拷問の果てに
結論から言おう。無理だった! 本当に無理だった! 大事な事なので2回言いました!!
久遠の拷問を受けて数分後には私は自身の殊技の事と【お願い】の事を自白していました。あの兄様&次期当主様を数えよう作戦は通用せず、直ぐに自白してしまった。これを師匠達は数日受けていたのかと思うとゾッとする。凄いな師匠。
しかし、自白したにも関わらず久遠は拷問を続けて来た。コイツも師匠とハイドと同じタイプだった! 最悪だ。自白した意味なーい!
途中で師匠が止めに入ったが、久遠は止まらなかった。因みにハイドは止める何処ろか煽っていた。コイツ覚えてろよ!
久遠の気が済み、漸く解放された頃には私はボロボロの雑巾と化していた。
「グズッ、じじょう……グズ」
師匠の足にしがみ付いて泣く私。あの野郎、覚えてろよ! いつか仕返ししてやるからな!
元凶の久遠は私が吐いた情報を王様に報告しに行ったのでココには居ない。全然、時間稼ぎ出来なかった……。1日も持たなかった。せめてコルネリア様は逃げ切れただろうか? ギースも居るし、久遠も長い間遊んで居たし、流石に逃げ切れたよね?
因みに私達は手枷が付いているが、それ以外拘束する物は付いてないので、牢屋内なら普通に動ける。なので、師匠の側に行き愚図る事も可能なのだ。
私は師匠の足に顔を押し付けてシクシクと涙を流す。その頭を師匠は撫でてくれてた。うぅ、優しさが滲みる!
「優しい! 師匠が、優しい! 素敵! 師匠、結婚してー」
私は悲鳴を上げすぎてガラガラになった声で師匠に言う。勿論、冗談だ。結婚なんて臨んでない。
私は師匠の足にグリグリと額を押し付けながら愚図るのを続ける。体が痛い。何もしたくないし、考えたくもない。
しかし、次の師匠の言葉で全部吹き飛んだ
「……良いぞ。だが、全て終わってからだ」
「ファッ⁉︎」
私は思わず顔を上げて師匠の顔を凝視する。何事だ⁉︎ この人、どうした? さては偽物だな? 本物の師匠を返せ! ほら見ろ、横のハイドも目を見開いて凝視しているぞ!
私が混乱していると、師匠はフッっと笑った。そして無言で頭を撫でて来た。
何だ、冗談か。ビックリしたわ。
最近、師匠は冗談を覚えてしまった。多分、師匠は私を元気付けようと冗談を吐いたのだろうが、心臓に悪い。もう少し、言って良い冗談と悪い冗談を覚えて欲しい。というか、師匠が冗談言うとか、それこそが何の冗談だよ。
私が若干ムクれて居ると、師匠は無表情に戻り口を開いた。
「佳月……お前はこれから」
師匠は私の今後を口にした。
恐らく私は安息を打たれて人形にされるだろう。私の殊技はどちらも特殊で王には都合の良い物だと言う。
王は闇の力を増大させる為に、黒い化け物を召喚し世界を混沌に染め上げ宝玉の力を増そうと考えていた。しかし、【闇を生む】殊技を持つ私がいれば、そんなまどろっこしい事をせずに宝玉に闇を送り力を増幅させられる。その後、邪神を呼び私の【闇を操る】殊技で邪神を操れば王様の思い描いた世界になる。
想像以上に私の殊技が使われとる。これでは時間稼ぎどころか、時間短縮しとる。私の【闇を生む】殊技で宝玉の力を増大させれば、まどろっこしい事をしなくて済むんだよね? これって明らかに時間短縮だよね。不味いぞ!!
