マッドサイエンティスト登場
廃墟の中は真っ暗で霊的な物が出て来そうな感じであったが、特に珍しい物は何もなさそうだった。私は暗視の魔法を使い、暗がりでも昼間と同じ様に見える状態にした。
さてこれで動けるな! 先程の観覧車の妖精は何処に行ったのだろう? ウロウロして居ると、地下に続く階段を発見! 迷わず下に降りる。
地下は真っ暗で薄気味悪かった。まぁ、真っ暗なので私の殊技が制限なく使えるから、何が襲って来ても問題ないのだが。
曲がり角を曲がるとバタバタと凄い足音が聞こえて来た。それは徐々にこちらに向かってきている様だった。それを迎え撃とうと剣を構える私の前に、
「うぉおおお!!」
かなりの数の観覧車の (妖)精が走って来てたので慌てて逃げた。別に倒せるのだが、気持ち悪くて近づきたくない。生理的に無理
逃げ切ると再度散策を開始する。どうやら此処は何かの実験施設の様だ。前回の廃遊園地と同じ作りなので同一の実験施設だろう。見た感じ廃遊園地より年季がありそうだが、揃っている機材は廃遊園地より最新鋭のモノが多い。
観光スポットの近くにこんな場所が有るなんて驚きである。もしや観光客なんかを攫って居たのかもしれない。
「血が付いてる……。人の骨が有る……」
此処でも人体実験でもしていたのだろうか?
『おやおや、珍しいね! お客様とは!』
声が聞こえて来た。どうやら、スピーカーから聞こえているらしい。誰だ?
『可愛いお客さんだね。子供達が騒つく訳だ……。この子達は親を無くした哀れな子供達。母親の愛情を貰えなかった哀れな子供達。その子達には貴方が母親に見えるのかもしれないね』
訳の分からない事をペラペラ語り出す謎のスピーカー男 (声から性別を判断した)。
『是非、私の元まで来てくれ給え。そうすれば、とびっきりのお持てなしをしよう』
それきりスピーカーからは何も聞こえなくなった。
私の元まで来いと言われたが、面倒なので帰ろうと思う。そろそろ帰らないと師匠に怒られそうだ。
「よし! 帰るか!」
私は来た道を戻る。戻ったのだが……地上に続く扉が閉まっていた。コレはアレだ。謎を解いて脱出せよっというやつだろう。困ったなぁ。仕方ないので先に進む事に
「ヒントを探して……。うぉおおお!!」
そして、デジャヴが起きた……。
◆
観覧車の妖精に阻まれながら、やっとこさ地下3階に到着。やっとだ〜、と感激していると、有る事に気が付いた。
「しまった……。私、影通れば普通に脱出出来たじゃないか!」
扉が有ろうと無かろうと私は影を通れば行き来ができる。それをすっかり忘れていた。わざわざ、脱出方法を探る必要は無かったのだ
「これは後で師匠に怒られるな」
思わず頭を抱えた。散歩のわりに時間が経ち過ぎている。後で師匠の無言の圧力くらい覚悟しなければならない。師匠だけで済めば良いが、ギースとハイドも加わるのは勘弁だ。
「あー、ソナーの魔法とか作ったんだった」
アレを応用すれば、建物の構造とか、モンスターの大まかな位置とかを把握できたかもしれない。もっと早く気づけば良かった。でも、今から応用を作るのも大変だから、今回は見送ろうかな。
「使える魔法が多くても、存在を忘れてたら意味ないよねー」
多く使えても、いつも同じ魔法ばかり使うから折角覚えた魔法の存在を忘れちゃうんだよなぁ。
それより、今気が付いたのだが最近、独り言が多くなった? 溜息を吐き、先に進む。
この階層は今までの階層と違い、手術室が多く有る。そして、何処からともなくキュイーンという音が聞こえて来る。なんだが、とっても嫌な予感がする
「ほらなぁ……」
嫌な予感的中。前方から、チェーンソーを持った進化版の妖精が現れた。しかも、1匹ではない
「一、二、三、四、五、五体か……多いな」
チェーンソーを持った進化版妖精は私を見つけるや否や、我れ先にと走って来た。これはホラーである
逃げても良かったが、逃げた先に別の個体が居ては厄介なので、此処で仕留める事に。仕留め終わるとまたもやスピーカーから声が聞こえきた。
『ブラボー!! なかなかの腕前だ! 流石は此処まで来た子だ。今まで此処まで来れた者は誰一人として居ないのだよ! さぁ、先に進みたまえ! その先に有る部屋にて私は君を待つ!』
そして何も聞こえなくなった。先程のテンションの高い男はこの先に居るのだろう。私は辺りを警戒しながら進んだ。
銃を構えて後ろを警戒しつつ先に進む。何処からかチェーンソーの音が聞こえて来るので、まだ先程の妖精が潜んで居るのだろう。
少し進んだ所に手術中のランプが付いた部屋を発見。扉は閉まって居るらしい。私が、その手術室の近くに寄ると……。
「ぬきゃぁああああ⁉︎」
急にドアが開き、身長が私の膝辺りくらいまでの小さな妖精が雪崩の様に出てきた。数なんて数えきれないほどの多さ。その妖精全てが私に向かって走って来る。
「ああああ⁉︎」
私は慌てて踵を返して逃げる。流石にあの数は気持ち悪くて逃げたくなる。しかし、この地下3階は狭く暫く走ると逃げ場がなくなり追い詰められる。なので打って出る事に。私は火炎放射を放ち、一気に焼き払った。
「思ったより呆気なかったな……」
気を取直して先に……
「うわぁああああ⁉︎」
今度はチェーンソー持った進化版妖精が追いかけてきた!
