とか……


「はぁ……」


 仕方なしに憎きハイドと共に洞窟を進む事になった。


「取り敢えず、服を乾かすぞ。このままでは動き辛い」


 ハイドが上半身の服を脱いで絞る。引き締まった肉体が惜しげもなく晒された。おぉ! 良い肉体ですなぁ! 私はマジマジと眺める。兄様とか弟とは大違い。アイツらはヒョロヒョロだけど、やはりハイドは武闘派なだけあって筋肉がしっかりついている。これぞサービスシーンだ。


「見過ぎだ」


 流石に見過ぎだのか注意された。だって、男性の半裸なんてあんまり見る機会ないしさー。


「いいなー。私も筋肉欲しいなー」


 私、あんまり腕力とか無いんだよね。もう少し欲しいんだけど。やっぱり、女ではコレが限界なのかな?


「……充分だろう」

「腹筋くらいは割れてほしい」


 私の腹筋、割れる感じが一向にしない。何故だ? こんなにも頑張ってるのに


「お前はそれで良い。無駄な筋肉が付くと、お前の武器であるスピードが落ちるぞ」

「それは困るな」


 スピードが落ちるのは困る。じゃあ、コレでいいかな! でも、足に筋肉付けたら、もっと速くなるのでは? 帰ったら師匠に相談してみようかな!


「さて! そろそろ見るのを辞めてやろう! 後ろ向いててやるかなー。あ、タオル貸してあげる」


 上半身の服を脱いだのだから下も脱ぐだろうし、流石に見続けるのは不味いな。私は後ろを向いてあげた。

 さて、私も服が体に張り付いて気持ちが悪いので服を……魔法で乾かしたった! 残念だったなハイド! 私のサービスシーンは無いんだ! 1人で、せっせと服を乾かすが良いさ!


「火でも用意してやろうかなぁ」


 私は優しいので、焚き火でも用意してあげよう。影から燃やしても良さそうな物を取り出して、並べて火を付けた。


「これなんだっけ? 『幼馴染との恋〜お互いの親が居ない間に〜』これ兄様の部屋からパクって来た兄様の如何わしい宝物だ」


 兄様の趣味って幼馴染系なんだね。へー……。他にも色々有るな。殆どが幼馴染系ばっかりだ。しかも清純派だ。へー。

 脅しに使おうと思って部屋から取って来てたんだった。忘れてたな。偶に腹が立ったら、兄様の部屋にある宝物()を取って来てリビングに広げてやってたんだよなー。母がそれを見つけて大騒ぎになったっけー


「懐かしいなー」

「お前の兄は不憫だな」


 口に出して説明していたら、ハイドが兄様に同情した。ハイドが同情するなんて、よっぽどだぞ⁉︎


「これも燃やして良いかな?」

「辞めてやれ」


 ハイドが止めて来た。ハイドが止めるなんて、よっぽどだぞ⁉︎

 取り敢えず、兄様への脅しに使えるかもしれないから、置いておくか! 後から溜息が聞こえて来たが、聞かなかったフリをした。


「グロキシニアでも、こんな事はしない」


 同じ妹でも、色んな妹が居るんだよ、ハイドよ!


 火が大きくなって来たので、これくらいで良いだろう。私は火の近くに座り、マシュマロを焼いた。うまうま!


「お前、服は?」


 バスタオルに包まったハイドが聞いて来たので、ドヤ顔で


「魔法で乾かした!」


 言ってやったら……


「……」

「ちょ⁉︎ 待って! ぎゃー!!」


 無言で抱き上げられて、水に落とされた。この野郎!!



 ◆


 水から上がって、自分の服を乾かして、ついでにハイドの服も乾かした。無駄な魔力を使ってしまった……


 そしてハイドと共に洞窟の奥へと進む。流石というか先程まで行動を共にしていたアスターとは違い数分で休憩を欲しがる事はないので、探索はスムーズに進む。それに洞窟内には多種多様なモンスターが生息していたので、私1人で戦うよりハイドがいてくれた方が楽で良い。本音を言うと師匠とかの方が良いのだが贅沢は言わないでおこう。


「変わったな」

「わぁお!」


 モンスターを倒しつつ進み続けると、雰囲気の違った場所に出た。その場所はだだっ広い空間に、洞窟内にもかかわらず草木生い茂る美しい森が広がっていた。川もあり、せせらぎの音が聞こえてくる癒しの場所であった。

 その奥にこの空間に似つかわしくない不思議な建物が存在した。緑色に発光した大きな四角い建物であった。近くに寄り建物を観察してみるが、なんの建物か想像も付かない。


「扉が有るぞ」

「マジで⁉︎」


 ハイドが扉の様な物を発見した。近づいて、扉を叩いたり引いたりしてみたが扉はうんともすんとも言わない。開かない……。こうなれば私の殊技の出番だ! 私は殊技を使い扉を潜り抜ける。仕方がないのでハイドも共に潜らせてやった。


「おぉ!!」


 中は薄い緑の色のライトで照らされており、中々に綺麗な場所だった。


 建物内を慎重に調べてみると面白い事が分かった。壁や床に使われている素材は、どれもこれも今の時代には存在しない鉱石らしい。ハイドの見立てなので、合っているのか怪しい。

 しかし、ここは本当に何なのだろうか? 私達は慎重に先に進む事に。

 暫く進むと、ライトが緑から紫になっている何処に出た。何処からか異臭がする。何か有るのか?


「闇が濃いな。常人なら直ぐに発狂している」

「闇?」


 何も感じないが? それをハイドに言うと呆れられた。


「鈍いにも程が有る。これだけ濃ければ、常人が発狂するレベルだぞ。まず感じ取れないヤツは居ない。闇の気配を知らない奴らでさへ、これは不味いと感じるだろう。俺でさへ、気分が悪くなってきた。それを感じとれないなんて」

「だって何も感じないんだもん」


 仕方ないじゃん!


「お前の殊技は闇だろう? 闇を操る力が有る癖に何故、感じ取れな……あぁ、そうか」


 何故か急に納得していた。え? 何事?


「お前は殊技の影響で、常に闇の気配を感じて居るからな。それに宝玉も有る。普段から感じているから、今更周りに満ちた所で何も思わないのだろうな」

「えー?」


 つまり、あれか? 殊技と宝玉の影響で、普段から闇の気配を感じて居るから、今更周りに闇の気配が満ちようが、普段とそう変わらなくて気にしてないって事かな? 


「凄いな私!」


 やるじゃん!


 私は清々しい気持ちで、先に進む。


 少し先に黒くて大きくて気持ち悪い六足歩行の生き物がいた。正直、かなりのキモさだ。今まで見てきた中でダントツであると思う。

 幸いにも見つかる事は無く過ぎる事に成功したが、アレとは戦いたくは無いものだ。絶対に見つかりたく無い。


「あれ何?」

「知らん。俺に聞くな」


 使えない奴だなぁ!

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