胡蝶の夢
目を開けると見慣れた天井だった。あぁ、ここは実家の自室だ。
私は体を起こし、準備をし、居間に行く。そこには既に私以外の家族と居り、朝食を食べていた。私は兄の隣に座り、準備された朝食を取り始める
「今日はどうするんだ?」
横に居る兄様に今日の予定を問われた。何をしようか考えていなかったので、返答に悩む。う〜ん……。何をしようかなー
「ユックリすれば良いじゃない。明日には帰るんでしょ? 休める時に休んでおかなくちゃ」
母様に言われ、私は頷く。そうだ。明日には城に戻らないといけないのだ。城に居る時は忙しくて休む暇など無いに等しいのだから今のうちに休んでおかねば。私は母の提案に頷く。
朝食を食べ終え、食器類を片付けてから部屋に戻る。戻る途中で兄に呼び止められた。そしてたわいもない話する
「明日な!」
話終えると、兄様は満面の笑みで明日に会おうと言い、去って行った。外に出ると、一族の人達が明るく声を掛けて来た。皆、ニコニコと笑い私に話しかけて来るのだ。
話しを終えると、自室に戻った
◆
「何じゃこりゃーー!!」
私は部屋に戻り、近くに有った物をひっくり返して叫んだ。何、この不気味な兄様。何、この不気味な一族!
親戚が私に対して終始穏やかだった! 兄様が私に慈愛の表情を浮かべて居た! 気持ち悪っ!!
「これは夢だ。夢だ」
夢としか思えない。こんな日常有る筈がない。コレはアレだ。安息の影響だ!
やっと状況が読み込めた私。夢を夢と気付くのは可笑しいが、仕方がない。あまりにも不気味すぎる一族に夢も醒めると言うモノ。実際、覚めてないが……。
「あー、一族の特性かな?」
一族の特性である血中に入った異物の効果を遅延させるアレが作動して、夢だと気付いた感じかな?
「夢ってどうやったら醒めるの?」
ここから、どうすれば夢から覚めるのだろうか? 何か手は無いだろうか?
私は部屋に篭り、夢から醒める方法を考えては実行してみたがダメだった。もしかして今までの出来事が夢でコレが現実なのか? そんな疑問が湧いてくる。ヤバい、薬が効いて来たのかもしれない。
結局、次の日になり、城に行く事に。私は花弦らしく、城でもかなりの権力を持つ者らしい。一族の皆んなは、そんな私を誇りに思うと褒め称えて居た。気持ち悪っ!
兄様と城に戻る。時期当主様は一緒ではない。というか城勤めをしていない。現実では次期当主様も城勤めだが、私の夢では次期当主様は家で当主修行してる。
思ったのだが、何故、現実の次期当主様はお城勤めしているのか。普通に家で踏ん反り返っていたらよくね? っと私は思ってみる
城に着き、部屋に戻る様に言われた。しかし、自らの部屋が分からない。困った……。
「あ、師匠!」
そんな時、師匠が通り掛かった。助かった……。師匠に私の部屋の場所を聞いてみると
「俺も探して居る」
っと返って来た。この人、城で迷子になっているらしい。このままでは共に居る私まで迷子扱いだ。どうするか……
「お前が迷うとは珍しいな」
「いや……。迷ったというか……。まぁいいや。迷いました」
言い訳を考えるのが面倒なので、迷った事にした。その後、師匠とその辺をブラブラ散歩する。誰か知り合い居ないかなー。
そこで先程、別れた兄様を発見! 兄様にそれとなく部屋を訪ねてみる。
「はぁ……。リンドヴァル様、また迷子になられたのですか? 良いですよ。案内します」
気持ち悪いくらい爽やかな笑顔を見せてくれた兄様に、私は鳥肌が立った。そして、師匠は迷子の常習犯らしかった。何やってんですか師匠。
兄様は優しく私達を案内してくれ、目的の部屋に到着。師匠の部屋は私の隣の部屋だったらしく、兄様に案内されやっと自室に戻れた様であった。私も自室に入る。入ると、あら不思議。私には合わない豪華過ぎるお部屋だった。
そして一息付いたら、何とか目を覚まそうと頑張ってみるが無理。このままでは、この不気味な夢と一生付き合う事に成りかねない。そんなの嫌だ!
