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苦しい時には親を出せ

 

「師匠、ちょっと痩せましたね」

「お前は変わらんな」


 感動の再会! っと言う事で私は師匠に話かける。素っ気ない感じのこの言い方。いつもの師匠だ! ちょっと安心する。


「冗談だ。少し見ない間に随分と逞しくなった」

「それ褒めてます?」


「逞しくなった」は褒め言葉か?


「あぁ。ベロニカを倒せる程になって居たとは俺も鼻が高い」


 ベロニカ倒せたのはマグレなのだが……見栄張って実力だった事にしよう!


「そ、そうなんですよ! 一人旅大変で……。あ、聞いて下さいよ! 私1人で逃亡……」

「お話中にゴメンね。そろそろ、良いかな?」


 私が師匠に一人旅中の愚痴を溢そうとしていると、今し方現れた王様に遮られた。チィッ!


「さて……聞きたい事があるんだけれど。色々とね?」


 王様は笑顔で話しかけてくる。ちょっと怖い。


「ベロニカを倒すとは感服したよ。でも……君の殊技について事前に得ていた情報と少し違った様な気がしたのだけれど……もしかするとリンドヴァルさえ知り得ない殊技が君にはあるのかな?」


 こっちも聞いて来るかー。さて、どうしたものかな。久遠が居る限り黙りは通用しない。どうせ拷問を受けて吐かされるだけだ。ならば嘘で通すか? いや、バレて拷問を……

 ならば、本当の事を交えつつ嘘で通すか? いや、本当の事を言いつつ所々端折るかな


「師匠が捕まった後に発現した殊技なんですけど……倒したモンスターを寄せ集めて捏ねて怪物を作る能力的な物なんですけど、あまり使うとモンスター扱いされて駆逐されそうになるので基本は使えない能力ですよ」


 嘘ついたけど、バレないかな? 本当の事を言いつつ所々端折る戦法で行こうと思ったが、そんな高度な事は私には無理だった。なので、本当の事を交えつつ嘘で通す戦法にした。


「成る程ね……君の本来持って居た殊技と随分と掛け離れた殊技だね」


 王様は私を疑っている。そりゃそうだ。殊技が2つ有る物は、基本2つ目は1つ目に類似した物になるか、関連するものになる。私のは関連性はまるでない。しくじったなぁ……。


「確かにそうですけど……共通点とは言い難いですが、あんなに目立つ怪物を持っていては目立つでしょ?怪物の部品を私の影の中に仕舞い込んで、持ち歩くっていう感じでー」


 もうダメだと思った。しくじった、本当に!


「ふーん……。まぁ、良いか。じゃ、次の質問に行こうか」


 質問流れた! これで誤魔化せたのか⁉︎ そんな筈は無いだろう。見た所、王様はかなり私を疑っている。これは久遠の拷問コースかな? 私は思わず遠い目になる


「佳月」


 師匠に呼ばれたので、視線を師匠に向けた。


「無駄な事はするな。事実のみ口にしろ」

「え⁉︎ 師匠⁉︎」


 まさかの師匠からのお言葉だった。どうして⁉︎ 何故ですか、師匠⁉︎


 私は師匠を凝視した。師匠は首を横に振る。え? これどういう意図なの? 騙せって事? それともマジで本当の事を言えって言ってる? 師匠の性格上、情報を吐くのは許さない筈だ。じゃあ、騙せって事なのかな?