◆
やっとこさ、全て倒し終えて、最後の部屋まで付いた。恐らく、此処が先程の男の待っている部屋だろう。
私は銃を構えて部屋に入ると、そこには白衣を来た、つるっ禿げの男が居た。
「ようこそ! 此処は私の研究室! 人が来たのは君が初めてさ!」
男は大袈裟な動きで言う。この男がイネスで間違いないだろう。手配書でみた通りの顔だ。
「見ての通りココは人体実験場なのだよ、お客様第一号君。そうだ! 初のお客様だ。名前を聞いておこうか!」
私は目の前の男の話が全く耳に入って来ない。何故なら、男の後ろに【白い宝具】が有ったからだ。私はそれに気を取られていた。
コルネリア様が、この国には宝具の反応は1つだけだと言っていた。それはこの国の王子が有している宝具の筈だ。
イネスには宝具の気配を遮断する装置があるのでコルネリア様でも感じ取れなかったのだろう。
私が白い宝具を見ているとイネスは私の視線に気が付いたのか、白い宝具を指差して話かけてきた。
「あぁ、コレを知っているのかね。ふむ……。成る程ね」
その白い宝具の周りにドス黒いオーラが漂っていた。黒い方なら、いざ知らず、白い方に黒いオーラが出ているのは可笑しい。
「黒い霧が気になるのかい? 実は此処で白を黒く染める実験をしていたのだよ。白を黒く染める事が出来れば、今足りない黒を補う事が出来るだろう?」
今、足りない黒……。それは師匠とハイドの持っている黒い宝具の事だろうか? だとすれば、この男は
「王の手先か」
我らの国の国王【ディーデリヒ=オドントグロッサム=ショーバーレヒナー】の手先だろう。
「成る程! 君はコルネリア殿下の下僕か! ならば、コレを知ってて当然だ。そうだとも! 私は王の忠実なる下僕。王の命により、各地で白を黒にする方法を探る者だ! 【マッドサイエンティスト】と呼んでくれ!」
【マッドサイエンティスト】って、そのまんまだ。長いので、
「長いから、つるっ禿げで」
「……」
渾名を付けてやった。すると向こうは無言になった
「まぁ、呼び名などどうでも良い。それより、この黒い霧の製法を知りたくないか?」
「結構です」
絶対アレだ。人々の絶望がどうとか言うヤツだろう。人体実験を行い、恐怖と絶望を味わせ、そのエネルギーを白い宝具に入れるかなんかだろう。
私の推理をつるっ禿げに言うと
「素晴らしい! その通りだよ! まぁ、人体実験は白い宝具に適合するか否かの実験だったのだけれど……。この黒く染め上げた宝具を人体に入れると発狂してしまうのでね」
なんて男だ。ホント、マッドサイエンティスト
「しかし、此処ももう破棄しようと思っていてね。しかし、此処に居るモンスター達の処理に困っていたんだ。そんな所に丁度良く君が来てくれてね。助かったよ! じゃ、後は宜しくね」
話すだけ話して男は私に背を向けた。そして、白い宝具の入った瓶を持って奥に行こうとする
「勝手な事を! 逃すか!」
「あぁ、忘れてた! この下には、とっておきの奴が居てね。是非、其奴の相手をしてやってくれ」
私が追いかけようと踏み出すと、つるっ禿げは何かのボタンを押した。すると、私の足元が開き、下に通じる穴が開く。
「そんなベタな……」
重力に従い、私の体は下に落ちた