「佳月、素直に従え。そうすれば王はお前にアレを打ちはしない」
従えば打たれないのか……だけど、それは裏切りでは? 残酷な人だね、師匠。私に王様に従えと言うのか。コルネリア様を裏切り、貴方まで裏切って。
「王はお前が優秀なのを理解している。無闇に打ち、お前を人形にはしたくはない筈だ」
師匠は私に人形になってほしくないのだろうな。そう言えばラミルに打たれた時も、かなり感情的になってくれたっけ。優しいな、師匠は。
「逆らうな。じゃないと、お前は今度こそ終わりだぞ?」
ハイドまで説得しに掛かって来た。お前もかよ。
確かに安息が避けられるなら、避けたい。でもなー。コルネリア様と約束してるんだよなぁー。私は捕まれば、出来る限りの時間を稼ぐと。全く稼げなかった所か、時間の短縮に繋がってしまっているし……どうしようかな? これじゃ、私は役立たずも良い所だ。
ココで王様に従うフリをして時間を稼いでも良いが……私にソレが可能なのかである。見破られて久遠の拷問行きならまだ良い。いや、良く無いけど! 全然良くないけど! その後、私がどうなるか……。安息を打たれる補償は無い。あれは王の慈悲である。もし怒りを買い、それ以外の危ない薬剤を打たれるのはゴメンである。そこそ自我を崩壊させるヤツだったり、デストロイヤーだったり……。
それに気分的に嫌なんだよね。コルネリア様を裏切って師匠も裏切るなんて、普通に嫌だし……
「……」
厄介な殊技を持ってしまったなぁっと思う。こんな殊技がなければ私は……
「あ!」
そうか! 安息で眠る時に、一緒に殊技も魔力も持って行けば良いんだ! 私の殊技が無くなれば、王様は別の手を考えないと行けなくなる。時間短縮を止められる所か、多少の時間稼ぎになるだろう。
殊技と魔力を持って行くくらい魔法が使えなくても訳ない。自分のモノなのだから、動かすくらいできる。
いや、失敗したら嫌だから先に夢の中に送っておくか! こう段ボールに殊技と魔力を詰めて、宅急便ならぬ邪龍便で夢に速達しておこう。そんな事、出来るの? 無理なら段ボールを抱えて逝くしかない!
これで行こう。もう、これしかない。このままでは時間短縮になってしまう。それだけは避けたいのだ。そうなってしまっては申し訳なさ過ぎる。仕方ない、腹を括れ。私は此処で退場する。後は頼みます。
「佳月、コッチを向け」
「痛い!」
師匠に、よそ見して考え込んで居たのがバレた様で頬を掴まれて強制的に師匠の方を向かされた。
痛い! 首、ゴキャッて音した! アンタ怪力なんだから力任せに掴んで向かせたら首がグッキーッてなるに決まってるじゃん!
「佳月、お前は良くやった。だからこれ以上は……」
師匠が一生懸命に説得しようとしていたが、首の痛みに悶絶していて私はそれどこではない。拷問を受けて痛いのに更に追い討ちかけて来ないでよ! あと痛みで、話の内容が全く入って来ない!
扉の開く音がしたので、痛む首を頑張って回して扉の方に向くと久遠が入って来た。とうとう来たか!
「随分、可愛がっているな、リンドヴァル」
久遠の姿を確認した師匠は私を背に庇う。これは何ですか? 私は守られるヒロインですか? そんなの嫌だ! 私はヒーローになりたいんだ! 私は師匠の背から飛び出して端に跳ねて転がって逃げた。側から見たら遊んでいる様な光景だが、私は至って真面目に行動した。
「何、遊んでるんだ?」
「遊んでません!」
やっぱり遊んでる様に見えたらしい。師匠から離れて久遠を睨んでいると、王様と双子も入って来た。その後ろにお人形と化したソフィア様が居た。ソフィア様には表情も感情も無く、ただそこに立っているだけ。本当にお人形の様だ。
あれが安息を打たれた成れの果てか……。私もあぁなるのか。
「さて、リンドヴァル? 説得は出来たのかい?」
王様は笑顔で私の側に寄って来る。怖い!
「私に従ってくれるかい? 佳月」
王様が問うて来る。
めちゃくちゃ心臓が速く脈打っている。どうする? ソフィア様を見て決心揺らいじゃったんだけど! あぁなるのかと思うと、めちゃくちゃ怖い! 従うか? いいや! 女に二言はない! 従いません!
私は首を動かして師匠を見る。師匠は酷く心配そうな顔をしている。珍しい表情だなぁ。それだけ心配してくれているのか。あの師匠がコルネリア様以外を心配するなんて、凄い事なんじゃないか? それをやってのける私って、やっぱり凄いんだよな!