次の日、私は王女であるコルネリア様のお世話に回っていた。何でも夢の中の私は、王女のお世話係 兼 花弦らしい。そんな大層な肩書きなのだなぁ……。
他の六花にも会ったり、アキラや純菜、メガ萌、花弦にも会ったりしたし、何をしているのかクレマチスのジィジも居た。中にはイネスとか言う犯罪者も普通に職員として働いて居た。どうなってるんだ、この夢。
しかし、六花に会ったとは言ってもハイドには会って居ない。今は、遠征に行っているとか何とかで城には居ないのだ。会うのは当分先になりそうだ。別に良いけど。
◆
そして数日が立つ。夢の中で寝るという謎の行為にも、そろそろ慣れて来た頃である。最近、この夢を現実だと思う時間が徐々に増えて来た。ハッと気が付いて、コレが夢だと思い直すのだが、気付かない時は普通に過ごしてしまっている。徐々にだが、安息に侵食されて来て居る。このままでは、いずれ夢だと思い出せなくなる。コレは不味い。早くどうにかしないと!
なりふり構ってられない! ある日、修行中に師匠に問うてみた
「師匠は『コレは夢だなぁ』って思った時、どうやって目を覚まします?」
「はぁ?」
首を傾げられたので丁重に説明。夢から醒める方法を聴いてみた
「なんだ? 怖い夢でも見たのか?」
「違うんですが……。いや、怖い夢ですね現在進行形で」
真顔で言う私の頭を師匠は無言で撫でて来た。優しさが沁みる!
「そもそも、夢だと気付く事があるのか?」
「私は気付きました」
師匠に問うてみたが進展無し。仕方なく別の人に聞こうと思う。誰が良いかなぁ?
私が新たな決意を胸に秘めていると、
「今日、ハイドが返って来るみたいだぞ?」
っと師匠が教えてくれた。別にハイドが返って来るなんてどうでも良いのだけれど……。特に必要の無い情報だ。
「慰めてもらえ」
「何でですか」
真顔で恐ろしい事を言う師匠。ハイドに慰めを期待するとか愚の骨頂だ。あいつが人を慰める訳がない。それに、ハイドに慰めて欲しくない! 絶対嫌だ。
そう師匠に言うと……
「恋人だろ?」
「……」
まさかの展開だ。どうなってるんだ、この夢! もう嫌だ、こんな夢……。夢なら覚めてくれ……
夢は『人の深層心理が〜』とか言われて居るが、コレが私の深層心理なのか? ハイドと恋人なのが? 絶対に違うぞ。これは無い。断じてない。あり得ない!! 後、癪だけど現実のハイドに申し訳ない!
「うぁあああああ!!」
私は絶叫した。師匠は無表情だった
そして脳のキャパシティが超えて気絶した。
◆
「ハッ⁉︎」
私は気を失っていた!
「え?」
ハイドの綺麗なお顔が目の前に有った。え? これどういう状況?
私は状況を理解すべく、辺りを見回した。どうやら私はベッドに寝て居るらしい。その寝て居る横にハイドが寝転がり私を見ている様だった。
「何だ? 起きたのか。倒れたと聞いて驚いたぞ。大丈夫なのか?」
少し優しげな顔で言うハイド。それはまるで恋人に向ける優しい顔だった。
誰だお前⁉︎ ハイドはそんな顔しないぞ! やめろ! 夢、やめろよ! やめてくれよ! 鳥肌立っただろ⁉︎
「あぁああああ!!」
私は顔を手で覆い、奇声を上げて、ベッドの上をのたうち回った。
「それだけ元気なら、大丈夫だろう。ほら、久々の再会だぞ言う事が有るんじゃないか?」
ハイドはのたうち回る私を抱え込む様に拘束して、顔を合わせて来た。何だ、その優し気な顔は⁉︎ 無理です! マジで無理です。鳥肌が凄いもん! 辞めてください、死んでしまいます。夢! 覚めてください! お願いします
私はハイドから全力で離れて、全力で部屋から出て、全力で走り回った。走り回った結果、池に落っこちた!!




