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賽は投げられた

 

 肉を裂く音が辺りに響いた。


 しかし、コルネリア様は無事だった。


『コル……ネリ……っア……』

『何故、貴女が……』


 私は目を見張る。何故ならば絶体絶命のピンチであったコルネリア様を救ったのは


『お姉様……』


 お人形と化したソフィア様であったからだ。自分の意思など既に無くなっている筈のソフィア様がコルネリア様を庇ったのだ。

 ソフィア様はコルネリア様を抱きしめる様に庇った為、背中を大きく抉られた。そして長く美しい髪は無残にも散り、辺りに散ったソフィア様自身の血に染まる。

 ソフィア様はコルネリア様を抱えたまま倒れる。そして彼女は


『あぁ……。私の可愛い妹っ……。もう一度、この手に抱けて嬉しい』


 涙ながらに言った。そして、何も言わなくなってしまった


『お姉様っ! おねえさまっ!』


 それを確認したコルネリア様はソフィア様を何度も呼んだが返事は返って来ない。




 これは不味い。かなり不味い。私も早く戦線に復帰しなければ。しかしどうやって?

 泉には黒い化け物に囲まれて動けないコルネリア様達が映る。そして1人、1人と減って行く兵達も……。


「グズグズしてられない」


 考えろ私! ここをどれだけ歩いても出口は無かった。ならば、別の方法があるのではないだろうか?


「あー、闇か……」


 そうだ。この空間は闇だ。邪龍を取り込んだ時に出来た闇の世界。ならば、私の意のままになるのでは?

 私は手を前に掲げ、出口をイメージして闇を操ってみる。すると、眼前に上に続く螺旋階段が出来上がった。


「上かよ」


 どうやら上に出口があった様だ。どおりで幾ら歩いても出口に着かない筈だ。

 一度頭を抱えた後、階段に向き直り、登ってみた。

 少し登った辺りで下が騒がしくなり始めたので覗いてみると、なんと白い木々がジェノサイドへと姿を変えていた。


「えぇー!! あの木って観覧車の妖精だったの⁉︎」


 なんでこんな所にジェノサイドが居るんだ! ここにイネスは居ない筈だぞ! え? まさか居るの?

 なんてちょっと現実逃避を試みたが、ジェノサイドが階段を登って来ようとしていたので、慌てて首を振り対処を始める。


「ここから出さない気か?」


 プレスして圧死させてもいいが……私は先を急いで居る身なので相手をしている暇はない。また今度な!


 私は羽を作り階段を無視して空に羽ばたき出口と思わしき場所を目指す。


 私の遥か下で邪龍の咆哮が轟いた


 ◆



「佳月!」


 ハッと気がつくと、私は座り込む兄様の首に刃を当てていた。辺りには、座り込む純菜やアキラ、黒い歪な怪物と戦う花弦の姿が目に入った。

 ああ、これは現実だ。夢ではない。どうやら帰って来たらしい。お帰り私!



 儀式は終盤に差し掛かっているらしく、王様は空に向けて手を伸ばし、何やら呪文みたいなモノを唱えている。アレも()()()だろうか?


 邪神は体をグネグネと歪めて形を成す寸前だった。

 アレが出来上がったら終わりだ。脳がそう判断する。その前に王を止めて儀式を終わらせねば!


「佳月! お前はそれで良いのか! そんな操られるお人形でお前は良いのか? そんなにいい子じゃないだろう、お前!」


 兄様が私に何か言っているが、この際無視しよう。今は王様をどうするが考えているのだ。

 考える為、動きを止めている私に好機と踏んだのか純菜とアキラが仕掛けてきた。私はそれを難なく回避して逆に2人を地に沈めた。やだぁ、ホント私強すぎ!

 持って逝った魔力も殊技も使える。よし! 行ける!


「さぁ、佳月。長年の恨みを晴らしたらどうだい?」


 お願いを終えたのか、中断したのか分からないが王様が私に語りかけて来た。要は兄様を殺せっという事だろう。


「佳月……お前はそんなに俺を恨んでいたのか?」


 兄の前まで歩いて行くと、兄は振り絞る様な声を出して問うて来た。恨んでるちゃー恨んでるけど……別に今はどうでも良いかな。今はね!

 さて、どう動こうかなぁ。今、王様は完璧に私はお人形と化していると思っている筈。ならば、そのまま言う通りに動いて隙を突く方が良いのか……。

 視界の隅に絶望の表情を浮かべるコルネリア様が見えた。


「やっぱり後手に回るのは良くないかな?」


 私は言う。このまま、後手に回っても良い事はないだろう。ならば、ここは賭けに出よう。

 思えば私の人生は賭けの積み重ねだった気がする。ならば、今までと同じ様にここでも賭けに出るとしよう。


「佳月?」


 王様は訝しげに私を見る。私はそんな王様に闇から取り出した銃を向けた。そして顔に掛けられたヴェールを剥ぎ取る。


「お久しぶりです王様。舞い戻って参りましたよ、闇の底から!」


 ドヤ顔で王様に言ってやる。驚愕の表情を浮かべる王様。その周りも然りだ。


「……な、何故だ? 何故、動ける?」


 王が私を見て動揺してる。それもそうだろう。完璧に壊した筈の人間が戻ってくるとは誰も思わない。


「さぁ、何故でしょう? 私も聞きたいです」


 しらばっくれとこうかな!

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