私は師匠に笑い掛かる。ゴメンね、師匠。私は顔を王様に向けて、ハッキリとした声で言う。
「いいえ、従えません」
「佳月!!」
師匠が叫んだ。マジでゴメン、師匠。でも決めたの。それが私が出来る最大の事なのだから。
他の面々は目を大きく開けて驚いている。みんな、私が大人しく従うと思ったらしい。
「何故だ、佳月!」
「よせ、もう良い」
師匠とハイドが止めに来た。師匠はまだ分かる。だが、あのハイドが! 心配とか無縁なハイドが、止めに入って来ている。さっきまで煽って来てたのに! これマジで凄い事だぞ! コルネリア様に伝えないと!
「君は賢い子だと思ってだんだけどね」
王様は酷く落胆している。悪かったな。
「理由を聞いても良いかい?」
王様は冷たい目を私に向けて聞いてくる。凄い冷たい目だ。ちょっとクセになりそう
「女には……人には引けない時が有るんですよ。戦士だと尚の事、引けない時が有る。私はココで引けない、引きたくない。要は意地です」
それっぽく言ってみた。ちょっとカッコいい?
「意地の為に終わるのかい?」
「えぇ。王様は引きたくない時は無いのですか?」
「そうだね。確かに引けない時は有るね」
私は目を伏せて……邪龍便で魔力と殊技を夢に運んでもらう準備をする。あ、でも黒の宝玉の兼ね合いで【闇を操る】殊技と多少の魔力は置いて行こうか。
へへへ! 王様よ、当てが外れて精々悔しがれば良いのだ!
「色々引っ掛かるけど……まぁ、時間もないし。準備しようか。ラミル、カミル」
王様が私を一瞥してから双子の名前を呼ぶと、2人は心得たと言う様に1つ頷き、師匠とハイドの元に向かう。私はそれを部屋の端で傍観していた。
2人はこの部屋の隅に連れて行かれ、鎖で壁に繋がれる。前にも思ったがイケメンが縛られているのは、見ていてドキドキする。イケナイ何かが目覚めそうだ
2人を拘束し終えた双子の2人は私の元に。とうとうか……。あぁ、ドキドキするなぁ。
「安心してほしい。抜け殻となっても君は価値のある子だ。きちんと有効活用するよ。それに女性だからね。色々と使い道はあるよ」
何が「安心してほしい」だ! 全く安心出来ないよ! あと、色々と使い道って何? こわぁ
王様は久遠、カミル、ラミルに私を抑えつける様に言いつける。男3人に床に抑えつけられた私。これも側から見たらヤバイ構図だ
「佳月ッ!」
私から見えないが師匠から悲痛な声が聞こえて来た。そんな声初めて聞いた。それ程、切羽詰まった状態なのだろう。今までとは訳が違う。なんか、ゴメン、師匠。
「ちょっとー、男が寄ってかかって1人の女の子押さえつけるって、どういう事なのさ! 側から見てみ? かなりヤバイ構図だよ?」
「五月蝿い」
巫山戯てみたら、まさかのカミルに怒られた。君に言われるとは思わなかったよ。
「カミル? 何だかイライラしてません? 私、何かした?」
イライラMAXのカミル。どうした? カルシウム取った方がいいんじゃない?
カミルのイライラの原因を久遠が教えてくれた。私が一人旅中にカミルとラミルと遭遇した時に悪漢扱いした事を根に持っているらしく、酷く私にイラついているようだ。
「あれ、根に持ってたの⁉︎」
この後も、おちょくり回され、挙句の果てには見失い、スゴスゴと城に戻ればベロニカに「(カミルの殊技により)殊技も使えない小娘を2人居ながら取り逃がすとは、どういう事だ」っと怒られ、師匠には鼻で笑われ、ハイドには馬鹿にされ、元凶の私を酷く恨んだらしい。逆ギレもいい所だ。
「お喋りは良いかな?」
私が喋って時間を稼いでいると王様は痺れを切らしたのか、近づいて来て注射器を太腿辺りに当てた。
「後悔しますよ?」
一回、忠告しておく。実際、後悔するだろうしな。だが全く効果は無い。当たり前だな。圧倒的に不利な者の言い分など聞く耳持つ筈がない。
王様はユックリと針を私の太腿に刺し、中の液体を体内に流し入れた。地味に痛い!