「無駄だよ、リンドヴァル。一回吐かせる。そこから君次第だ」


 王様、今、一回吐かせるって言ったよね? 吐かせるって情報を吐かせるって意味だよね? やっぱり拷問コースだな、これ


「……」


 師匠は押し黙った。


「次の質問だ。コルネリアは何故、フェルベルマイヤー兄上を救出に来たのかな? あの子は最愛の姉【ソフィア】を諦めた賢い子だ。そんな子がフェルベルマイヤー兄上を、どうして救出しようと無謀な賭けにでたのか……。そして今後、あの子はどう動くのかな?」


 この質問は来ると思っていたので、予め当たり障りのない回答を用意していた。なのでスラスラと口から出て行く


「分かりません。私は捨て駒ですよ? ベロニカとの戦いで時間を稼いだ後、私は捕まる手筈だった。コルネリア様は初めから私を切り捨てるつもりで貴方に挑んだんです。その捨て駒に情報を伝えておきますか?」


 私はこう答えた。これは本当の事。コルネリア様はフェルベルマイヤー様を連れて逃げた後、私は捕まる事が分かっていたので私に今後の事を何も話していない。こちらに久遠が居る以上、いずれ吐かされる。それにより、コルネリア様の計画が台無しになる恐れがあったので、私には【お願い】の話以外は何も聞いていない。


「……確かにそうだね。でも、コルネリアが1番気を許し頼りにして来たのは君だ。リンドヴァルでもギースでもない君だ。何故、その君を捨て駒にしてまでコルネリアは兄上を救ったのか……疑問が尽きない」


 師匠より私の方が頼りにされていたのか? そんな筈はない。私は旅に途中参加だったが、師匠は城からの付き合いだと聞く。時間の長さでは師匠の方が圧倒的に長い筈だが……もしかしてお世話の話か? 私が侍女モドキやってたから、信頼されてると思っているのか?


「そうするしかなかったのでは? 私には分かりませんが」


 せめてコルネリア様が逃げ切るまで【お願い】の件は言いたくない。欲を言えば1週間くらい欲しい。言えばこの王様は白復活阻止の為、コルネリア様とフェルベルマイヤー様を追うだろう。なんとしても時間を稼ぎたい。


「……君は師匠に似て頑固だね。まぁ、良いさ。久遠、君にあげるよ。欲しがってただろう?」

「ありがとうございます」


 あげるとか……。私は物じゃないんだぞ! だから、何か得体の知らない棒切れ持ってコッチに来るのはやめてくれ!


「君の好きにしていいよ。でもキチンと吐かせてね」

「はい、お任せください」

「ちょっと! ちょっと、話し合いましょう! 落ち着いて、深呼吸してー。リラークス、リラークス! ほら、まずお話を聞きたいなら友達にならなきゃ! 私のメアド教えるからメル友から始め……ギャン!!」


 私が騒いでいたら久遠は棒切れを私の足に押し付けて来た。その棒切れから電流が流れてきて体に衝撃が走った。あの棒切れ、電流流れてらぁ……


「ゴメンね、カミル、ラミル。君達も彼女に鬱憤が溜まっているみたいだから、君達にもさせてあげるべきなんだけど……久遠で事足りると思うから、またの機会にね」

「はい、残念ですが諦めます」

「同じく」


 えぇー!! 私、この2人に何かしたか? 何もしてないよ! 寧ろされた側なんだけど! 私、加害者じゃなくて被害者なんだけど! いや、結構おちょくったな。あれか


 心の叫びも虚しく、王様と双子は去って行った。


「さて……どうしてやろうか?」


 久遠は電流の流れている棒切れを持ちながら、私の足を掴み師匠の前にまで引き摺る。


「痛い、痛い」


 後ろに繋がれた手と背中が擦れて地味に痛い。

 そんな私の抗議を無視し久遠は私の腹の上に馬乗りになる。側から見たらエライ光景だぞ?

 しかし……これは、師匠達の前で拷問する気か。そして堕とす気だな。羞恥プレイとはお主なかなかやるな! しかし、私は時と場合によりSにもMにもなれる存在! 今こそ立派なMに成りきってみせる!


 久遠が楽しそうに顔を近づけて来る。ここで私は現実逃避を図る為、目を瞑り兄様を数える


 兄様が1匹、兄様が2匹……。


 これで万事オッケーだ。しかし、いつも同じはキツイし、バリエーションが無いのは辛い。よし、次期当主様も追加してやろう!



 そういえば、最近、次期当主様と話してないな。元気かな?

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